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こんな島もう嫌だ?


島へ来て100日が経った。

この島では日付と曜日の概念がなく、約束事は「また明日ね」で済む。

今日が何月何日なのか分からなくなってしまったが、毎日「ここへ来て2日目、3日目……」と数えてきて、100日が経った。


最初のうちは何もかもが目新しく、新天地に早く慣れようと必死だっため、流れるように日々が過ぎ去ったが、慣れると急に停滞した。

毎日毎日、同じ日課の繰り返しで嫌になる。

神殿仕えの侍女兼小間使いの私は、朝は早くから神殿の拭き掃除をし、朝食の配膳を手伝い、その後片付けが終わったら、シーツ干し。昼食の下ごしらえの手伝い、その後片付けが終わったら庭の掃き掃除と、働き詰めだ。

夕食の後片付けが終われば自由時間となるが、島の夜は早い。第一、自由に神殿から出られないのだ。


きらびやかな社交界が恋しい。またドレスが着たい。きらきらとしたホールで賛辞を浴びて、優雅にダンスを踊りたい。

ここには社交パーティーはない。オペラ劇場もないし、レストランもない。

仮にあったとしても、今の私は貴族令嬢ではなく侍女だから、指をくわえるのも我慢して見ているだけだろう。

なんってつまらない人生!


これが永遠に続くと思うとぞっとした。

働く中にも喜びや、変化や転機があれば刺激的だが、同じ面子で永遠に歳をとらず、永遠と同じ日々の繰り返しなのだ。


女だらけの園で和気あいするのも、どうも向いていないようだ。

王妃教育の賜物で、感情を表に出さないように努めたり、馴れ合いよりも腹の探り合いをしてしまう癖が身に染みてしまっている。

場の空気を読んで、「年少者の新人侍女ベティちゃん」を演じてはいるが、正直疲れる。


「ねえ、ベティって男がいる国から来たのよね?」

「男の兄弟はいる?」

「周りにうじゃうじゃ男がいるってどんな感じ?」

「デートってしたことある?」

「キスは!?」


生まれてこのかた男と話したことがないという侍女仲間も多く、男のいる国から来た私は、たちまち女子トークの餌食となった。

話に聞いていた「男嫌いの血統」のイメージとは違い、みな男や恋愛に興味津々だ。

身近に存在しない未知の生き物だからこそ気になるし、想像で盛り上がれるのだろう。


質問攻めにあうたび無難に答えて、自分のことは秘密にした。

個人的なことについては、まだ記憶が不明瞭だということにしている。


「あー、男と恋したいな」


一人の侍女が言い、周りの侍女も仕事の手を動かしながら、うんうんと頷いた。


「前回外から男が来たのっていつだっけ……あっ、3年前か」


3年前と聞いて、はっと思い当たった。


「それってもしかして、海にいる海賊船? 迷い込んで来たっていう」

「そうそう、あいつら」

「その海賊って、前は度々神殿を襲ってきたんでしょう?」

「そうよ。助けてあげたのに、恩を仇で返す奴らよ。海賊って本当に野蛮。男の風上にも置けないわ」

「助けてあげたって、どういうこと?」

「迷い込んできてすぐに上陸してきたの。助けを求めて。大巫女様は、今までの漂流者と同じように歓待なさったわ。食事をさせ、部屋を与え、気の向くまま神殿にいて良いと。十分にもてなしたのに、あいつら、1人を除いて強引に出て行ったの。船へ帰るって」


確かにこの神殿でお世話になれば衣食住に困りはしないが、馴染んだ場所へ帰りたい気持ちも、今の私には分かる。


「1人は残ったのね。全員で何人いたの?」

「4人よ。だから今は3人ね」

「残った1人は……」


どうなったのと聞きかけて、言葉を飲みこんだ。

今この神殿にいないということは……亡くなったに違いない。誰かの父親となって。そういえば神殿に唯一、小さな子どもがいる。カースティンの姉巫女の子どもだ。あの子か。


それなら、出て行った3人の海賊の決断は正しかったのではないか。

ここに長くいれば、いずれ呪いの餌食になるのだ。女たちの誘惑に勝てずに。


そう思うと、前回の人生でのニコラスはよく帰って来られたなと感心せざるを得ない。

ていうか、よくこの島から出られたね?

大巫女様の結界の外へ。どうやって?


あの船だ。きっとあの海賊船が鍵を握っている。


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