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第13話 お絵描き配信は全力で

予定していた14時きっかし、PCとペンタブレットを平らな机の上に固定して、今日も俺は配信を始めた。

「星音ソウヤ」としての初配信から1日が経った──正直まだ実感が湧いていないが、3万を超えるチャンネル登録者の期待に応えるためにも自覚を強めるしかない。


「あー、あー。みんな、聞こえてるか?」


コメント欄


・聞こえてるよ〜


・ちょっと音が大きいかも


・こんソウこんソウ!


慣れない2度目のマイクテストも無事に反応が返ってきて一安心。

SNSでトレンドになったからかリスナーの数が昨日の数倍に増えているが、不思議と緊張はしていなかった。


「今日の配信は俺の得意分野、イラスト制作を披露したいと思う……いや、得意分野っていってもプロと比べたらまだまだだからな?」


音量調節をしながら意気揚々と話そうとしたが、ハードルを高くしすぎると怖いし保険をかけておこう。

今から行うイラスト制作は俺にとって慣れたものだが、生配信で絵を描く様子を見せた経験はないのだから。


コメント欄


・お兄ちゃんの絵めちゃくちゃ動き感じられて好きなんだよなあ


・キラル様の絵とか描いてほしい!


・そういえば今日はキラル様って来るの?


すでに俺のイラストの特徴を並べているリスナーが散見されるが、恐らく彼らは元から俺のSNSをフォローしてくれていたのだろう。

他のリスナーもフォロワーたちのコメントに煽られ、勝手に期待を高めていく。

どうやら保険の意味はなかったようだ。


「みんなも想像してたかもしれないが、最初に描くのは俺の愛する妹──星音キラルだ。配信には出てこないから、今日はイラストだけで勘弁な」


みんなを喜ばせるつもりで言ったのだが、数秒後にはリスナーの4分1が配信から消えている。

いや、深雪LOVEの気持ちはわかるけど。

もう少しこう何というか、手心というか……。


◇◇◇


「あとはここにハイライトを入れて、と。完成だ!」


およそ7時間、片時も手から離さなかったペンを机に置き、俺は天井を見上げて一息つく。


リスナーのみんなや、恐らく──いや間違いなく配信を見ているであろう深雪に共有されるのは、流れ星を掴もうと空に向かって片腕を伸ばし跳ぶ「星音キラル」の後ろ姿。


コメント欄


・好みのイラストだったんで保存した。さらばだ……


・また新たな神絵師を発見してしまった


・長時間お疲れ様です!


俺個人としても良いイラストに仕上がったと思うし、最後まで見守り続けてくれたリスナーたちも気に入ってくれたようだ。

なにより「星音キラル」のイラストを褒められると、描いた俺だけじゃなく深雪も褒められているような気がして脳内のドーパミンが凄い。

まさに一石二鳥ってやつである。


「配信で描いたのは初めてだったけど、パフォーマンスが落ちなくて良かったな。いや、むしろ上がった? もしかして俺って天才なのかも……」


普通なら、衆目に晒される緊張感で手が震えるぐらいしそうなものだが、俺にはそれが一切なかった。

フッ……ついに俺にも、イラストレーターのいただきに近づいてきたというわけか。


「くっ……はははは──ッ!」


コメント欄


・そのモチベーション、尊敬するよ


・長時間配信でおかしくなってないかw


・うんうん、自信を持つことはいいことだよ〜


遠くの部屋から深雪の笑い声が聞こえたが、それも構わない。

リスナーたちよ、俺を讃えよ──って、ん?

少し呆れ気味の雰囲気のチャット欄に、ひときわ目につくコメントがある。

ユーザー名を読んでみると……「江波ナオ」。

すなわち、憧れの前での醜態。


「思い上がって、誠に申し訳ありませんでした」


俺は昔の深雪と同じように、思い切り地面に頭を擦り付けた。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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