表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/272

第40話 ドレスと宝石

 翌日、私はアマラを連れて、オネスト商会に向かっていた。


「お嬢様とデート……ウフフフフ」


 怪しい笑みを浮かべる侍女を叱りつけ、メインストリートを南に進んでいく。

 ちらほらと見知った顔を見つける。学校の生徒たちだ。

 複数人でショッピングをしていたり、屋台の料理を頬張ったりしている。

 一部の方々は私に気付き、頭を下げてくれる。私も軽く会釈を返す。


「今のは学校の方々ですか?珍しいですねぇ」

「クラスメイトよ。珍しい?なにが?」

「皆さん、貴族ですよねぇ?連れ立って街に繰り出すなんてなかなかないですよぉ」


 そういえば、ローズやテレーザを誘った時も変な顔されたっけ。

 そこまでおかしなことなのだろうか?


「普通の貴族の友達はどうやって遊ぶの?」

「そもそも、貴族間では友達という考え方が希薄だと思いますよぉ」

「なんで?」

「貴族同士の付き合いは利益があるかないかが基本ですし、そもそも社交や皇城勤務以外は領地で過ごすことが多いので、会うこと自体稀です」


 確かに、帝都に来るまでは、他家の友達的な存在はアリーセお姉さましかいなかったな。

 そのお姉さまも、行商をしているから出会っただけ。お姉さまのような貴族はめったにいない。


「じゃあ、学校が出来て貴族の交友関係が広がったのかな?だったら嬉しいな」

「そうですねぇ。始まったばかりの事なので、どのようになっていくかはわかりませんが、新しい時代が始まったようですねぇ」


 話をしているうちに、オネスト商会に到着した。

 店内に入ると、待ってましたとばかりに従業員に迎えられる。

 ローズの不在を謝ってきたが、なんとなくそんな気がしていたので気にしない。

 昨日、夜会に行くと言っていたので、ビジネスチャンスと張り切りすぎたのだろう……。


 その後、ドレス担当の店員に連れられていった部屋で、採寸を行い、ドレスの希望を伝えていく。

 それを聞いた店員が、簡単な絵で複数のデザイン案を提示してくる。


「お嬢様、第二案が一番お似合いかと」

「そうね。これを基にして進めていきましょう」


 色や詳細なデザインを詰めていき、理想のドレス案は完成した。

 納期や代金などの交渉を侍女に任せ、私は宝飾品売り場に向かった。

 ドレスに合うジュエリーを探していた私は、とある宝石に目を奪われた。

 淡い紫の落ち着いて優しい石だった。


「そちらがお気に召しましたか?南方の国、プルートシア産の宝石です」


 宝飾担当の店員が説明してくれる。カージフでの産出はなく、プルートシアでの産出量も少ないらしい。

 ダメ元で希望を伝えてみる。


「この石でネックレスは作れそうですか?」

「ネックレスとなると……在庫が足りないですね。ブレスレットのサイズがギリギリになってしまいます」


 希少な石らしいのでしょうがない……。

 だけど、ブレスレットならフリードリヒへの贈り物にちょうどいいんじゃないだろうか?

 ずっと頑張り続けてきたフリードリヒ、私の世界を広げてくれたフリードリヒ。

 そして、こんな私を婚約者に選んでくれたフリードリヒ……。

 指輪は贈るのも、贈られるのも恥ずかしい。でも、ブレスレットなら……。


「この石で男性用のブレスレットを作ってください」


 ドレスの交渉を終えた侍女と共に、ブレスレットの交渉を始める。

 納期は大丈夫だが、予算はギリギリだった。希少な宝石は……お高いですね。

 ドレスに合わせる物は諦めよう。フリードリヒへの感謝と労いの方が大切だから。


 その後、店を出た私たちは、昨日も寄ったカフェに向かった。

 

「お嬢様ぁ、私も本当に同席しても良いのですか……?」

「いいのよ。侍女と一緒にカフェしてはいけないなんて法律ないでしょ?それとも、アマラは嫌なの?」

「全然嫌じゃないです!こんなご褒美を嫌がるはずありません!」


 昨日と同じようにジュースと軽食を注文し、席につく。


「それにしても、お嬢様ぁ。本当に良かったのですか?あのブレスレット……」


 アマラの心配はもっともだ。ドレスはナッサウ家のお金で買ったが、ブレスレットは別会計。

 私の個人資産から支払った。贈り物を親のお金で買うとか……嫌じゃん?


「大丈夫よ。私は物欲とかあまり無いし、借金したわけでもないのだし」

「お嬢様がそれでいいというのであれば……。ですが、男性用ということは殿下への贈り物ですか?」


 他人にプレゼントっていうのを言われると、妙に恥ずかしく感じる……。

 別に愛の贈り物ってわけでは無いわけで……。感謝の贈り物なわけで……。

 心の中で、謎の言い訳を繰り返す。


「そうよ。感謝の!感謝の気持ちを込めて、フリードリヒにプレゼントするのよ」

「フフフ、きっと殿下も喜ぶでしょうね……」


 生温かい視線が耐えきれず、顔を背ける。

 そこにタイミングよく、注文した物が届く。店員ナイス!


「さ、さあ、注文したものも届いたし、頂きましょう!」

「お嬢様ぁ、そのようなことでは逃がしませんよぉ。殿下のことは名前呼びなんですねぇ」


 ニヤリと笑う侍女が怖い。ここぞとばかりに攻めてくるつもりのようだ。


「本人の前ではフリード君って呼んでるわよ!恥ずかしいし……」

「あらあら、殿下もきっと待っていると思いますよぉ?」

「そんなこと言っても、前世でだって男性のことを呼び捨てなんてしたことないわよ……」


 彼氏だったマコト君だって、常に君付け。当然、他の男性も君付けやさん付けだ。

 前世も今世もお嬢様として育てられた私にとって、異性を呼び捨てるのはハードルが高い。


「なら、なおさらですね!殿下は前世でも恋人だったのでしょう?自分だけ特別だってなったら……」

「そうね……。私がフリードリヒ=マコト君ってことを知らない設定だからね」

「殿下の希望とは聞いていますが、お嬢様はそれでよろしいのですか?」

「いいの。お兄様とも話し合って、前世での関係はリセットしたの。だから、大丈夫!」

「そうですか。……ハインリヒ様も解放されたのですね……」

「ん?お兄様がどうかしたの?」

「いえ、なんでもありませんよぉ。ハインリヒ様とは最近どうですか?」

「どうって聞かれても、今まで通りよ?それより、お兄様から聞いたけど、あなた達密会してるそうじゃない?」

「お嬢様情報の共有をしているだけですよぉ。皇城での生活を伝えたり、逆に生徒会でのお嬢様の話を聞いたり……」

「なによそれ!ちょっと、アマラ詳しく――――――」


 その後、注文した物も食べ終えた私たちは、店を出て皇城に向かって歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ