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第25話 生徒会1

 中庭を出た私は、皇族エリアとは真逆の方向に歩いていた。

 通称、文官エリア。国の運営に携わる方々が働いている。お母様の職場で、お祖母様たちの元職場。

 多くの文官が書類を片手に歩き回っている。

 そのエリアの一室に、フリードリヒ様は私を連れてきた。


「ここが魔法学校プロジェクトの部屋だ。マリアにも毎日顔を出してもらいたい」


 そう言いながら部屋のドアが開かれる。

 すでに部屋には二人の男性がいた。片方はお兄様。もう一人は?

 ダークブラウンの短髪に、グレーの瞳。体型はお父様を少しスリムにした感じ。

 猛獣のような強者の風格を感じる。……風格だけのようだ。


「あれ?その子が噂のマリアちゃん?」


 外見とは裏腹に、少し軽薄そうな……もとい、明るく軽快な喋り方だった。


「俺はレオンハルト・フォン・バーデン。バーデン辺境伯の次男だよ。よろしくね」


 ニカッと豪快に笑う。良くも悪くも、軽い。

 北部のシバ連合王国との国境を守護する、帝国の盾ともいえる武門の名家。バーデン家。

 なんかイメージと違いすぎるな……。性格が。


「マリア・フォン・ナッサウです。そこにいるお兄様……ハインリヒの妹です」


 挨拶をする私を、レオンハルト様がまじまじと観察している。

 家格は彼の方が上。彼の性格に引っ張られ、挨拶を簡素にしすぎてしまっただろうか……。

 もしや、怒らせた?と、心配していたが、無用な心配だったようだ。


「噂通り、ホントに美人さんだね!その上、魔力もとんでもないんでしょ?」


 部屋にいる残りの二人の男性が、レオンハルト様を睨みつける。

 だが、そんなことを意にも介さず、彼は続ける。


「俺の嫁になってくれよ!どう?俺ってなかなか優良物け……」


 言い終える前に、怒気が頂点に達している二人に、部屋の奥に連行される。

 激しい怒りのオーラの中、大きな体のレオンハルト様が縮こまっている。

 放置された私は、事の成り行きを眺めるしかできなかった。

 しばらくして、解放されたレオンハルト様と二人が戻ってきた。


「マリアちゃん、ごめんね。お詫びに俺のことはレオンって呼んでくれていいから」

「お前という奴は……。まあいい、こいつはこう見えても優秀な武官。生徒会メンバーの一員だ」

「殿下と私が全体を統括、レオンは武官系の家を、マリアには文官系の家の面倒をみて欲しいと思っている」


 生徒会の中で役割分担をするのか。

 たしかに体育会系の方々と私では上手くコミュニケーション取れないだろうしね。


「今日は来ていないが、あと二人生徒会メンバーがいる。明日は全員揃うはずだ」


 フリードリヒ様は謎のため息をつく。

 そのため息に一抹の不安を覚える。


「残りの二人は女性だ。間違いなく優秀ではあるのだが、癖が強い。マリア嬢、女性同士上手くやってくれ……」


 私に丸投げですか?それは、会長であるフリードリヒ様の仕事でしょうに。

 言葉にせずとも伝わったのか、フリードリヒ様は話題をすり替えることにしたらしい。


「さあ、時間は有限だ。詰めていきたい案件も多いからな!まずは、――――――」


 今日の分の議題は終了した。フリードリヒ様は別の仕事があるらしく、早々に退室した。

 それにしても意外だったのは、レオン様だ。物事を俯瞰して観察が出来ている。

 フリードリヒ様やお兄様とは違う視点で、鋭い提案を出してくる。

 歳は十六らしいので、この中では最年長だ。その差だろうか?

 

「レオン様、質問してもいいですか?」

「えっ、マリアちゃん、俺に興味あるの?なんでも答えちゃうよ」

「……軽いですね。レオン様は領地でも仕事をしていたのですか?」

「なんだぁ。真面目な話かぁ。仕事というか義務?みたいなのはあったね」

「義務ですか……。辺境伯家としてのですか?」

「そうそう。俺の家は最前線だからね。いつもシバ国とは睨み合い。たまに手が出るんだよね」

「手が出る……戦闘が起こるのですか?」

「そうなんだよ。大きな戦闘は無いけど、小競り合いは日常茶飯事。俺も部隊を率いて戦ってるんだよ」


 納得がいった。大局的な視点、踏み込んだ読みは経験からか。

 生来の将器もあるだろうが、置かれた環境で磨かれた部分の方が多いだろう。

 フリードリヒ様はレオン様を、将来の元帥候補と考えているのだろう。


「レオン様は凄いのですね。もう国のために働いてるんですね……」

「うぅん、それはちょっと違うかな。国のためなんて大層な理由じゃないよ」

「では、なんのために?」

「俺のためだよ。俺の周りの人とか領民が傷付かないためにやってるだけだから」


 レオン様も、すでに動いてる人なんだ。

 フリードリヒ様みたいに、持ってる力や知識を正しく使ってる人。

 私はまだ動けていない。持っている力や知識に振り回されているだけ。


「立派ですね」

「あれあれ?マリアちゃん、俺に惚れちゃった?いいんだよ、俺が君をま……」


 調子に乗ったレオン様の頭を、お兄様が小突く。


「レオン、さっきも言いましたよね?またお説教が必要ですか?」

「勘弁してくれよ、ハインリヒ!ちょぉとふざけただけじゃん……」


 その様子を見て、私は笑った。二人もつられて笑った。


「そういえば、マリアは城での生活、不自由してないか?必要な物があれば別邸から届けさせるが……」

「お気遣いありがとうございます。不自由どころか、まるで皇族のように扱っていただいているので……」

「そうか。なら安心だな。だが、なにかあればすぐに言うのだぞ?」


 その様子を眺めていたレオン様が口をはさむ。


「ホント過保護だな。噂では聞いてたけど本当だったんだな。妹溺愛ってやつ」

「ハァァ、そんな噂が流れているんですか。私としては、否定する気もないので構いませんが」


 否定してよ!私は恥ずかしいよ!私が兄離れできない妹みたいじゃん。


「お兄様、いらぬ誤解を招くような噂なので……しっかり否定しませんと」

「誤解も何もないだろう。私はマリアを愛しているのだからな」

「ハインリヒ……お前、すごいよ。俺はお前を甘く見ていたよ……。ドン引きする程度にな」

「お、お兄様。私も兄として尊敬していますが……そこまでまっすぐ言われると恥ずかしいです……」


 本当にお兄様はぶれないな……。お兄様の将来がちょっと不安です。


「そうか。なら、次からはもう少しマイルドに言うようにしよう」

「ハァァ、俺はもう何も言わない。諦めた!そろそろ日も暮れるし、解散しようぜ」

「そうですね。では、また明日」

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