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第16話 渦中の皇子とその展望

 私たちは、別邸の食堂にいる。

 目の前に広がるのは食卓を埋めるほどの料理。

 奮発したって言っていた。だが、限度というものが……。


「マリアちゃん、ハインリヒちゃん。しっかり食べて大きくなってね」


 老人は若者にたくさん食べさせたがると聞いたが、このことか。

 それにそろそろ成体の私とそろそろ成人のお兄様。

 沢山食べても大きくなるのは上ではなく横にだろう……。

 胸だってこれ以上大きくなったら邪魔なだけだし。


「お祖母様たちは皇城にお勤めですよね。最近の皇城内の様子はどのような感じでしょうか?」


 クリームヒルデお祖母様は文官の教育係。エックハルトお祖父様は財務卿の補佐官だ。


「そうねえ、まずは第一皇子殿下の魔力測定で荒れているわね」

「補佐室内でも、次期皇帝は第一皇子がいいと騒いでるやつもいるな」


 やっぱりそうなるよね。とにかく優秀だからね。

 順当にいけば第一皇女殿下だけど、優秀とも不出来とも聞かない。

 平凡でもとりあえず魔力量は多いらしいので、皇帝になっても問題はないだろう。

 だけど、エリーザベト陛下の次の代となると能力的に見劣りが激しすぎるかな。


「やっぱり殿下の立太子は難しいでしょうか?」

「現状はな。今の選帝侯たちは保守的な者が多いからな」


 確かにリューネブルク侯爵様は自身の血筋に誇りを持っている方だった。

 伝統や歴史を大切にするのは目に見えている。


「だけどね、陛下は第一皇子殿下に跡を継がせたいと思ってるらしいのよ」

「そうだな。財務を通さずに、あんなプロジェクトを第一皇子に主導させるぐらいだからな」

「もう魔法学校の話は広まっているんですね」

「マリアちゃんこそよく知ってるわね。今日着いたばかりでしょう?」

「モンベリアル家のアリーセ様に聞きました」

「ああ、あの子なら納得ね」


 皇城や帝都でも有名とは……さすがお姉さま。


「お祖母様、まずはということは他にも皇城でなにかあったのですか?」


 お兄様耳ざといな。殿下の話で持ち切りだと思ってましたよ。


「こっちはあなたたちに直接関係する話ね」

「謁見ですか?」

「そうよ。すでに何人かは謁見を済ましているの」


 たしか魔法学校関係での面通しで、私たち以外の同年代の方々も呼ばれているって叔母様が言ってたな。


「確かに私たちのような若輩者が謁見というのは珍しいとは思いますが、騒ぐほどのことですか?」


 お兄様の言う通り、珍しくはあってもおかしいこととは思えないけど?


「ハインリヒちゃんは、だれが呼ばれているか正確に把握してる?」

「いえ、成体から成人あたりの有力貴族とだけ聞いています」

「そうか。では全員書き出してやろう。この顔ぶれを見てどう思う?」


 私とお兄様は差し出された名簿を眺める。

 有名な人が多いかな?くらいしか私にはわからなかった。


「そうか!殿下は皇帝を本気で狙いに行くのか!」

「そういうことだ。このメンバーを選んだのは第一皇子だからな」


 ホント、蚊帳の外はやめていただきたい。


「お兄様、私にわかるようにお願いします……」

「すまない。このメンバーには、現在の選帝侯を親に持っている者、我が家のように選帝侯候補の家の次代の者、若くして頭角を現している優秀な者しかいない」

「次以降の選帝侯になる可能性が高い人を集めているということですか?」

「そうだ。同世代の侯爵家や伯爵家でも選帝侯と縁のなさそうな者が入っていない。逆に、将来元帥や宰相を狙える可能性のある優秀な子爵家の者が入っている」

「そういった人たちを魔法学校という名目で囲い込むつもりってことですか?」

「そうだ。十年後、二十年後を見据えた戦略だろう」


 皇子殿下恐い。これホントに史上初の男性皇帝爆誕の予感が……。


「確かに、これに気付いた人たちは騒ぎそうですね」

「そういうことよ。第一皇子殿下は凄い人ね」

「そんなことよりお前たち、しっかり食べんか!」


 お祖父さま……この量は食べきれません。

 こんな感じで帝都の一日目は過ぎていった。


――――――


 二日目の朝、大量の朝食から始まった。昼食を摂らないとはいえこれは常軌を逸している。

 厚意でやってくれているのはわかっているのだが、次回からは減らしてもらうようにお願いした。

 胃もたれポッコリお腹での謁見は勘弁願いたいからね……。

 今日は旅程の予備日。なので予定は入っていない。

 初帝都ということで帝都散策をすることにした。


 帝都は皇城を中心に放射状に広がるような造りになっている。

 私たちが滞在している貴族区は北東にある。

 なので今日は反時計回りに帝都を一周するつもりだ。


 まずは貴族区。読んで字のごとく貴族の屋敷が立ち並ぶエリアだ。

 現在は春の社交シーズン前なので、人の数は多くないようだった。


 帝都の北には職人区がある。

 武器防具の鍛冶、家具から日用品まで扱う木工や石工、建物を建てる大工などの職人の工房や直販店が軒を連ねていた。

 金属をたたくハンマーの音、弟子が失敗したのを叱る声、大きな物を落としたような衝撃音。

 見ても聞いても楽しめる場所だ。


 帝都の西には昨日通らなかった方の居住区。

 多くの住民は働いている時間なのだろう。大人の数より子供の数のほうが多かった。

 また、ここには大聖堂が建っているが、魔力測定の日まで楽しみにとっておくになった。


 昨日も多少通ったが、南側には商業区。

 リラスパッツに比べ、高級店が多いメインストリートだが、脇道に入ると庶民的な店も多くあった。

 時間があれば美味しい料理屋を探すのも面白そうだ。


 最後に南東の居住区。昨日通ったところだ。

 ここの目玉はやっぱり大図書館。学校に通うことになったら利用するかもしれない。

 平民は文字を読める人は多くないので、利用者は貴族が中心だろうか?


 一周してきただけだが、すでに日が暮れ始めていた。

 帝都の巨大さを思い知らされる一日だった。

 別邸に戻った私たちを待っていた夕食は常識的な量だった。胃もたれは回避できそうだ。

 ついに明日は謁見当日。

 アマラの淹れたハーブティーを飲み干し、ベッドにもぐりこんだ。

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