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連れ去り


何とかあの海賊船にこっそり接触できないかと考えた。まず神殿から勝手に出られないしなー。

海岸まで行けたとしても、海賊船は沖に浮かんでいる。泳いで行く?

泳ぎには自信がない。そういや嵐の日に腰に着けていた浮き玉、どこへ行ったんだろう。外れちゃったのかな。


海賊ってやっぱり野蛮で怖いのかな。

しかしあれだけ大きい船に、3人しか乗っていないとは意外だ。船体は壊れていないようだが、この島に来る際に嵐に見舞われたりしたんだろうか。


まあ人手が少なくても、魔動石があれば船は動く。しかし3年も同じ位置に浮かんでいるということは、魔動石に充填している魔力は尽きているのかもしれない。

大巫女様なら、一発で満タンに出来そうだ。

海賊たちに出て行ってほしいなら、そうすればいいのに。どうして結界に閉じ込めたまま、追い出さないのだろう?


もしかして、じわじわと追い詰めて海賊たちが白旗を上げるのを待っているとか。

降参して助けを求めて来れば、また神殿に招き入れて囲うのだろうか。

もしそうなら、いったん生けに入れた魚は食べるまで絶対に逃がさない、という執念を感じる。


どこぞの王族ならともかく、海賊相手にそこまで執着する必要あるのかしら。

私の想像を絶する、いい男揃いとか?


「ロアンナは見たことあるの? 3人の海賊。彼らが神殿にいた時期もあったのよね?」


晴天の下、木々の間にピンと張り巡らせたロープにシーツを干しながら、侍女仲間のロアンナに尋ねた。


「神殿にいた頃は遠目にしか見たことなかったんだけど、出て行って神殿を襲いに来たときに、たまたま間近でリーダー格の海賊を見たのよ。赤髪、赤目の」


ロアンナの瞳に興奮が宿った。


「えー、すごい。どんな人だった?」


ロアンナは顔を近付けて、声をひそめた。


「ここだけの話、すごくかっこよかった。みんな海賊を嫌ってるから、こんなこと言えないけど、男っぽくて、目が合ってドキッとしちゃった。そんなに悪い人に見えなかったし。って、ほんとみんなには内緒よ」


ふむふむ、赤髪赤目のリーダーは男らしくてかっこいいタイプと。ぱっと見、好印象か。


「他の2人は?」

「もう1人は熊っぽくて、もう1人は鳥よ」

「鳥?」


熊っぽい男性というのはイメージできるけど、鳥って何。


「鳥っぽい髪型とか?」

「ううん、鳥なの。鳥人間っていうのかしら。人間と同じくらいの背丈で、顔が鳥で、人間みたいな胴体があって腕があるけど、大きな翼が生えてるの。二足歩行するし空も飛ぶ……鳥人間、ベティは見たことない?」

「ないわ。神話に出てくる半人半鳥の魔物、ハーピーなら知ってるけど。女の顔に鳥の身体の」

「逆ね。顔は鳥で、体は人間っぽいの」


想像すると気持ち悪いな。

バサバサっという音が頭上でして、上を見上げた。


「あっ、これこれ! これが鳥人間よ」


ロアンナが指さした。

あっと驚いたときには、滑空してきたソレにタックルを受けて、次の瞬間には空へ飛び立っていた。えっ、えええっ!


「ベティィィィ!!」


ロアンナの悲鳴が遠ざかっていく。

神殿からわらわらと女たちが出てきて、こちらを見上げている顔が小さく見える。


私はいま空を飛んでいる。お姫さま抱っこでだ。命綱はない。暴れて落とされた日には確実に死ぬので、大人しく連れ去られている。


向かっている方角からして、アジトの海賊船へ連れて行かれるのだろう。

海賊船に興味があったので、この展開は渡りに船と言えるが、誘拐されるという発想はなかった。

何で私?

新人侍女のベティちゃんを拐ったところで何になるのだろう?

私は漂流者で島の女でない。一目見てそうと分かる風貌だ。


はっとした。

島の女に手を出して、妊娠させてしまうと死あるのみ。だから私を拐って慰み者に?



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