第49話 大事な話
「フリードリヒ……なにか悩み事ですか?」
「ああ、すまない。待たせてしまったな。そろそろ帰ろう」
フリードリヒは、なんでもないかのように帰り支度を始めている。
あれ?私の気のせい?いや、そんなことはないはず。
ヴォルフガング陛下の言葉のお願いを思い出す。あいつが本当に困っていたら助けてあげて欲しい。
たぶん……今がその時だと思う。
だけど、フリードリヒは帰り道の途中でも、何も話さなかった。
もし、明日になってもなにも言ってこなかったら……私が無理やりでも聞き出そう。
だって……マコト君は本心を打ち明けるのが下手な人だったから……。
「アマラ、演劇大会をやることになったわ」
「演劇なのに競い合うんですか?」
部屋に入るとともに、侍女にイベントのことを話す。
話しながらに気付いたが、要素マシマシ過ぎたかも……。劇、対抗戦、魔法、ミスコンもどき……。
学校の初イベントということで、張り切りすぎたかも?
「アマラはどう思う?面白そう?」
「面白いと思いますよぉ。皆さんで協力して行えますし、魔法学校らしい劇というのも斬新だと思います」
「そう言ってもらえると、嬉しいわね」
侍女の言葉に安堵する。……ただ、イザベルさんがなんて言ってくるかは不安だが。
「お嬢様ぁ、イザベル様とはうまくやれていますか?」
考えていた名前が侍女の口から飛び出し、私はびくっとする。心を読まれた?
「イザベルさんとはうまくやれているわ。でも……デレてはないわよ?」
「きっと、時間の問題ですよぉ。どんどんお嬢様沼にはまっていくイザベル様……」
「そんな沼はないわ!あの人は、ちゃんと私たちに立ちはだかってくれる人よ」
「本当にライバル令嬢ですねぇ。それを喜ぶなんて……お嬢様も変わった人ですねぇ」
――――――
翌日、フリードリヒと登校している。昨日と違い、表情に余裕があるように見える。
悩みは解決できたのだろうか?なんて考えていた私に、声がかかる。
「マリア、今日の放課後に少し時間を貰えないか?ハインリヒも交えて、話したいことがある」
「はい。お兄様も一緒なんですね……。フリードリヒの悩みと関係が?」
「やはり、気付いていたんだな。そうだ。とても重要な話になると思う……」
それ以降、フリードリヒは黙ってしまった。
――――――
授業が終わり、生徒会室にみんなが集まった。
「では、昨日の演劇大会の開催時期の採決を行う。クラス分けの前と後。挙手で意思表示してくれ」
私はクラス分け前に開催したい。その考えは変わってはいない。
「それでは、クラス分け前がいいと思う者」
男子三人と私が挙手する。レオンは騎士科と現在の三組を比べて、意見を翻したようだ。
「決定したようだが、いちおう聞いておく。クラス分け後がいいと思う者」
ローズとテレーザが挙手する。二人がレオンを睨みつけている……。
「演劇大会の開催は、クラス分け前に決定した。反論等あるだろうが、採決の結果だ。納得してくれ」
「レオン、裏切り者」
「いやあ、騎士科の男だらけの劇なんて……だれも見たくないだろ?」
「それもそうやね。多数決の結果じゃあしゃあないわ」
男だらけの劇……私も見たくないけど……。一部には受けるかもしれないな……。
「今日は区切りもいいため、早めに生徒会活動を終了する。皆、おつかれさま」
「おっ!珍しいな。ハインリヒ、ローズ、テレーザ。帰りどっか寄ってこうぜ!」
「レオン、私はこの後用事があるから、辞退させてもらう。悪いな」
「そっか。了解。ローズとテレーザは大丈夫か?」
「ん。大丈夫」
「あたしも大丈夫や。レオン、両手に花やん」
軽口を叩きながら、三人が生徒会室から出ていく。
それを確認したフリードリヒが、入り口のドアに鍵をかける。
「二人とも、残ってもらってすまない。だが、とても大切な話なんだ……」
「はい。だいたい予想はついています。いつか聞かれると思っていましたので」
神妙な空気のフリードリヒとお兄様。私もメンバー的に、だいたいの予想はついている。
「だが、ハインリヒには悪いが、先に個人的な話をマリアとさせてもらいたい。ハインリヒも聞いていてくれ」
ん?個人的な話?それは予想していなかった……。一体何だろう?
私とお兄様が頷く。
「まずは、私の前世についてだ。マリア、知っているな?」
あっ……。私はマコト君=フリードリヒということは、知らないことになっているが……。
これは間違いなくバレているだろう。お兄様も頷いて、ゴーサインを出してくれている。
「はい。婚約が決まった日に、お兄様から聞きました。口止めされていることも聞いていたので、隠していました」
「マリアは隠し事が下手だな。バレバレだったぞ。大図書館に行った日なんかは特にな……」
前世で私が、図書館で勉強を教えていた話とかか……。顔に出てたんだろうな……。
「ええと、隠していたことを怒っているのですか?」
「いや、そもそも口止めしたのも、私のわがままだ。私が真であることを知っていないと、次の話が出来ないから確認しただけだ」
ということは、夏美とマコト君の話?もしかして……大事な話があるってのは、別れ話でしたとか……?
「やっぱり、最後にマコト君に会った時の大事な話は、別れ話だったのですか?」
「なっ、なにを言っているんだ!?あれは、その……プロポーズ宣言だったんだけど……。なんで、そんな勘違いをしてるの!?」
口調がマコト君になってる。そうか、そうだよね!疑っちゃってごめんね。
「ええと、気の迷いと言いますか……。そんな事より、なにかお話があるのでは?」
「そんな事……。まあ、本題は別のことだ。君にとっては……凄くどうでもいい話かもしれない」
なにその前振り?私との話で、フリードリヒやマコト君にとっては重要で、私にはどうでもいい話?
「はあ?とりあえず、聞かせてください」




