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第46話 イベント案会議

 デビュタントボールも無事に終わり、普段の生活に戻っていた。


「マリアさん!フリードリヒさん!いつも言っているでしょう!制服を崩して着ないでくださいと――――――」


 フリードリヒが面倒くさそうな顔をしている。これが日常の一場面になりつつある。

 イザベルさんは以前にも増して、口うるさく言ってくるようになった。まるで、真面目な委員長……。

 だけど、私は嬉しかった。変わらずいてくれて。多少変わったところもあったけれど。

 様、殿下呼びから、さん付けに変わった。彼女の中での最大の譲歩なのだろう。

 お互いの気持ちを吐露したからこそ、妥協点が見つかったのだと思いたい。


 生徒会室では、目安箱内の意見の集計や対策が続けられている。


「魔法実技大会。なになに?魔法を披露して、審査員に採点してもらう?」


 例のイベント案の募集期限が終わった。そのため、イベントの選考が始まっていた。

 執行役員(兼雑用)レオンが読み上げ、書記テレーザがまとめる。


「美女コンテスト。俺、これ賛成!これにしようぜ!」

「そないな企画、結果が分かりきっとっておもろないやん」

「そうですね。やる前からマリアの優勝が決定してますからね」


 いやいや、決定はしてないでしょ!ローズもお兄様も過剰評価だって。

 そもそも、私が出場するともいってないし……。


「はいはい。そんなイベントをやるってなったら、イザベルさんが生徒会室に飛び込んできますよ?」

「そうだな……。とりあえず、まとめるだけまとめといてくれ。内容はともかく、案は案だ」

「んじゃあ、次の案は、美男子コンテスト。おっ!俺、参加したいな!」

「男も女も考えることは一緒やいうことかい……」

「ん。それも書いておく」


 美男子コンテストかぁ……。フリードリヒとお兄様の二強。ダークホースでレオン。

 あれ?校内のイケメン、生徒会に集中してるな……。今更気付いたけど。


「次は……お祭り。お祭り?ええと、生徒たちで出店を出したり、劇を行う?」


 だれか私の知らない転生者が紛れ込んでるんじゃ……?完全に学園祭だって、それ。

 私的にはやりたいけど……。かなり大変な気が……。


「私のやつだな。学校祭をやってみたかったから、書いてみた」


 あっ、はい。私の知っている転生者でした。フリードリヒ……あえて困難な道を往く気か?


「面白そうやん!あたしの本領発揮や!」

「ローズ、それ取り仕切るの私たちだけど……忙殺されるよ?」

「ん。でも案は案。書いておく」

「俺、まったり生活したいな。とりあえず、次は、野外研修。うん。わかった。わかってた」


 みんなの視線が私に向けられる。……だって、諦めきれなかったんだもん!


「はい……。私の意見です。説明は不要です。次に行っちゃってください」

「了解。次は……あっ!武闘大会。俺のやつだ」

「レオン……お前、目立つために書いただろ?お前に武術で勝てるやつが校内にいるわけないだろ?」


 お兄様が呆れている。レオンの実戦仕込みの武術は一線を画している。

 レオンらしい案ではあるけども……。


「とりあえず書く。さっさと次読んで」

「テレーザ冷たい……。次は――――――」


 その後も、いくつか案がでたが、これ!といった案はなかった。


「とりあえず出揃ったようだな。だが、どれもあと一歩に感じてしまうな……」

「なら、混ぜてしまえばいいんちゃう?」


 あっ、その手があったか!さすがローズ。商人らしい発想だ。

 各商品の価値が低いなら、くっつけて高価値の商品を作ってしまおうと。


「私もその案に賛成です!例えば、フリードリヒの案の劇と、レオンの大会をくっつけて、クラス対抗演劇大会とか?」

「それなら、ただの劇ではなくて、魔法で演出する劇とか面白そうでは?」

「ハインリヒ、それ面白そう!俺的には、劇の評価だけじゃなくって、個人のコンテストも一緒にやりたいかも」

「美女とか美男子とかやなくて、劇で目立ってたとか、美しかったとかってことやな?」

「そうそう。外見だけじゃなくて、演技力とかも評価してもらってさ。……それなら俺も勝てるかも……」

「レオン、本心が漏れてるよ。でも、それ面白いと思う」


 そうだ。私は端役に立候補すれば目立たないはずだから……。


「そうだな。もう少し詰めていってみるか」


 フリードリヒが中心となって、ごちゃまぜ案が徐々に洗練されていった。

 ただ、開催時期が問題となった。あと五か月もしないうちに、コース分けが行われる。

 その前に開催するべきか、コースに分かれてから開催にすべきか……?


「俺は後がいいと思う!だって、俺ら三組は男だらけだぜ?」

「レオン……お前はコース選択でどこを選ぶ?」

「ハインリヒ……判り切ってること聞くなよ。騎士科に決まってるじゃん!」

「それでは、騎士科に女性は入ると思うか?お前のところの領軍の男女比を考えてみろ」

「あっ……男がほとんどだ……。まだ、今のクラスの方がマシだな……」


 実際、軍人の道に進むのは男性が圧倒的に多い。

 貴族は基本的に女性が家を継ぐ。なので、男性は領軍の指揮官や、国軍の将軍を目指すことが多い。

 平民も理由は違っても、男性が多いのは変わらない。魔力が無ければ、ものをいうのは体格や筋力だから。


「私は後がいい。二組は女だらけ」

「そうやな。コースに分かれれば、騎士科以外はバランスがよくなりそうやな」


 確かに官吏科と商業科は男女比が割とまともになるだろう。

 だが、別の問題というか、イベントの意義が減ってしまう気がする。


「私は前にやるほうがいいと思います。イベントを実施する意味を考えてみてください」

「差別の緩和だな。後でも問題ないと思うが」

「私の思う差別は家格の上下だけではありません。武門、文門、商家の壁も一種の差別だと思っています」

「ああ、せやね。あたしも商人仲間と集まってまうことが多いな」

「俺も戦闘談義ばっかしちゃうね!でも、それで良くね?」

「私は考えてしまいます。軍人と文官が綿密に連携できたら、出来ることの選択肢が増えるのではないかと」


 横のつながり。分野を越えた信頼関係。その人脈は、きっと将来役に立つと思う。その人自身にも、国にとっても。


「そうだな。コース分け前か後か。これは少し考えたほうがいいようだ」

「ん。家で考える」

「わかった。皆、一晩かけて考えておいてほしい。今日はここまでで解散とする」


 みんな帰り支度を始める。フリードリヒ以外は。

 フリードリヒと私だけが生徒会室に残された。なにか話があるのだろうか?

 フリードリヒは難しい顔をして、考え込んでいるようだ。珍しい……。

 私は、意を決してフリードリヒに声をかけることにした。

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