表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/272

第45話 デビュタントボール3

「貴女が弟の婚約者でしたね。噂はよく耳にしておりますわ」


 第一皇女様は無難な対応。さて、第二皇女様は?


「噂以上に美しいのね!将来義理の妹になってくれると思うと、とても嬉しいわ!」


 妙に歓迎ムードだ。第一皇女様の対応はわかるが、第二皇女様は……なにを考えているのだろう?


「いえ、私などお二方と並んでしまえば、輝きを失ってしまいます」


 とりあえず、よいしょしておく。下手に出続けて様子を見るつもりだ。

 とは言っても、お二人とも美しいのは間違いない。高貴なオーラを纏っている。


「貴女、謙遜が過ぎると嫌味に聞こえましてよ?そのドレスも先ほどのダンスも素晴らしいものでしたわ」


 第一皇女様は友好関係は結ぶつもりはないけど、私のことはある程度認めている感じかな?


「お姉様の言う通りですわ。貴女ほど美しい女性は初めて見るもの。さあ、もっと気楽にお話ししましょう」


 第二皇女様はがっつり仲良くなりたい感じだ……。何故……?

 その後も、第一皇女様は付かず離れずを維持、第二皇女様はがんがん距離を詰めてきた。

 なんとなくだが、第一皇女様は、フリードリヒを皇帝争いのライバルと認識していて、距離を置く感じ。

 第二皇女様は、現状第一皇女様が先行しているので、フリードリヒとは協力関係を目指している感じかな?

 フリードリヒの考えを聞いていないので、これ以上踏み込むのはまずいだろう。


「他の方々への挨拶が残っておりますので、そろそろ失礼させていただきます」

「そうね。貴女のお話はとても有意義でしたわ。またの機会があれば、色々聞かせて頂戴」

「残念ですわ。今度はお茶会などでゆっくりお話ししたいですわね」


 事務的な姉と友好的な妹。なんとも対照的な二人と別れた私は、挨拶回りに戻る。

 まずは、有力貴族家の当主、及び夫人。あまり会いたくはないけども、リューネブルク侯爵様のもとにも向かう。

 意外にも、リューネブルク侯爵様は友好的に接してきた。まあ、表面上はだけどね。

 保守派の貴族の方々も、皇帝主催の舞踏会で問題を起こすほど馬鹿ではないだろう。


 次に、学校関係者。ミリヤム様や生徒のみんな。イザベル様を除く。

 生徒のみんなは、ほとんどが当主ではないため、このような大規模な舞踏会は初めてのようだった。

 というより、皇城に入ったことない人が多かった。私だって、謁見で呼ばれなければ、入ることなかっただろうし。

 なので、みんな好奇心と恐怖心の狭間で、なかなかダンスも出来ていないようだった。


 そして、最後にイザベル様のもとに向かう。えっ?公爵家令嬢を後回しとか失礼?

 でも私、たかが伯爵家の恥知らずな小娘なので……ルールがよくわかっていませんの。

 あれ?イザベル様の姿が見当たらない。ホールで踊っているでも、だれかと歓談しているでもない。

 まさかと思い、壁際を探す……。見事に壁の花になっているイザベル様を見つける。


「イザベル様?具合でも悪いのですか?」


 普段の様子からは想像できないイザベル様の姿に、体調不良を疑ってしまう。


「いいえ、体調は全く問題ないわ。ただ、心が弱ってるだけよ……」


 あっ……私、やりすぎちゃったんだ……。途端に罪悪感に襲われた。

 この世界にない知識を使って、前世の経験を持ち出して……。私はとんだ卑怯者だ。

 傷つけるって分かっていたのに、可哀そうだと思ったのに……。私はただただ愚か者だ。


「イザベル様、ごめ……」


 謝ろうとした瞬間、イザベル様が割って入る。


「謝らないで!貴女はなにも悪くないわ。貴女は持てるすべてを使って、わたくしを叩き潰した。ただそれだけのことよ……」


 叩き潰してしまったから、私は謝ろうとした。だけど、彼女は悪くないと言う……。

 私にはわからない。その理屈が。


「いえ、私はやりすぎてしまいました。貴女を傷つけてしまいました。だから、謝らせてください!」

「駄目よ。わたくしは貴族として貴女に挑んだの。そして、負けた。貴女はなにも間違っていない。それが、貴族としての生き方よ」


 そうだった。私やフリードリヒは、前世の価値観を捨てきれていない。貴族としての考え方に甘えがある。

 イザベル様は、生粋のこの世界の貴族。そして、この世界の貴族の在り方の体現者だ。

 異端な考え方を周りに広めたのは私たち。それに抗っていたのがイザベル様。

 どちらが正しいかなんてわからない。だから、しっかり話し合わなければいけなかったんだ。


「やっぱり謝ります!ごめんなさい!それと、ありがとうございます!」

「はあ?貴女、謝罪も不要だし、それ以上になんで感謝するのよ!わけがわからないわ」

「ええと、イザベル様の在り方に貴族の姿を見たからです!」

「なによそれ……。わたくしはわたくしの信じる道を進んでいるだけよ」

「それです、それ。今後も貫き通してください!私でよければいくらでも相手になります」

「はぁぁ。なんか、貴女と張り合おうとしていたのが馬鹿らしくなってきたわ……」

「えっ?やめてしまうのですか?次はテストの点で勝負だ!とか言ってくれないんですか?」

「はいはい。それではテストの点数で勝負よ。これで満足?」


 半ば呆れているイザベル様。満足げな私。これでいいんだ。

 きっとこれからもイザベル様は、私たちの考え方には染まらないだろう。

 対立することもあるだろう。でも、その都度話し合って、解りあっていこう。


 その後、いつの間にか集合していた生徒会メンバーと合流した。


「マリア、イザベル嬢と話し込んでいたようだが、大丈夫だったか?」

「はい。イザベル様がどう思っているかはわかりませんが、私は勝手にイザベル様を友達と認定しました」

『はい?』


 みんな意味不明という顔をしている。そりゃあそうだろうね。


「なにが起こると、そないなことになるんやろうな……」

「まあ、イザベル嬢がおとなしくなりそうなら……それでいいだろう」

「おとなしくはならないと思いますよ?」


 みんなからの視線が痛い。可哀そうなものを見る目で見ないでください……。

 そんな感じで話していたら、生徒のみんなも集まってきてしまった。

 ○○様と踊ることが出来ましたとか、踊ってみたら○○様が格好良く見えましたとか。

 みんなちゃんと楽しむことが出来たようで、なによりです。


 いつの間にか時間になり、陛下の閉会宣言でデビュタントボールは終わった。

 主役である私たちが最初に退場し、続いて陛下たち皇族が会場から出てきた。

 

「なんとか終わったな。マリアもお疲れ様」

「フリードリヒもお疲れ様です。私、これ大切にしますので」


 そう言って、首元の宝石たちを指差して、微笑んで見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ