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第34話 反省会

 「入学式とその後の動きで問題点があったと思うものはいるか?」


 来年以降のスムーズな進行のための反省会が始まった。


「俺は学校長の話が長すぎたと思う。あれは……拷問だった」

「ん。あれは駄目」


 みんな揃って首を縦に振る。やっぱり校長の長話はどこの世界でも不評のようだ。


「クラス分けの発表方法はもおちっと考えたほうがええんちゃうか?」

「そうだな。クラス分け表の周りが混雑して進行に影響がでるな」

「クラスの分け方も考えた方がいいかもしれませんね。私たち二組は女性が多すぎるような気がします」

「ハインリヒ……羨ましい。三組は男だらけだぞ!俺と変わってくれよ」


 クラスを分けること自体が特例だったため、深く考えなかったのは失敗だった。


「では、各教室に分かれてから問題はあったか?」


 やはりイザベル様の発言は問題だろうな。それにつられて真似する人がいたし……。


「私たち一組では、一部の方が家格による威圧のような発言がありました」

「二組でもあったな。上級貴族の一部は傲慢な態度が見受けられました」

「三組もや。あたしが自己紹介しとる時に、伯爵家風情が私を差し置いて生徒会とは、っていちゃもんつけてきたんよ」


 どこのクラスも似たような状況らしい。一朝一夕ではどうにもならないだろう……。


 その後、各問題に対しての対策が話し合われた。

 校長の話、ミリヤム様にはスピーチの時間に制限時間を設定すること。

 クラス分けの通知は合格発表と共に連絡すること。

 クラス分けは男女比、家格の上下を踏まえて均等に行うこと。

 一番の問題である差別問題は継続課題となった。

 暫定対策としては、教師陣や生徒会によって都度警告する。

 恒久対策案として、風紀委員の設立の検討、罰則の導入などが話し合われた。


「やはりすぐには貴族階級の撤廃は難しいだろうな。私のスピーチに賛同してくれた面々もほとんどが下級貴族だろう」

「そうですね。数としては下級貴族が圧倒的に多いため、拍手の音も大きかったのでしょう」

「俺やテレーザはとりあえず大丈夫だろうけど、マリアちゃんとかローズ、いちおうハインリヒも伯爵家だから気を付けろよ」

「いちおうではなく伯爵家ですよ。まあ、絡んでくるようであれば……厳正に対処するまでですね」

「うわ……こわぁ。あたしも商人の端くれ。舌戦でいてこましたるわ!」


 みんなしっかりしてるな……。いけない、いけない。私もしっかりしなきゃ!


「私も大丈夫です。最悪、フリード君の婚約者っていうのをチラつかせます」

「マリア、強かになったね……」

「ん。使えるものはなんでも使え」

「はい。相手が立場を持ち出してくるなら、私もそれに応えるまでです」


 身分差別を禁止するのに、身分で対抗するのはあまり褒められた行いではないだろう。

 でも、相手がそれを破ってくるのだから、私はより強い力でねじ伏せるつもりだ。


「とりあえず、今日の議題は以上だ。明日からは授業が始まる。皆も気を引き締めてくれ」


 みんな頷くと、後片付けを始める。

 皇城組と別邸組に分かれ、帰路に就く。


「明日からが本番だな。しばらくは君にとって退屈な授業だろうが」

「それを言ったら貴方だって。復習にもなりますし、来年以降に役立てるように問題点も探しておきます」

「そうだな。今年の入学生には悪いが、学校制度の実験体のようなものだからな。少しずつでも良くしていこう」


 皇城内でフリードリヒと別れ、自室に向かう。

 なんか皇城が自分の家みたいに感じ始めている自分に驚く。慣れって怖い。

 自室に入ると、待ってましたとばかりに侍女が飛び掛かってくる。


「お嬢様ぁ、初登校はどぉでしたかぁ?」

「どうもなにも、今日は入学式と説明だけよ。授業は明日からなんだから」

「そうですねぇ。ですが、らのべ?だとライバル令嬢の出現とか、フリードリヒ様はわたくしのものよ!とかあるんですよね?」


 どこ情報だよ……。どうせお兄様あたりに吹き込まれたんだろうけど……。


「あるわけないでしょ!そんなのは創作物の中だけの話よ……」

「それもそうですねぇ。お嬢様に対抗しようとするお馬鹿さんはお馬鹿さんだけで十分ですねぇ」


 いまだに根に持ってるのか。リューネブルク侯爵様がさすがに不憫に思えてくる……。

 やり方はよろしくなかったが、血統や伝統を守ろうと頑張っているんだろう。

 そういった意味でも、学校の中だけでも貴族階級を撤廃するというのは困難な挑戦なのだろう。


「ホントままならないわね……」

「お馬鹿さんですか?」

「違う違う。学校内の階級差別をなくすことよ」

「それは難しいでしょうねぇ。私もこの家に仕えるようになるまでは、嫌というほどに身に染みていましたからねぇ」

「あっ、ごめんなさい。アマラが苦労していたとは聞いてたけど……不躾だったわね」

「いいんですよぉ。おかげでお嬢様の下で働けているんですし」


 聞けば聞くほど難しいと思わされる。ナッサウ家は寛容だったからなおさらだ。

 悩んでいる私をみかねて、侍女がアイデアを出す。


「催し物はどうでしょうか?一人では難しい課題を与えて、協力して解決するように仕向けるとか?」

「アマラ、素晴らしいわ!野外研修なんてよさそうね……」


 侍女の意見で活路を見出した気分だ。普段は狂っていても、アマラは優秀なんだよね。


「お嬢様ぁ、ご褒美に私をなでなでしてもらってもよろしいですか?ハァハァ」


 前言撤回。駄目だ、この侍女。主人に頭を撫でさせる侍女がどこにいるのよ!

 ここにいるんですね……。まあ、いいアイデアだったし、多少のご褒美は与えておくか。


「しょうがないから……今回だけね!」


 仕方なく侍女の頭を撫でる。緩みきった侍女の顔をみて、げんなりする。

 よそ様では見せられないな。黙って立ってればかなりの美女なのに……。


「はい、終わり。明日からは授業が始まるから、夕食を摂って早めに寝るわ」

「しばらく頭は洗いません!それでは夕食を運んでまいります」

「ちょっと待ちなさい!しっかり清潔に保ちなさい!」

「了解しています(頭以外は)」

「絶対にわかってない顔してる……。もういいわ。何も言わない」

「では、今度こそ行ってまいります」


 華麗な動きで夕食を取りに向かう侍女を見送る。

 どこで教育を間違えたのか……。私の教育係のはずなんだけど。


「早めに寝るとのことなので、少し軽めの夕食にいたしました」


 やはり、こういうところは優秀だ。だからこそ勿体ない。

 侍女の気遣いに感謝しつつ夕食を摂り、明日に備えて早めにベッドにもぐりこんだ。

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