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第15話 ホラゲーはコラボと共に

コメント欄


・く、くる


・待ってました!


・さて、悲鳴を聞かせてもらおうか


ざわざわ、ざわざわと。

まだ配信は始まったばかりだというのに、リスナーたちは騒がしくて忙しないな。

……まあ、これに関しては致し方ないことだろう。

今回は俺と深雪による、初の正式なコラボ配信なのだから。


「さすがは俺の妹、といったところじゃないか? みんなのボルテージが桁違いだぞ」


「大げさだって。……さてさて、今日は告知した通りに! お兄ちゃんと一緒にホラーゲームをやっていくよ。ぱちぱちぱち〜!」


「ぱちぱちぱち〜」


PCのスピーカーから聞こえてくる深雪の拍手につられて、俺もノリノリで手を叩く。

コラボ配信といっても、俺の隣に深雪が座っているわけじゃない──『星音ソウヤ』と『星音キラル』は互いのチャンネルでそれぞれの視点をリスナーに向けて流し、声が被らないように通話アプリを介して会話している。


「お兄ちゃんはホラーゲームやるの初めてだっけ?」


「ホラーゲームというか、大体のゲームが初めてだよ。FPSだって、この前の配信で初めて触ったんだし」


「あれは本当に奇跡だった! でも……スナイパーライフル先輩と私、どっちが大事なの?」


「茶化すんじゃない、我が妹よ」


当たり前のように配信を覗いている妹に若干の気恥ずかしさを覚えつつ、ゲーム画面を開く。

今から俺たちが遊ぶのは、宿泊客が次々と失踪するという噂の旅館を舞台に、2人で協力して脱出を目指すというマルチプレイ型のホラーゲームだ。

深雪が何日もかけて探してきた作品らしいのだが……どんだけ俺とコラボしたかったんだ、この妹は。


「──中は思ったより綺麗だな」


「何だか寒いよ……」


ゲームが始まると、俺は操作感を確かめながら周囲を見回す。

旅館自体はかなり古びているものの、思ったより手入れが行き届いているようだ。

確かに薄気味悪い雰囲気はあるが、俺が妄想していた荒れ果てた廃墟というような感じはしない。


──なんだ。

大したことないじゃないか。


「よし、ここは俺が前に出よう」


俺は勇ましい声を出し、『星音キラル』のアバターを庇うように前へ出る。

結局のところ、どれだけ怖いと話題になろうがゲームはゲームだ。

現実に化け物が出てくるわけでもあるまいし。


コメント欄


・思ってたより怖いかも


・初挑戦にしてはハードル高くないか?


・お兄ちゃんのホラー耐性値はいかほどに


ふとコメント欄を見てみると、どうやらリスナーたちはそれなりに警戒している様子。

中には俺の悲鳴を期待している者もいるみたいだが、生憎その期待には応えられそうにないな。


「ちょっと待って、お兄ちゃん歩くの早すぎ!」


足を止めることなく探索を続けていると、不意に背後から可愛らしい苦情が飛んできた。

言われてみれば、いつの間にか深雪を置いて先へ進んでいたらしい。


「うん? ああ、悪い悪い。全く怖くないから、つい──」


俺は妹と歩幅を合わせようと足を止め、後ろを振り返って──。


1匹のネズミが目の前に落ちてくるさまを、見た。


「──ひんっ!?」


部屋の中に、何とも情けない悲鳴が響き渡る。


床へ落ちたネズミは見事にひっくり返り、しばらくもがいてから何事もなかったかのように襖の奥へ走り去っていった。


……はっはっは。

たかだかネズミが出てきただけでコレか。

我が妹は、俺の予想通り中々の怖がりさんなようだな。


「い、妹よ、安心しろ。そんなに驚く必要はない。ただのネズミだ」


「えっと……ふふっ、私は一言も叫んでないよ?」


俺は大パニックに陥っているであろう深雪を宥めてやろうとするが、返ってきたのは必死に笑いを堪えるような調子の言葉だけ。

……どういうことだ?

それじゃまるで、俺一人がネズミごときに無様な悲鳴を上げたみたいじゃないか。


「お兄ちゃん、さては怖いの苦手だね?」


「……いや、ビビってないが?」


「でも、叫んでたよ?」


「それはアレだ、反射だよ反射」


「ビビってる人がよく言うやつだ!」


「違うが?」


深雪はリスナーたちと共に大爆笑しているが、断じてそんな事実はない。

いや、本当に。

俺はこれっぽっちも、ビビってなんかないが?

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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