第12話 揺れ動くVtuber界
「てなわけで、次の配信は明日の昼14時から! 今後は雑談配信やゲーム実況をメインに、絵を描いたりする配信とかもやってくからよろしく頼むな」
コメント
・おつかれ様〜
・お兄ちゃんのイラスト楽しみ
・キラル様は出なかったかぁ。次回に期待
・応援してるで!
1000人前後の視聴者から同時に送られるコメントをざっと見通しながら、俺は「またな〜」と軽い調子で配信終了ボタンをクリックする。
──なんとか、上手くいったみたいだな。
途中から視聴者数が倍ぐらいに増えてきたときは何事かと思ったが、焦らずに配信を続けることができた。
「切り忘れは……してないよな?」
いそいそとマウスを動かして、「星音ソウヤ」の配信がしっかり終わらせられているかどうかを確認。
切り忘れは配信者にとって死神も同然だ──身元がバレたら最後、Vtuberとしては愚か、リアルの生活にさえ支障をきたす可能性が高い。
「大丈夫そうだな」
さっきまでの配信はアーカイブとして俺のチャンネルに残っていた。
さて、お次はチャンネルの登録者数だが──。
「……は?」
アイコンの横に表示された数の桁数を見て、開かれた口から腑抜けた声が漏れでる。
いち、じゅう、ひゃく、せん……まん?
「さ、3万?」
冗談じゃない。
3万人って、配信中にいた視聴者の数より遥かに多いんだが。
ていうか、俺まだ初配信したばっかりなんですけど?
「どういうことだってばよ……」
「星音キラル」の宣伝があったとはいえ、俺が正式にチャンネルを作ったのは前日の夜だ。
そもそも、15万人の登録者のうち5分の1もが俺のことを認知してるとは考えにくいし──。
「お兄ちゃん、大変っ!!」
バンッ、と背中の扉が壊れるほどの勢いで開かれ、吹きつけた突風が俺の顔を強く撫でる。
乱入してきたのは息も絶え絶えの妹の深雪──その表情は、普段とは明らかに異なっていた。
「うおっ! み、深雪? どうしたんだ、そんな興奮した顔して……」
「いいから、これ見て!」
強引に胸元に押し付けられる深雪のスマホ。
その画面には普段から俺も使っているSNSのトレンド欄が映し出されている。
えーと、なになに……-
「エンターテイメントのトレンド1位、お兄ちゃん……」
しばらく眺めて、理解した。
15000件を超えるツイート数、さらにはトレンド1位に続く2位の「星音ソウヤ」の文字。
ツイート欄
・お兄ちゃんの配信めっちゃ面白かった!
・いま星音ソウヤっていう新人Vの配信見てきたんだけど、なんか名前に聞き覚えあるな〜って思ったら星音キラルの兄やった
・兄妹でVtuberとかてぇてぇすぎだろ!
うん、俺のことだ。
こんなにツイートされてるんだし、疑いようがないだろう。
どうやら、実の兄と妹がVtuberをやるというのは、この界隈にとって異例の試みのようだったようである。
そしてSNSには海外の人も多い……つまり、俺たちの名は世界規模で知れ渡ったということ。
「とりあえず、叫んでいいですか?」
「えへっ、近所迷惑からダメでーす」
「えへってなんだよ……」
苦笑いしている妹からNGをもらい、俺は机に無言で突っ伏す。
……どうやら俺はまだ、Vtuberというものを甘く見ていたようだった。
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