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第37話 対立と対立?

「しっかりいてこましたな!さすがマリアちゃんや!」

「マリアちゃんの魔法はいつ見ても凄いなぁ!俺も負けてらんないね」


 やっぱり、最初の議題はイザベル様についてだった。

 自信を打ち砕く形になってしまったが……その後はおとなしくなったので良かった、のか?


「イザベル嬢のように、表立って動いてくれる分にはやりやすいんだがな……」

「そうですね。あそこまで単純であれば、いくらでも対処のしようがありますね」


 お兄様が対処って言うと、なぜか背筋が寒くなる……。


「皆には悪いが、私たち生徒会は改革派の中心と認識されている。今後も嫌がらせが続く可能性が高い」


 徐々にではあるが、帝国内の貴族は二分されつつある。様子見の家も含めれば、三分か。

 皇女殿下の立太女を押す保守派、フリードリヒ様を押す革新派、どちらにつくか迷っている中立派。

 今のところは、中立派>保守派>革新派という形なので、表立っての対立は少ない。


「そんな政治的対立を学校内に持ち込まないでほしいよな」

「ん。私は学問と研究がしたいだけ」

「そうは言ってもこの学校は貴族の集まり。仕方ないでしょうね」


 お兄様は濁しているが、私とお兄様はフリードリヒ様の考えを知っている。

 学校で改革派の協力者を集めていること。それを、随分昔から準備していたことを。

 だが、一つ気になることがある。イザベル様のことだ。


「アーティラ公爵家はたしか中立を保っていますよね?なぜ、イザベル様は私に執拗に絡んでくるのでしょうか?」

「マリア……。もしかして、本当に気づいていないのか?」

 

 フリードリヒが呆れ顔だ。何故だろう?おかしなことは言ってないはず。


「マリアちゃん、あれはな、ただの嫉妬や妬みやねん」

「イザベル様が?なぜですか?」

「マリア、昔からお前は自分に向けられる感情に疎いな。周りの事はちゃんと把握できてるし、頭の回転も速いのだが……」

「君は私の婚約者だ。魔力も多く、黒真珠と称えられる美貌、生徒会設立メンバーとして有能だと認識されている。わかったか?」

「ええと、イザベル様は、魔力も学力も、……見た目も劣っているから妬んでいるんですか?」

「マリアちゃん、ド直球だね。でも、そういうことでしょ」

「ああ。ただのヒステリックだ。あれが私の婚約者候補だったと思うと……恐ろしい」


 あれ?ってことは、昨日アマラが言ってたことが当たっちゃってるじゃん!

 一方的にライバル視してきて、フリードリヒを狙ってるって……。


「まあ、なんだ。あれは君が上手いことあしらってやってくれ。協力は惜しまないが、解決できるのは君だけだ」


 そうですね……。派閥の対立とかの方がよっぽど簡単に思えてくる。


「保守派の工作ならもっと慎重に手を回してくるだろうから、皆も気を付けておいてくれ」


 その言葉に、みんな頷く。

 その後、朝の馬車渋滞のことを話し合い、予定していた議題はすべて片付いた。

 だが、私には一つ提案したいことがあった。


「すみません。身分差別関係で一つ提案したいことがあります」

「わかった。続けてくれ」

「はい。みんなで一つの課題に取り組むようなイベントを行いませんか?それぞれが活躍できれば、能力を認め合って差別の緩和が狙えるかもしれません」

「ん。それ面白い。例えば?」

「例えば、野外研修とか?食材の調達や天幕の設営などを生徒たちで協力して行うというのは?」


 最後まで聞いていたフリードリヒとお兄様が、同時に答える。


『駄目だ』


 まさか、これほど息ピッタリで否定されるとは思わなかった。名案だと思ったのに。


「安全性の確保が難しい。今いる教職員の数ではあきらかに手が足りない。ここぞとばかりによからぬことを企む輩が出てくることだろう」

「フリードリヒに同意します。もし何か起こってしまった場合、発案者である生徒会や、学校の管理体制が責められるでしょう」


 確かに。保守派にしてみれば革新派を責める口実作りを企むだろう。

 まだ出来立ての学校。ここで下手に問題が起これば、今後の学校運営にも響いてしまう。


「すいません。私の考えが浅はかでした……」

「いや。イベントというのは面白い考えだと思う」

「せやったらイベント案を募集してみるってのはどうや?」

「そうですね。まだ入学したばかりで右も左もわからない人も多いでしょうし、安定してきたらやってみるのもいいかもしれませんね」

「そうだな。すぐに動き出すのは難しいだろうが、今後、機を見てやってみるのは面白そうだな」


 とりあえずは意見がまとまったようだ。駄目と言われた時には焦ったが。


「では、今日は解散とする。皆、ありがとう」


 その一声で、みんな帰宅の準備を始める。

 私も準備を終え、フリードリヒと共に皇城に帰っていった。


――――――

 

「おかえりなさいませ、お嬢様ぁ」


 侍女に熱烈に迎えられる。ぶれないなぁ……。


「貴女の提案、形は変わりそうだけど通るかもしれないわ。ありがとう」

「お嬢様のお役に立ててよかったです!」


 尻尾があったら大暴れしているんだろうな、って思えるぐらいにじゃれついてくる。

 ただ、余計なフラグを立てたのは叱らなければいけないな。


「ただね、アマラの言うようなライバル令嬢が現れたわ。アマラが余計なことを口走るから……」

「それって私のせいなんですかぁ。そのご令嬢はどちら様ですか?」

「アーティラ公爵家のイザベル様よ。みんなが言うには妬みだと……」

「ああ、それは仕方ないですねぇ。殿下の婚約者候補筆頭でしたしねぇ」

「どうもそれだけじゃないらしいわ。私にたいして劣等感を持ってるらしくて……妙に絡んでくるのよ」

「お嬢様に絡むのは許せませんが、正しく劣等感を抱いているのは評価できますねぇ」


 正しい劣等感ってなによ?私にとってはいい迷惑なんだけど……。


「なにかいい解決法はないかしら?」

「なにもする必要はないと思いますよぉ。きっとお嬢様の素晴らしさに気付いてデレてきますよぉ」


 デレるって……。お兄様、余計な知識を与えすぎないでください。


「そうだといいわね……。さあ、夕食の準備をお願い」


 侍女が夕食の準備を始める。いろいろあって、疲れる一日だったな。

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