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第30話 真相

 私は生徒会室に向かって歩いていた。

 探し人はお兄様。多少強引にでも話をしなければならないと思ったからだ。

 そして、目標の人物は簡単に見つかった。生徒会室でいつものように議論を交わしていた。


「皆さま、お兄様を少々お借りしても?」

「マリアちゃん、どうぞどうぞ」


 みんなを代表してレオン様が答える。

 お兄様を連れて退室しようとした時、フリードリヒ様が遅れてやってくる。


「フリードリヒ様、空いている部屋を借りてもよいでしょうか?」

「ああ。かまわない。大事な話なのだろう?」


 私は頷いた後、部屋を出る。

 近くの倉庫代わりに使っている部屋に入り、鍵をかける。

 終始、お兄様は無言だった。私の意図に気付いているのだろう。


「お兄様、話したいことがありまして、無理やり連れてきたこと、謝罪します」

「問題ない。そろそろ来るだろうと思っていた」

「単刀直入に聞きます。貴方は誰の転生体ですか?」


 お兄様は驚いた様子もなく、淡々と語りだした。


「気付いているようだな。私は真さんとあなた、夏美さんを手にかけた男だ」


 この人の最近の行動、私を殺したあいつが最後に言った言葉。決定打は早すぎる早馬の出発。


「貴方は私たちのために転生してきたというんですか?助けるっていう言葉のためだけに?」


 私は正直信じていなかった。そんな約束を果たすために命を捨てるなど……。


「そうだ。俺はあなた達に罪を償わなければならないから」

「ということは、フリードリヒ様がマコト君なんですね」

「そうだ。やっぱり真さんは伝えなかったようだね。律儀な人だ」


 じゃあ、フリードリヒ様は私が夏美だってことを知っているんだ。

 だから、私と婚約した?……なにか不自然な気がする。

 私に頷かせたいなら、転生者と打ち明けた時にマコト君だと名乗り出るべきだ。

 わからん!とりあえずこの人との話に集中しよう。


「なぜ、私たちを殺したんですか?罪を償うために死ぬぐらいなら……私たちを殺さなければよかったじゃないですか!」

「それは……まだ話せない。世界を救えるはずだったんだ……」


 夏美として死ぬ直前にも言っていた。世界を守る。意味がわからない。


「まだ、ということはいつか話してくれるのですか?」

「そのつもりだ。もっとも、貴女が私を殺したいほど憎んでいるようなら、理由を話してから死ぬつもりでいる」


 この人はなにを言っているの?それほどまでの覚悟で生きてきたの?

 だが、私の答えは決まっている。決まり切っている。


「夏美としての私は、貴方を許せない。だけど……今の私、マリアにとって貴方は優しくて、頼りになって、だれより素敵なお兄様なんです!」


 私の目からは涙が零れ落ちていた。

 

「マリア、すまない……。馬鹿なことを言った……」

「わかったようなのでいいです。それでは、お兄様の正体をフリードリヒ様は知っているんですか?」

「いや、知らないはずだ。そもそも、ほかに転生者がいることも知らないはずだった」

 

 はずだった?フリードリヒ様は転生者がほかにいると思って行動していたってこと?


「方法はわかりませんが……お兄様が転生させたのですよね?マコト君、私、貴方の順番で」

「そうだ。前世では私と真さんに面識はない。順番も一番最初。私からの情報もなく、ほかの転生者の存在を予想していた」


 フリードリヒ様、この場合はマコト君か。賢すぎない?


「実際のところ、お兄様以外で転生をさせることができる人はいたんですか?」

「いないだろうな」

「では、お兄様が転生させた人数は?」

「真さん、夏美さん、俺。三人だけだ」

「そのことをフリードリヒ様に伝えたんですか?」

「私が正体を明かしてない以上、伝えられない」


 マコト君は偶然転生したと思っているのだろう。だから、ほかに転生した人がいるかもしれないと……。


「お兄様は正体を、ことの真相を明かすつもりでいるんですか?」

「そのつもりでいる。二人を結びつける前に、真さんに遠ざけられるとまずかった。だから隠した。だが、あなた達の婚約は成ったのだろう?」

「やっぱりお兄様はそのために動いていたんですね。では、なぜ私にフリードリヒ様がマコト君だってことを伝えなかったのですか?」

「本当は伝えたかった。より確実にするために。だが、真さんに止められた」


 なぜなのだろう……?やっぱり不自然というか、不思議だ。

 やっぱりマコト君は夏美のことをそこまで好きではなかったのかな……。


「理由は聞いていますか?たとえば……マリアの魔力は欲しいけど、夏美と結婚するのは嫌だから迷っているとか?」

「そんなわけないだろう!あの人ほど貴女を想っている人はいない!」


 他人のことでここまで声を荒げるなんて……。お兄様らしくない。


「マリアが夏美さんの記憶を完全に取り戻していなかったことを聞いて、マコトとナツミではなく、フリードリヒとマリアとして付き合っていきたいと」


 私のことを気遣って……。そんな人を私は疑っていたなんて……。


「そうだったんですね……。ほんとにマコト君らしい。優しくて、頑張り屋さん。だけど、どこか不器用で……」

「だから……お願いなのだが、夏美さんと真さんではなく、マリアとしてフリードリヒ様と接してくれないか?」


 お兄様からのお願い。いつも私が頼ってばっかりだったんだ。当然私の答えは決まっている!


「わかりました。前世の関係ではなく、今世の新しい関係を築いていきます!だから……お兄様も過去のことは忘れてください!」

「前世のことを許してくれると?」

「え?なんのことですか?私もフリードリヒ様も、前世のこととかわからないです」


 私はにこっと笑ってみせた。応えるかのようにお兄様も笑う。


「そうだったな。私はハインリヒでマリアは可愛い妹。フリードリヒ様はともに歩む同志。それだけだったな……」


 生徒会室に向かう二人の顔は、実に晴れやかだった。


「マリア嬢、ハインリヒ。いい顔になったな。さて、抜けていた分、しっかり働いてくれよ」


 生徒会のみんなに礼を述べ、お兄様と共に席についた。

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