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第48話 悩む皇子の相談

「私でよろしければ、いくらでも相談にのりましょう」

「ありがとう。助かる……」


 私は、デビュタントボールでネックレスを贈った。感謝の気持ちと言ったが……あれは嘘だ。

 マリアを縛り付けたい。私のものだと主張したい。そんな卑しい考えだ。


「マリアと真っ向から向き合いたい。どうすればいいと思う?」

「ええと、殿下?本気で言ってます?」


 マクシミリアンが呆れ気味に聞いてくる。おかしなことを聞いたとは思えないのだが……。


「本気だ。私になにができるだろう?」

「これは思った以上に重傷だったのか……。とても簡単なことです。思うところすべて、マリア嬢に伝えるだけです」

「いや、それが出来ないから言っている」

「なぜ出来ないのですか?」

「それは……情けなくないか?男として、格好悪いだろう……」


 君に置いていかれるのが恐い。だから、束縛したい。

 なんて卑しい男だろうと思われないか?いや、普通にそう思うだろう。


「殿下がマリア嬢に対して、どのような考えがあるかは、私にはわかりません。ですが、話し合わない限り、なにも変わらないと思いますよ?」

「私のさもしい心を知って、マリアは離れていってしまうのではないか?」

「殿下はマリア嬢を、どのように位置づけているのか謎ですね……」


 マリアの位置づけ?婚約者だ。最愛の女性だ。とても賢い人だ。イザベル嬢を飼いならすほどの包容力だ。

 前世では、常に目標だった人だ。憧れと言ってもいい。それらをまとめると……?


「素晴らしい女性だ。私には勿体ないほどの……」

「勿体ないかどうかは置いておいて……その素敵な女性は、殿下の言うさもしい心を聞いただけで手の平を返すような女性ですか?」


 たぶん、優しく話を聞いてくれるだろう。すべて受け入れてくれるだろう。


「たぶん大丈夫だ」

「でしょうね。殿下はマリア嬢を、手が届かないほど高く見ているわりに、心の奥底では心の狭い人間かもと疑って、低く見積もっていたのではないですか?」


 前世の俺もそうだった。冗談のような態度で、本心は隠し通してきた。そして、大事な話を伝える前に……死んだ。

 今世もそれでいいのか?駄目だ!すべて打ち明けよう。すべて……。


「そうだな。私は勝手にマリアを、浅薄な女性だと疑ってしまっていた……。だから、私は話し合おうと思う」

「それがいいと思います。殿下、他にも悩みが残っていますよね?」


 さすが、マクシミリアンだ。私以上に私の事を理解してくれているのだろう。ありがたいな……。


「ああ。ハインリヒの事だ」

「ハインリヒ様の噂は聞いております。マリア嬢を兄妹以上に想っていると……。ですが、兄妹です。教会の目がある以上……」

 

 マクシミリアンに私の転生の話をしていない以上、ハインリヒと私の間にある問題はそれになってしまうだろう。

 たしかに、良い気持ではない。私の知らないマリアの十二年間を知り、行動には起こさないながら、愛している男。


「それ自体は大した問題ではない。いや、多少は問題あるが呑み込むつもりだ」

「それ以外にハインリヒ様に何か問題が?私から見ても、あれほどの忠誠心は凄いと思いますが?」


 その忠誠心の出所が問題なのだ。愛する女性を他人に嫁がせる……私には無理だ。

 マリアが望んで他人のもとへ行くのなら、まだ解る。だが、そうじゃない。

 まだ私と出会っていなかったころから、着々と計画を進めていたであろう手際の良さ。

 まるで、私が真であることを知っていて、なっちゃんであるマリアを贈ってきたようだ。

 なぜその行動が出来る?自分の心を殺してまで、なぜ私やマリアのために?


「その忠誠の理由がわからない。だから、信頼することができない……」

「確かに、ハインリヒ様の性格的に出世のためというのは考えづらいですね」

「そうだな。私の夢の事は話してあるが、あいつは別のところを見ている気がする」

「殿下の皇帝即位ではなく、別の目的のために殿下に協力していると?」


 ハインリヒが協力してくれていることは間違いない。だが、なにか違和感がある。

 まるで、協力すること自体が目的であるように感じる……。


「なんというか、逆なんだ。手段と目的が」

「殿下を皇帝にするのが手段ということですか……?では、目的は?」

「私に、そしてマリアに尽くすことが目的のように感じる」

「言いたいことはわかります。ですが……なぜ?」


 ここからは勘だが……ハインリヒの語られていない前世に関係している可能性が高い。

 そして、婚約が決まった日、その一端をマリアに話しているのではないか?

 だが、その話を私が聞いても良いのだろうか?本能的に避けたいと思っている……。


「わからない。やはり、腹を括るしかないのだろうな」

「ですね。こちらの話は、私の手に余るお話のようです……」

「いや、ありがとう、マクシミリアン。おかげで、道を間違えずに済んだ」

「こちらこそ、”完璧皇子”の意外な一面を見ることができたので……」


 いったいマクシミリアンには、私がどう見えているのだろう?


「”完璧皇子”か……。私には過ぎた名だな」

「殿下ほどその名が似合う人などいませんよ。先ほど見せてくれた弱さを気にしておいでですか?」

「ああ。完璧とは程遠いだろ?」

「殿下は神にでもなるつもりですか?悩まない人間なんていませんよ」


 そうだな……。私は気を張りすぎていたのかもしれないな。

 もっと早く、マクシミリアンに相談すればよかった……。


「これからは、今まで以上に頼りにさせてもらうぞ」

「くだらない恋愛相談とかは勘弁してくださいね?」

「くだらないだと……?マリアを愛することが下らないというのか……?」

「ちょっ!殿下、そういう意味ではありませんって!」


 剣に手をかけるポーズをしてみる。当然、わかっている。

 次からは、マリアとしっかり向き合えって意味だろうことは。


「冗談だ。冗談だからそこまで怯えるな……」


 部屋の隅まで逃げているマクシミリアン。私は怪物かなにかか?


「殿下が本気で斬りかかってきたら、命が何個あっても足りませんからね」

「ははは。従者がそんなことではいけないのではないか?」

「そうですね。それにしても、殿下に笑顔が戻ってよかったですよ」


 マリア以外の前で笑ったのは、いつぶりだろうか?

 マクシミリアンには、ずいぶん苦労をかけていたんだな。


「ああ。ありがとう。お前のおかげだ。ずいぶんすっきりしたよ」

「その勢いで、悩みも解消しちゃってくださいね」


 明日、マリアとハインリヒと話をしよう。どのような答えにたどり着くとしても……。

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