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第36話 魔法の力

 訓練場にはすでに多くの生徒が集まっていた。

 午後の魔法の授業は、クラスに関係なく全員まとめて行われる。

 午前の座学は教室の収容人数の関係でクラスを分けなければいけないが、訓練場は広いため問題ない。


「マリア様、お待ちしておりましたわ。貴女に公爵家の魔法の神髄をお見せいたしますわ」


 別に待ち合わせをしていたわけでもないのだが、イザベル様が声をかけてくる。


「イザベル様。今日は初の魔法の授業ですので、魔力の知覚から始めると思いますよ?」

「わたくしにそのような初歩の初歩をやらせると?すでに攻撃魔法まで使いこなすわたくしに?」

「はい。学校での授業とはそういうものです」


 納得いっていない顔のイザベル様を放置し、生徒会の男子たちと合流する。


「イザベル嬢に完全に目をつけられているようだな」

「困ったことにそのようですね……」


 フリードリヒのあ、愛の告白……にもめげていないようだ。

 リューネブルク侯爵様をメンタル強化したような厄介さだ。


 しばらくして、教師陣が到着した。ミリヤム様を筆頭に、何人かの魔法教師もいる。

 この学校の魔法教師は、国内外に名の知れた魔法使いばかり。

 そのような魔法使いに指導してもらえるということに、生徒たちは興奮を隠しきれない様子だ。


「それでは午後の授業を開始します。初の授業ということで、まずは魔力の――――――」


 ミリヤム様が魔力についての説明を始める。

 以前、私の魔力の考え方をミリヤム様やテレーザに研究を進めてもらっていた。

 国家機密レベルの情報のようで、皇帝陛下とも話し合い、ある程度までなら開示してもよいということになっている。

 その最先端の魔力理論をミリヤム様たちが解説をし、多くの生徒は驚きを隠せない様子で聞いている。


 その後、魔法の習得度別に班をわけ、魔力の知覚が始められた。

 私たち生徒会メンバーは全員、攻撃魔法まで習得を終えており、”それ”を使いこなせるよう指導も行われている。

 なので、魔力の感知が出来ていないグループのサポートに回ることになった。


「そうです。まずは身体中に血が巡っているのを意識してください」


 私も、魔力を掴めずに困っている生徒を見つけては、指導していった。

 他の班、中級や上級の人たちも、新しい魔力の感知の仕方に困惑しつつも習得していった。


「あれ?前よりも魔力が操りやすくなってる!」

「本当だ!この理論……すごい!」


 多くの生徒が新理論の効果を体感して、満足げだった。

 ある一人を除いて……。


「なによ……わたくしは教わる側なのに……なんで小娘が教える側なのよ!納得いかない!」


 イザベル様の叫びを聞きつけ、ミリヤム様が駆け寄る。


「イザベル様、マリア様や生徒会の皆さんは教えるに足る実力を持っていると、私たちが判断しました」

「なら、わたくしもその実力はありますわ!」

「いえ、貴女はまだ教わる側です。引き続き、新しい魔力の感知を続けてください」

「ふざけないで!わたくしの実力は本物よ!小娘などに負けてはいないわ!」


 ドリルを荒ぶらせ、なおも食い下がる。諦めたミリヤム様が私を呼ぶ。


「マリア様。申し訳ないのですが、イザベル様と共に魔法の実演をしてもらってもよろしいですか?」


 暴れ狂うドリ……イザベル様、恭しくお願いしてくるミリヤム様。

 はぁぁ、目立ちたくないのだけど仕方がない。


「はい。この状況ではそれが手っ取り早いですね……」


 その言葉を聞いたミリヤム様が、生徒たちに訓練を中断させて集合を促す。

 何事かと、ミリヤム様の両脇にいる私とイザベル様に視線が集まる。


「突然ですが、マリア様、イザベル様に魔法の実演を行ってもらいます」


 状況を把握したであろう生徒会メンバーが悪い笑顔で見守っている……。

 ローズに至っては、口パクで、いてこましたれと伝えてきている。


「今から二人には攻撃魔法を撃ってもらいます。皆さんにはこの一年の間でここまで到達してもらうので、しっかりと目に焼き付けておいてください」


 そう言い終えると、私とイザベル様に位置につくよう指示する。

 遠くに設置されている的に魔法を放てばいいらしい。

 位置につき、呼吸を整える。


「それでは、火魔法!」


 ミリヤム様が言うと同時に、私は手のひらを前に突き出し、”それ”を手の先に集める。

 手の周辺の大気が燃え上がるよう意識し、魔力を注ぐ。

 前方に火球が生成され、的にまっすぐに飛んでいく。そして、着弾。

 ドォォォン!と爆発音とともに、いくつかの的がはじけ飛ぶ。

 ちらっとイザベル様を見るが、いまだに小さな灯火程度の火が手のひらの前で揺らめいている。

 私よりずいぶん遅れ、火球を生成したイザベル様が、的に向けて放つ。

 ボン!と小さな爆発音で着弾する。着弾した的の表面が焦げている。


「次は、風魔法!」

「えっ!?なにその魔法!?」


 風魔法を知らないイザベル様は、固まったまま動けずにいる。

 それを尻目に、私は手の周辺の大気を圧縮し、的に向けて放つ。

 風魔法は不可視だ。爆発音とともに、急に的がはじけ飛ぶ。


「お見事でした、マリア様。このように、新しい攻撃魔法も授業に取り込んでいます。皆さんもしっかり学び、習得に励んでください」


 ミリヤム様が話し終えると、生徒たちが歓声をあげた。

 口々に、新魔法の凄さ、私の魔法の威力や速度、学校に入学できたことの喜びなどを語っている。

 片やイザベル様は、悔しさと敗北感で立ち尽くしているようだった。


 その後は、再開された授業も無事?終わり、初の授業がすべて終わった。

 授業の終了を合図に、私は多くの生徒に囲まれた。


「マリアさん、素晴らしい魔法でした。私も貴女を目標に頑張りますわ」


 侯爵家の方が声をかけてきた。私やローズのような、上級貴族の末席の生徒会メンバーをよく思っていなかった人たちも認めてくれたらしい。

 結果的には、イザベル様のわがままが良い方向に作用したようだ……。


 制服に着替えた生徒会メンバーは生徒会室に集合した。

 問題だらけの授業初日だった……。

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