第33話 入学式
いつものように、侍女からのスキンシップで目を覚ます。
そうだ。今日は入学式の日。
まとわりつく侍女をあしらいながら、朝食を摂る。
そして、真新しい制服を身にまとう。やっぱり制服はいい。学生と言ったら制服だ。
紺色ブレザーに、首元にリボン!チェック柄スカートにスクールソックス!
生徒会権限を総動員し、男性陣の冷めた目を尻目に開発しました!
ローズに材料集めを、テレーザに素材開発を、そして私がデザインを!
何世代も先の服飾技術だろうけど気にしません。可愛いは正義なのです!
「お嬢様ぁ、行ってらっしゃいませぇ。ハァハァ」
制服姿を嘗め回すように観賞する侍女に送り出され、フリードリヒとの待ち合わせ場所に向かう。
制服が珍しいのであろう。皇城内の視線を一身に集めている。
「おはよう、マリア。それにしても……破壊力が凄いものだな」
「おはようございます。破壊力ですか?」
「気付いていないようなら……気にしなくていい。さて、学校へ向かおう」
二人で学校へ歩き始める。やっぱり街中でも目立つようだ。
「頑張って制服を開発してよかったです!みなさんも興味津々ですね」
「制服だけじゃないのだろうがな……」
「……?」
制服をまとうマリアやフリードリヒの美しさに多くの人が魅了されていることに気付かないまま、学校に到着した。
「マリアちゃん!ホンマ可愛いなぁ!」
正門前で待っていてくれた他の生徒会メンバーがこちらに向かってくる。
「ん。素材がいいと、こうも違うとは」
「マリアちゃん!俺と結婚してくれ!」
「レオン、殿下や私の前で命知らずな奴だな……」
挨拶?を終え、入学式の会場へ向かう。
会場である講堂には、すでに多くの生徒が集まっていた。
私たち生徒会の席は最前列に用意されている。中央の通路を通り席に向かう。
「あれが殿下率いる生徒会……。やっぱり違うな」
「殿下にハインリヒ様。あぁ、眼福。目が幸せですわ」
「いやいや、やっぱりマリア嬢だろ!可愛らしさと美しさが同居するとか、奇跡だろ。胸もでかいし……」
「おい、男子!いやらしい目でマリア様を見るんじゃありません!」
ものすごい注目を浴びているようだ。私たちのことを話す声が聞こえる。
あまり良くないな。学舎の中ではみんな平等が校則なんだし……。
憧れるのをやめましょうって、前世のスポーツ選手も言ってるわけだし。
席についた私たちは、式の開始を待った。
しばらくして、司会の教師の開式宣言で入学式が始まった。
まず、学校長であるミリヤム様からの式辞。とても長かった。
どの世界でも校長というのは長話をしないといけないのだろうか?
次に、来賓の祝辞。陛下を筆頭に、宰相閣下、元帥閣下などの国の重鎮がお祝いの言葉を述べていった。
あまりの錚々たる顔ぶれに、新入生たちが気圧されているようだ。
そして、待ちに待った生徒会長の挨拶。
壇上に登ったフリードリヒが語り始める。
「私が生徒会長フリードリヒだ。この学校内では私はただのフリードリヒ。君たちの中には公爵家も女爵家もいるだろう。だが、この学校の中にいる間は、それを忘れてほしい。この新しい学校というものは、君たち一人一人と共に作り上げていきたいと思っている。身分にとらわれない自由な発想を、私たち生徒会は求めている。この学校をよくしていくために皆で頑張っていこう!」
フリードリヒが席に戻ろうとすると、会場内からは拍手が巻き起こった。
とても意外だった。学校内限定とはいえ、貴族の身分制度を破壊しようとしているのだ。
なので、それを前面に押し出したスピーチをしたフリードリヒが、拍手で迎えられるとは思ってなかった。
席についたフリードリヒが、生徒会メンバーに向けて言い放つ。
「お前たちも学校内での殿下呼びは禁止だ。敬称も省いてかまわん。私たちが生徒たちの手本にならなければな」
その言葉にみんな頷いた。
その後は、教師陣の紹介を行った後、閉式の宣言で入学式は終わった。
その後、講堂の出入り口付近にクラス分け表が張り出される。
教職員に指示され、それぞれの教室に生徒たちが向かう。
最初にクラスを分けるのも、入学者数が多すぎる今年や来年くらいまでだろうけど。
生徒会メンバーは均等に分かれるように調整してある。
一組、私とフリードリヒ。二組、お兄様とテレーザ。三組、レオンとローズ。
それ以外の生徒は一部を除き、完全にランダムだ。ミリヤム様がくじで決めたらしい。
念のためクラス分け表を確認した私たちは、各教室に向けて移動を開始した。
教室についた私は、空いている席を探す。特に席の指定はない。大学のような感じだ。
前列の窓際が空いていたため、急いで確保する。その後をフリードリヒがついてきて、隣に座る。
教室に一組の生徒が全員集まったため、教師の指示でそれぞれの自己紹介が始まる。
私やフリードリヒが無難な自己紹介をする中、妙に張り切って自己紹介をする猛者がいた。
「わたくしの名は、イザベル・アーティラス・カージフ。アーティラ公爵家の二女ですわ!わたくしと共に学べる事に感謝しなさい!」
教室内がざわつく。当然だろう。フリードリヒのスピーチをみんな聞いていたわけだし……。
このイザベル様がクラス分けの一部の例外だ。扱いに困るという意味で……。
アーティラ公爵家。この国唯一の公爵家にして選帝侯。王都アーティラ周辺を任される大貴族。
王都は帝都に遷都する前まで、カージフが王国だったころの首都だった地。
遷都の際、飛び地の直轄領を嫌った皇帝が、妹に代理統治を任せたことがきっかけだ。
「イザベル様、そのような物言いは学校の理念に反します。今後気を付けるように」
教師がたしなめるが、言われた本人は聞く耳持たずという感じだ。
しかたなく、次の生徒に自己紹介を続けるよう促す。
自己紹介が一巡し、教師から今後の予定や各施設の説明が行われた。
今日は初日ということもあり、説明が終わった後は解散となった。
「イザベル嬢には注意しろ。彼女の行動は予想がつかないからな……」
「はい。聞いていた以上に強烈な人のようですね」
解散後、私たちは皇城から移転した新生生徒会室に向かっていた。
「あとは何人か根っからの保守派の家の者もいる。いやがらせ程度なら仕掛けてくるかもしれない」
「ですよね。ですが、それは貴方と婚約した以上、避けては通れぬことだと承知しています」
「苦労をかける。私で力になれることならなんでも言ってくれ」
生徒会室に到着した私たちは部屋に入った。
皇城内にあった旧生徒会室よりも広くなった生徒会室には、すでに全員到着していた。
今後の事を考え、各々が使いやすいように配置替えをしているようだ。
ある程度配置が整ってきたのを確認した後、フリードリヒが声をあげる。
「全員集合してくれ。話し合いを始めよう」
作業の手を止め、全員が席についた。




