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第22話 帝国にはしる衝撃

 私たちは、大聖堂前に停めていた皇族の馬車に飛び乗った。

 遅れて侍女も合流したが、馬車に乗り込んでいいのか迷っていた。


「マリア嬢の侍女なら問題ない。乗ってくれ」


 そう言われた侍女は、恐る恐る馬車に乗り込んだ。

 伯爵家の侍女が皇族と一緒の馬車に乗るなど、普通ならありえない。

 隅で小さくなっている侍女が可愛らしかった。


「そう怯えるな。お前にはマリア嬢を任せてあるのだしな」

「ですが、殿下。このようなことを許しては、皇族としてのご威光が……」

「私がいいと言っている。さて、大聖堂でなにがあったか説明してもらってもいいか?」


 私は、魔力測定の結果、フリードリヒ様に並ぶほどの魔力があったこと。

 観衆が群がって、困っていたことを伝えた。


「ハインリヒめ。これを予想していたのか」

「フリードリヒ様は、お兄様に頼まれて来てくださったのですか?」

「そうだ。私にとっての切り札が助けを求めていると言われてな」


 切り札?私が?……もしや!?

 私は真っ赤になり俯いてしまう。


「マ、マリア嬢、たっ確かに君が私に嫁いでくれたら、皇帝を目指す道への光明になる。だが、君の意思を尊重するつもりだ」


 フリードリヒ様もしどろもどろだ。

 私は笑ってしまった。完璧だと思っていた人も取り乱すことがあるんだな。


「実は私も、このようなことになるとは思っておらず、いまだに心の整理がついておりません」

「そうだろうな。伯爵家でありながらこれほどの魔力を保有するなど、誰が予想出来よう」(一人は知っていたようだが)

「はい。ですので、このお話は少し考えさせてください……」

「まてまて。まだ結婚してくれとお願いしているわけではない。そう重く考えないでくれ」


 あっ!やってしまった……。嫁いでくれたらうれしいとしかフリードリヒ様は言っていない。

 勝手にプロポーズと勘違いしてしまっただけだ。まるで夏美のように。


「この話は置いておくとして、とりあえずマリア嬢は皇城で匿うつもりだが……よいか?」

「そこまでしていただくわけにはまいりません」

「お嬢様、お言葉ですが殿下の申し出を受けるべきかと」


 アマラはとても真剣な表情だった。そして悔しそうだった。


「マリア嬢、君の魔力の話はすぐに帝都中、いや帝国中に知れ渡るだろう」


 たしかにフリードリヒ様の魔力の話も、モンベリアル領にすぐに広まっていた。


「私は男だからそこまで問題ない。だが、君は女性だ。圧倒的な魔力を持つ女性。わかるか?」


 すぐに気づいた私は、背筋が凍った。

 私が生む子供は、間違いなく多くの魔力を持って生まれてくるだろう……。


「お嬢様、私だけではお嬢様の身を守り切れないでしょう……。なので、どうかお願いします……」


 アマラのことは信頼している。そのアマラがここまで言うのだから……。


「フリードリヒ様、皇城にいれば……安全ですか?」

「ああ。私の名にかけてマリア嬢を守ることを誓う」

「それでは……お願いします」


 馬車は皇城についていた。

 フリードリヒ様に連れられて、とある部屋まで移動する。


「マリア嬢、より確実にするための一手をうっておきたい。ついてきてくれ」


 フリードリヒ様はそう言うと部屋に私を連れて入った。

 皇城内にしては簡素な造りの部屋に、一人の女性が机に向き合っていた。


「フリードリヒ、マリアを連れて……なにかあったか?」


 エリーザベト陛下だった。ちょっと待って!心の準備が間に合ってない!


「本日、マリア嬢が魔力測定を行いました」

「そうだったな。我から教会に手配したはずだ」

「その結果、マリア嬢は私と同等……母上を越える魔力を持っていることが判明しました」

「なんだと!ということは、保護してきたのか?」

「はい。私が到着した時、大聖堂はすでに大混乱に陥っていました。ナッサウの別邸では心許無いと思い、皇城に連れてまいりました」

「良い判断だ。最悪、罪に手を染めてでもマリアとの子を成そうとする輩もいるだろうからな。内外問わずに」


 私は考えが甘かったことを再認識した。

 国内だけの問題ではない。外国、とくにシバ連合王国のような敵性国家も動く可能性がある。


「それで、マリアはこのことを了承しているか?」


 これはすでに私一人の問題ではない。

 私が別邸に戻れば、多くの人を巻き込んでしまうかもしれない。


「はい。私のせいで多くの人が危険な目にあってしまうかもしれませんので……」

「そなたの考えはわかった。だが、一つ言っておく。そなたは自分を責めているようだが、それは違う。責められるのは、そなたを利用しようと企む輩だ」


 それはそうなのだけど……余計な問題を持ち込んだのは私だ。


「そなたの力は悪を成すためにあるのか?違うだろう?使い方を理解し、正しく使えば、これ以上ないほどの善を成せるだろう」


 お兄様も似たようなことを言っていた。

 優れた知識は正しく使わなければいけないと。それは魔力も同じだろう。


「ここでは皇族が魔法を習う環境が整っている。そなたも自身のため、周囲の者を助けるために学んでみてはどうだろうか?」

「はい!私を、そして周りのみんなも守れる力を得るために、協力してください!」

「相分かった。フリードリヒ、マリアの部屋を準備してやれ」


 フリードリヒ様は私とアマラを連れて、皇族の居住エリアにある部屋まで案内してくれた。


「とりあえずこの部屋を使ってくれ。侍女……アマラだったか。お前もこの部屋の控えの間に寝泊まりしてくれ。頼んだぞ」

「はい。お嬢様の身は、私の身命を賭してお守りします」


――――――


 その頃、皇帝は悩んでいた。


「誰かあるか?」


 現れた文官に名簿を渡す。


「この者たちを緊急で議場に集めよ」


 息子のことを思うと、これ以上ないほどの吉報だ。だが、皇帝としては?

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