1話 ifストーリー
肝心の六限目、配られた部活動紹介冊子をぺらぺらと何周もめくった俺は、思わずこんな呟きを漏らした。
「部活、なんだか碌なのがないなぁ……」
いや、碌な部活がないという訳では決してない。
ただ目ぼしいものが無かったというだけである。
特に語弊はあってほしくないし、いや、それも無いはずだ。
しかしこの呟きがサツキの耳に届いてしまったのは失態である。
サツキは俺の様子をちらりと見て、半分開いていた冊子をもう開くことは無いと言わんばかりに閉じ切った。
「弥生君、どれもピンとこなかったのですか?」
「まあな」
「なら私も、部活には入らないことにしますね」
そんな笑顔でこちらを見られても。
自分の道は自分で決めてもらってもよろしいのだが。
とは言え、美少女に見つめられるというのはいくらか気恥ずかしいものである。
やることもないので、時折前から送られてくるプリントを後ろに回す以外は、机に突っ伏して無為に残り時間を過ごした。
桜が満開に……なった時期はもうとっくに過ぎていて、半分以上が舞い散っているその帰り道。
サツキと共に帰路につくと、後から土佐と更科が追ってきた。
いくらどの部活を選んだか知りたいからといって、今日慌てて追いかけてきたとしても何も出てこない。
それを伝えてやろうと思ったのだが。
俺は軽いデジャヴに襲われるのと共に、とある試みをするという閃きを得た。
ピンとくるものが無ければ、そうすればよかったのだ。
用意された選択肢からチョイスするという趣旨に惑わされていたが、これは実に簡単な話だったのだ。
「お前らにも聞いて欲しい。 ――サツキも入ることになるであろう部活に関する、大事な話だ」
「「聞こう」」
土佐と更科は、待ってましたと言わんばかりに声を揃えて反応した。
どことなく気が合う二人なんだろうなと、心なしか羨ましく思った。
「俺は難しく考え過ぎていた。 でも、事態はそんなに難しくない。 ……作ればいいんだよ」
「作る……って?」
「何をだよ?」
「新しく、俺たちのための部活を、な」
ふむ、どうやら俺の襲われたデジャヴはここから先のようだ。
強烈な、とまでは言わないが、頭を円形の物体が掠めるような、そんな感触だった。
「名前はもう思いついた。SBS団だ」
「SBS? 何かの略ですか?」
「よく気がついたな、サツキ。 SBSとはな――」
S、世界を。
B、ブーイングで包み込む。
S、しかめっ面たちの。
――団。
「却下! なんだよそのふざけた名前はぁ!」
「更科、何でお前に却下されないといけないんだよ! せめて土佐だろうが!」
「いやなんでだよ!」
とまあ、残念ながら世界をブーイングで包み込むしかめっ面たちの団という案は取り下げられることとなった。
しかし、SBS団という略名だけは残すのを許してくれた。
この正式名称を考えてくるのが今晩の課題、という訳である。
ちなみに言っておくが、決して世界を大いに盛り上げようとしている訳ではないのは、注意して頂きたい。
いや、むしろその逆じゃないか、とさえ思うのだが……。
始まり方ハルヒっぽかったのでやりたくなっちゃいました。出来心なんです……。ifが早ぇぞという声はごもっとも。




