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第43話 デビュタントボール1

 パーティーホールの入り口付近でフリードリヒの到着を待つ。

 オペラグローブを纏った手に、ブレスレットを握りしめながら。


「マリア、待たせてしまったか?それにしても……美しいな。瞬きをするのを忘れてしまいそうだ」


 マコト君だったときも思ったことだが、自然と口説くようなセリフをのたまいやがるんですよね……。

 外見と相まって、かなり効くんですよ……。天然たらしは手に負えないわ。


「フリードリヒも見事な出で立ちで、うっかり見惚れてしまいそうですわ」


 負けてられないので、こちらもしっかり反撃をしておく。

 それにしても冗談抜きで、見惚れてしまうほどの格好良さだ。

 燕尾服にホワイトタイを見事に着こなしている。さすが”完璧皇子”だ。

 なぜかこの世界、女性のドレス文化は発展途上なのに、男性の礼装は発達しているのよね。


「マリア」「フリードリヒ」


 同時に話し始めてしまった。プレゼントを渡すタイミングを計っていたのだが……。


「被ってしまいましたね。フリードリヒからどうぞ」

「すまないな。君に日頃の感謝を伝えたくて、プレゼントを用意したのだが……受け取ってくれないか?」

「えっ?私も同じ気持ちでプレゼントを用意していたのですが。それならば、せえので交換しませんか?」


 まさかフリードリヒも同じこと考えていたとは。なんかロマンティックだな……。


「そうだな。それでは……」

『せえの』


 お互いに手を開いて、プレゼントを見せ合う。

 私の手には淡い紫のブレスレット。フリードリヒの手には淡い紫のネックレス。

 うん。同じ石だ。こんな偶然ってありますか?


「マリア、おなじ宝石を選んだようだね。この石の名前はしっているか?」

「曹柱石だったはずです。それがなにか?」

「曹柱石の別名はマリアライト。成功の石ともよばれる石だ」


 私の名前だ。見た目の美しさに惹かれたけど、名前を聞いてもっと好きになった。

 しかもネックレスで贈ってくれるなんて……。とても希少な石なのに。


「そ、そうなんですね。ではまず、フリードリヒにつけてしまいますね」


 運命なのだろうか?たぶんそうなのだろう。そして、私の顔は赤く染まっているに違いない。

 目を合わせているのが耐えられなくなり、フリードリヒの腕に視線を向ける。

 私と違い、男らしく大きな手にブレスレットを通し、手首に装着する。


「ありがとう。今度は私の番だな……。う、後ろを向いてもらえるか?」


 軽く頷いて、反対側に向きを変える。フリードリヒが見えなくなり、余計に緊張してしまう。

 ネックレスを持った手が、そして反対の手も、私の肩の上から現れ首元に回される。

 このままぎゅっとして貰いたい、なんて思っちゃってる……。いかん、頭がバグってきた。

 首元でネックレスの両端をそれぞれの手に掴み、フリードリヒの手が後ろに去っていく。

 うなじのあたりにフリードリヒの手の気配を感じてしまう。

 髪の毛、シニヨンにしといてよかった……。下ろしてたら、私の髪をかき分けながら着けられていたとこだった。

 もしくは……正面から着けられたかも……。無理無理!心臓が持ちませんって!


「つ、着け終わったぞ。……綺麗なうなじだな」


 ぼそっと呟いた言葉もしっかり聞こえてしまった。

 そこらのおじさんに言われたらキモイってなるけど、貴方にいわれると……ホント勘弁してください……。

 心臓の高鳴りと顔の熱さが収まらない私は、しばらく向きを変えられずにいた……。


 主役である私たちの入場は最後のため、用意されていた部屋で待機している。

 そんな私たちのもとに、そろそろ準備をお願いしますと声がかかる。

 私たちは入り口脇に移動し、出番を待つ。


「マリア、緊張しているか?」

「少し。ですが……フリードリヒにネックレスを着けて頂くことよりは、ドキドキしないなって思っています」


 実際、あれのせいで緊張が吹き飛んでしまった。この場合はおかげか。


「マリアもか……。私も同じだ。贈り物も被るし、私たちは似た者同士なのかもしれないな」


 私はまったく逆の考えだった。フリードリヒの手や腕に、明確に異性を意識した。


「そうかもしれませんね」


 心にもない返事をする。違うと言ってしまうと、よりはっきりと意識してしまいそうだったから。

 そして、いよいよ私たちの名前が呼ばれる。


「マリア・フォン・ナッサウ様、エスコートはフリードリヒ・イストリアス・カージフ第一皇子殿下、ご入場!」


 扉が開かれ、私たちはホールに入場する。

 一斉に私たちに視線が注がれる。

 俯くな、凛と前を見据え華のようにあれ。臆するな、一分の隙も無い淑女であれ。

 前世の両親に言われた言葉を、心の中で反芻する。

 最奥で待っているお母様と陛下のもとに進んでいく。


「美姫だとは聞いていたが……これほどとは……」

「あのドレスはなんなの?純白で袖どころか肩紐すらないドレスですって?」

「だが、マリア嬢が着ることによって、下品さなど全くない、いや、神々しいまでの美しさだ!」


 いやあ……このドレス注目されるとは思ってたけど、これほどとは……。

 スリーブレスすら珍しいのに、ストラップレスですからね。斬新どころの話ではないのだろう。

 ちょっと困るのは……胸元への視線が生理的に嫌悪感を覚えることだろうか……。エロおやじ共が!


「マリアちゃん!すっごく綺麗だよ!だけど、目のやり場に困るんだけど……」


 レオン……そういいながら胸を凝視するのはやめてくれ。なんで男性は胸がこんなに好きなんだろう……。

 前世の頃は小さかったから気にならなかったけど……マリアになってからは……はぁぁ。

 いい感じに緊張もほぐれたころには、陛下たちのもとに着いていた。

 私たちは足を止め、招待客の方に向きを変える。


「皆の者、我が息子フリードリヒの社交デビューの場に立ち会ってくれること、感謝する」

「私と共に最愛の娘、マリアのデビュタントを祝っていただけることを感謝します」


 陛下とお母様に続いて、私たちも挨拶をする。


「私、フリードリヒは今宵、社交会にデビューする。まだまだ若輩者であるゆえ、至らぬ点もあると思うがよろしく頼む」

「私のデビュタントのために集まっていただき、ありがとうございます。ご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます」


 挨拶を終えたのを合図に、楽器隊が準備を始めていた。

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