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第14話 FPSに挑戦してみた!

「まだだ。まだ焦るなよ……俺」


じわじわと陣地に攻め入ってくる敵の気配を感じ取り、俺は壁の裏に隠れながらアサルトライフルを構える。

味方はすでに全滅──先週の絵描き配信のときより神経を尖らせている今の俺に、コメントを読む余裕などない。

ただ、近づいてくる足音に耳を澄まして。


「──今じゃあああああ!」


ここぞというタイミングで、俺は勢いよく壁裏から飛び出し銃を連射した。

合計30発ものフルオート射撃。

至近距離で放たれた鋼の弾丸は、狙い違わず油断していた敵の頭に吸い込まれ……ない。


「なんっ──!?」


弾を撃つたびに照準が上に逸れて、理由もわからず貴重な弾薬を無駄打ちする結果に終わる。

攻撃が途切れて無防備になった俺はリロードの最中に距離を詰められ、そのまま敵に脳天を撃ち抜かれてしまった。

おかしいな……確かに頭を狙ったはずなんだが。


コメント欄


・惜しい〜


・近距離で戦いたいならアサルトよりショットガンのほうがオススメだぞ


・銃は連射すると反動で照準がブレるんよ


「なるほど、自分で制御しなきゃいけない感じか。そんでアサルトは中距離用……覚えるのに時間かかるぞ、コレ」


リスナーからの指摘を素直に受け止め、俺はテンポよく次のマッチングに移る。

Vtuberの配信でも特に人気なFPS系のゲーム──イラストに熱中していた俺は触れる機会がなかったが、なるほど確かに学ぶことが多くて面白い。

課金が強さに直結しないから、未経験者が手を出しやすいのも感心ポイントだ。

惜しむらくは、FPS嫌いの深雪とは一緒に遊べないことだが……。


「さて、お次はスナイパーライフルだ」


そう宣言して俺が選んだのは、黒く重厚でシンプルなスナイパーライフル。

配信を始めて2時間、すでに大半の武器を試してみたが、どれも俺の相棒には不合格だった。

そんな中で最後に残ったのがスナイパーライフルというわけだが──見るからに扱いが難しそうな武器だし、ぶっちゃけ期待はしていない。  


コメント欄


・スナイパーは連射とかないからリコイル気にしなくていいぞ!


・最初はとにかく慣れよ、慣れ


・何事にも真剣なお兄ちゃんに惚れました。結婚してクレメンス


「的確なアドバイス、誠に痛み入る。だが結婚はしません。妹も渡しません。べーだ」


試合前の待機時間に軽くコメントを拾って、俺は高台からスナイパーライフルを構える。

一点集中、完全な山勘ってやつだ。

敵が姿を現しそうな場所にアタリをつけて、高倍率のスコープを片目で覗く。

だが──、


「……来ないか」


視界に敵が映り込むことはなく、代わりに少し離れた所で銃声が鳴り響いた。

別の地点で待ち伏せていた味方が戦い始めたのだろう、すぐに俺は構えを解いて味方の支援に向かう。


だが、大して役には立てないはずだ。

スナイパーライフルは火力こそ高いが、その真価は試合の前半に敵の侵攻を食い止めるところにありそうだと俺は勝手に思っている。

つまり自陣に入ってこられては意味がないし、メリットである射程の長さも上手く活かせない。


正直かなり厳しいな。

時すでに遅くこちらは俺1人になっていて、敵は陣地に2人も残っている。 

とりあえず、バレないようにしゃがみ足で歩いて……。


「──っ、待ち伏せか!」


近くの茂みから銃口が顔を出していることに気づき、動揺した俺は闇雲にスナイパーライフルをぶっ放す。

ノースコープで撃ったそれは当然、相手とは見当違いのほうに飛んでいき……死角から俺を狙っていた、もう1人の敵の胴に命中した。


コメント欄


・ヘアッ!?


・はい切り抜き案件


・さすがにクリップ行きだろw  


コメント欄は急な盛り上がりを見せているが、俺のパニックは絶賛継続中だ。

まだ倒したのは1人、茂みの敵は木の葉をカモフラージュにして見えづらい位置から攻撃を仕掛けてくる。

……ええい、ままよ!

このまま負けるぐらいなら、当てずっぽうに賭けてやる──。


ドォン、と大きな銃声を1発。


コメント欄  


・すまん、何が起きた?


・ええ……。


・?????


気づけば茂みにいた敵の霊圧は消えていて、画面にWINの3文字がテカテカと浮かび上がっている。


勝った、のか?


信じられないという様子のリスナーたちだが、これには当事者の俺も口をパクパクさせることしかできない。

強いて、言えることがあるとすれば……。


「……す、スナイパーライフル先輩って凄え──!」


最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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