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第41話 照れくささは青春の味

 翌日、また学校が始まる。

 前世では、日曜から月曜になってしまうのが気が重かった。

 だが、今はとても楽しみに感じている。私たちで作り上げていく学校に通うのが嬉しい。

 色々問題もあって大変だが、それ以上の充実感を感じている。


 いつものように、フリードリヒとの待ち合わせ場所に向かう。

 すでに待っていたフリードリヒは、挨拶と同時に報告をしてくる。


「おはよう、マリア。デビュタントボールの招待客の許可がおりた」

「おはようございます、フリードリヒ……。それでは、テレーザ以外の生徒会のみんなを招待できるのですね」


 なるべく自然にアマラの助言を実践する。

 そこそこ違和感なく呼べたはずだ。やっぱり慣れないけど。


「ああ。皆来てくれるだろう……。ん?マリア、もう一回私のことを呼んでくれないか?」

「フリードリヒ……。やはりまずいでしょうか?」


 恥ずかしさと、不敬とたしなめられるかもしれない不安で、顔を伏せる。

 すぐに返答がなかったため、恐る恐る顔をあげる。

 顔を赤く染めたフリードリヒが固まっている。


「あの?大丈夫ですか?」

「あ、ああ。突然の変化で、少し驚いてしまっただけだ。出来ればこれからもそう呼んでほしい」


 キュッと”完璧皇子”顔に戻ったフリードリヒに促され、学校に向かって歩き始める。


「なぜ急に呼び方を変えてくれたんだ?」

「アマラの助言があったので。きっとフリードリヒが喜ぶだろうって……」

「そうだったか!アマラには特別手当を支給しよう!この功績はとても大きいからな」


 ここまで喜ぶのは意外だった。たかが呼び方だけなのにな。

 女心は難しいと世の男性が言っているが、私的にはよっぽど男心のほうが難しいと思う……。


 その後、学校に着いた私たちは、少し減った馬車渋滞に喜びつつ、教室に向かった。

 先週まではみんな緊張しているような感じだったが、休日を挟んだ今日は、少しリラックスした感じだった。

 授業前に私たちに話しかけてくる人も現れ始めた。

 皇子とその婚約者。きっと勇気を振り絞って話しかけてきているに違いない。

 私もフリードリヒもその気持ちを推し量って、なるべくフランクに接するよう心掛ける。


 この日の授業も終わり、生徒会室に集まる。


「皆に朗報がある。今までは皇族の予算で学校を運営していたが、国からの予算が下りることが決定した」


 フリードリヒは以前にもまして公務に励んでいたが、きっとこの話の関係だったのだろう。


「はいはい。俺にもわかるように説明してください」


 レオンが挙手してお願いする。


「お前……フリードリヒの頑張りを理解できていないのか……」

「要するに国の公共事業として認められたっちゅうことや」

「その心は?」

「レオン、貴方は少し考えるべき」


 見かねたテレーザに叱られ、レオンはしゅんとなった。


「私から説明しよう。これまでは私や母上の個人的なプロジェクトという扱いだった。だから、校舎の建設から人員の確保、その他諸々まで生徒会主導で行ってきた」

「そやね。大変やったわ」

「だが、国の事業となれば、今後の上級学年や研究所の開設や基礎学年の運営も、国の資金と人員を回してもらえる」

「ん。私も研究に専念できる」

「じゃあ、俺たちはもう用済みってこと?」

「レオン……貴方の生徒会での役割はなんですか?まさか、それまで忘れているわけではないですよね?」

 

 呆れながら、お兄様がレオンに質問をする。


「ええと、執行役員だっけか?俺が武門の家の担当だったよな……。ああ、仕事あるじゃん!」

「そういうことだ。今後は、校内で起こった問題の解決や、新たに行いたいことの検討に集中できる」

「これもひとえにフリードリヒが頑張ってくれたおかげですね。ありがとうございます」


 素直に感謝を伝えた私に、周囲が鋭く反応する。


「あれあれ、マリアちゃん?いつの間にフリード君やなくなったんかな?」

「ん。その点詳しく」


 どこの世界でも恋バナは女子の大好物なのだろうか……。

 困っている私を救うべく、フリードリヒが声をあげる。


「お前たち、今は生徒会活動中だ。私語は慎むように」

「しゃあないな」「はい」


 とりあえずは助かったようだ。終わった後が怖いが……。

 その後は、国側の人達に引き継ぐ内容を話し合った。

 生徒会活動終了と共に、大好物に群がる猛獣に襲われたのは言うまでもないだろう……。


 その後はいつものように部屋に帰る。


「お嬢様ぁ、どうでした?どうでした?」


 部屋に入るとともに、侍女が興奮した様子でまとわりついてくる。


「ちゃんと呼べたわ。最初は恥ずかしかったけど、もう慣れてきたわ」

「それで、殿下の反応は?」


 こいつも猛獣だったか……。なぜこうも、人の甘酸っぱい青春みたいな話が好物の人が多いのか。


「喜んでいたわ。最初は顔を赤くして固まっちゃってたわ……」

「なんていう初心な関係!尊みが過ぎる!ハァハァ」

「ええと、危ない世界に旅立っているようで悪いんだけど……そろそろ戻ってきてもらえる?」


 およそまともな人の顔を逸脱した表情で妄想に耽る侍女を、現世に呼び戻す。

 こんなのをよそで見せたら、ナッサウ家の威信が急落することだろう……。


「申し訳ありませんでした。夕食の準備を整えますね」

「お願いするわ。そういえばフリードリヒがアマラに褒美を与えるそうよ」


 夕食を準備している侍女に、入れ知恵が評価されたことを説明する。


「殿下もわかっていらっしゃる……。今後もお嬢様の魅力開発を進めるとお伝えください」

「そんなの自分で伝えなさいよ!私の口からそんなの伝えるとか羞恥プレイじゃない……」


 マリアとフリードリヒの距離は、ゆっくりとだが確実に近付いているんだろうな。

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