第11話 星音ソウヤの初配信
「はぁ──、ふぅ──」
椅子につき、新しく買った目の前のPCに向かって長い深呼吸をする。
今日はいよいよ初配信……Vtuberとしての俺の、始まりの時だ。
コメント欄
・待機
・くそほど楽しみなんだが?
・キラル様はでるのか。そこが重要だ
・お兄ちゃん結婚の話は……
まだ第1回目の配信にも関わらず視聴者数が4桁を突破しているのは、深雪が前々から配信で告知してくれていたからだろう。
コメント欄は尋常でないほどのスピードで流れており、全ての待機コメントを読み上げるだけでも小1時間はかかりそうだ。
「っくぁ──っ、緊張する!」
配信開始ボタンが表示されているモニターをチラチラと見ながら、俺は思っていることを正直に叫ぶ。
最初は誰でも緊張すると深雪は言っていたが、その深雪すらも今ここにはいない。
本人いわく、「初配信からコラボする個人勢Vtuberなんていない」らしいが……後ろからの手助けぐらいはしてくれてもいいんじゃないか?
「っと、そろそろだな」
恐らく自室でこの配信を見ているだろう妹の愚痴をダベりながらもモニターの時計を見ると、予定された時間まで残り1分を切っている。
覚悟はとうに決めた──あとは、ベストを尽くすだけ。
「……いくぜ」
自分自身にそう発破をかけて、俺は配信開始ボタンを押した。
◇◇◇
「あー、あー。マイクテスト、マイクテスト」
コメント欄
・きちゃ!
・来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
・やっぱイケボやんね、キレそう
・お兄ちゃん結婚してぇぇぇぇぇぇぇん!!
その一言で、ただでさえ速かったコメント欄がさらに加速する。
まだマイクテストだけしかやってないのに、なんなんだこの盛り上がりようは?
……まぁいい、気にしたら負けだろう。
「うん、この調子だと聞こえてるみたいだな。では改めまして……本日より活動を開始させていただく、星音キラルの実の兄、星音ソウヤです! よろしくお願いしまぁ──す!」
そう高らかに宣言すると、視聴者たちも俺のノリに応えるように相応のアガりっぷりを見せてくれる。
同タイミングで配信画面に表示されるのは、俺が時間をかけて制作した「星音ソウヤ」のきらびやかなロゴと、「ママ」が丹精を込めて作ってくれたアバターの姿だ。
群青のショートヘア、若干つりあがった黄金の瞳、そして頭上には輝く星の王冠──「星音キラル」との血縁関係を見事に暗示しながらも、要所要所でオリジナリティを出してくるナオさんの高い創造性が羨ましい。
コメント欄
・めっちゃイケメンで草w
・草に草を生やすなw
・やっぱりママはナオPか! 憧れの絵師って言ってたもんねー
・キラル様と似てるの尊い
・ツリ目たまんねえぞぉぉぉぉ!!
「そうだろーそうだろー? やっぱりナオさんの絵って凄いよな……俺自身、まだ描いてもらった実感が沸かないぐらいに興奮してる」
的確に拾うべきコメントを見定めながらも、俺は内心でガッツポーズを決めた。
──緊張していない。
配信前は小鹿のように震えていた手が、足が、今となっては落ち着きを取り戻している。
前に深雪が言っていたことは本当だったのかもしれないな……俺、Vtuberの素質があるのかも。
「よし、じゃあまずは自己紹介からやっていくぞ」
とは言っても、深雪の配信中にほとんど喋っちゃったからリピート再生みたいなもんだけどな。
開始から4分、配信はまだ長い。
落ち着いて、ゆっくりやっていこうじゃないか。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
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