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第26話 生徒会2

 今日も、ミリヤム様、フリードリヒ様との訓練を終え、生徒会室(仮)に向かう。

 部屋に入ると、昨日の話し通り、二人の見知らぬ女性がいた。

 一人は、ブロンド寄りの赤毛にアンバーの瞳。小柄な可愛らしい女性。

 もう一人は、暗めのブロンドの髪に、濃いグリーンの瞳。身長は高いようだが……猫背だ。

 二人を観察していた私と、小柄な女性の目が合う。その瞬間だった。


「あんたがマリアちゃん?あたしはローゼマリー・フォン・マルク。マルク伯爵家の次期当主や。そんでな、――――――」


 言葉の機関銃が止まらない!とりあえず、要約するとこうだろう。

 マルク伯爵家は、南回りの東西交易路の重鎮。モンベリアル家が北回りのトップで、マルク家は南回りのトップ。

 ローゼマリー様自身も、商会を立ち上げて帝国経済を支えている。

 歳は生徒会最年長の十七で、絶賛婚約者募集中とのことだ。


「――――――。というわけで、あたしのことはローズって呼んでな」

「は、はい。私はマリア・フォン・ナッサウ。ナッサウ伯爵家次期当主です」


 アリーセお姉さまといい、商人は勢いが凄いな……。

 しかも、ローズ様は見た目と中身のギャップが酷い。どちらかというと悪い意味で……。

 そんな様子を眺めて、ぼーっとしている背の高い女性。

 見かねたフリードリヒ様が、催促する。


「テレーザ嬢。君も自己紹介をお願いできるか?」


 そう言われた長身の女性が、深呼吸をした後、ボソボソと喋りだした。


「テレーザ・フォン・プファルツ。十四歳」


 簡潔だった。必要な分だけ喋ったという感じだ。

 仕方なくフリードリヒ様が補足をする。


「彼女は西部選帝侯のプファルツ家の三女。すでに研究者としては超一流で、私の行う公共事業の技術面でのアドバイザーをお願いしている」


 人見知りなのだろうか?ただ単に無口なのか?

 これまた一筋縄ではいかなそうな人だ……。

 

「昨日言った役割分けでいうなら、テレーザ嬢には技術的な助言を、ローズ嬢には財務関係を担当してもらう」


 ん?財務関係はわかる。技術的な助言?

 生徒会でなにをするつもりなんだろう……。


「肩書でいうと、会長が私。副会長がハインリヒ。執行役員がマリア嬢とレオン。会計がローズ嬢。書記がテレーザ嬢だ」


 書記ってそんな仕事だっけ?わからん……。


「というわけで、生徒会全員が集まったわけだ。昨日同様、早急に決めるべきことを優先して進めていこう。まずは、――――――」


 今日も、とりあえず無事終了した。人数が増えた分、様々な意見が出たと思う。

 ローズ様は、やはり商人って感じの考え方だ。

 将来利益につながるのか?ということを重視していると思う。

 また、意見を通すのが上手い。いつの間にか、彼女の弁舌に丸め込まれる場面が多かった。

 テレーザ様は……人見知りではなかった。必要以上に喋るのが面倒なだけだろう。

 だが、技術的な話になると饒舌になる。研究者ってそういう人多そうだからね。

 それにしてもフリードリヒ様。よくもまあ、ここまでの個性を集めたものだ……。

 当の本人は、仕事があるって言って、すでに退室済みなのだが。

 そんなことを考えていた私に、ローズ様が話しかけてくる。


「マリアちゃんってアリーセのお友達なんやろ?」

「ええ、仲良くしてもらっていると思います」


 もしかしなくても二人はライバルなのだろうか?

 どっちが帝国商人のトップだ!とか?


「あたし、アリーセって憧れてるんよ。まあ、ホームが北と南で別れてるから、なかなか会うことないんやけどな」


 意外だ。もっとバチバチした関係なんだと思ってた。


「どういったところに憧れているんですか?」

「アリーセはな、動く商いなんよ。自分の足で売って歩いて、チャンスや思ったらトコトンまで突っ込んでいく。それがかっこいい」

「ローズ様は違うのですか?」

「そうや。私は静の商い。店を開いて客に来てもらう。受け身の商売なんよ。堅実なやり方や」

「ですが、それはローズ様の品を見る目があるからこそ、お客様が足を運んでくれるのですよね?」

「ちゃうちゃう。あたしが言いたいんは商才の部分やない。気持ちの部分や」

「気持ちですか……?」

「そうや。アリーセは商いに命を懸けとる。あいつ、商人として絶対にモンベリアルの家名は出さんしな。身一つからのし上がってるんよ」

「そういった考えに憧れているんですね」

「そうや。正直、商人なら使える武器はすべて使うのが正解や。家名も権力もあたしは使う。だからこそ、アリーセが羨ましい」


 私は二人が羨ましい。まったく正反対のやり方だけど、相手を認めることができる関係性が。


「お姉さまに直接言ってあげれば……喜ぶと思いますよ?」

「いやや!そんな恥ずかしい……。それに、絶対いじり倒されるやん!」


 ローズ様をからかうお姉さまの姿を想像する。

 お兄様すら赤面させるお姉さまのことだ。徹底的にいじり倒すだろう……。

 頭の中の二人の姿に、私は笑ってしまう。


「な?絶対あたしはおもちゃにされて、飽きたらポイッや」

「そうですね。あのお姉さまですからね……」

「あっ、そおや。マリアちゃん、”東方の黒真珠”って有名やん?」

「不相応だとは思いますが……そう呼ばれているらしいですね」

「そこで一つ協力してほしいんよ」

「私にできることなら協力しますよ」

「おおきに!あんな、マリアちゃんグッズを作って販売したいんよ。だからな、――――――」


 その後もしばらく雑談を続けていたが、お兄様の一言で今日はお開きとなった。

 私は、皇城の反対側にある仮住まいの部屋を目指して歩いていた。


「マリア」


 急に声をかけられて驚く。振り返るとテレーザ様がいた。


「テレーザ様?なにかありましたか?」

「明日の訓練、私も見たい」

「私の魔法訓練をですか?」

「そう。駄目?」

「別に大丈夫だと思いますが……基礎の繰り返しなので、面白いことなどありませんよ?」

「ん。それでいい」

「では、中庭で訓練していますので、見に来てください」

「わかった。じゃあ」


 伝えることだけ伝えると、スタスタと歩き去っていった。

 うぅん、本当に見てても楽しくないと思うのだけど……?

 本人がそれでいいと言っている以上、それでいいのだろうが。

 考えながら歩いているうちに、自室(仮)に到着していた。

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