もしかしての予感
海上を飛び、あっという間に海賊船へ着いた。
鳥は私をお姫さま抱っこしたまま、帆やロープを上手にかわして、甲板へ下り立った。
「おー、お帰りぃ」
「お疲れ」
待ち受けていたのは、赤髪赤目の男と熊のような男だ。
「いやぁ、重かったわ。この距離はキツイな。最近筋トレしてなかったから、鈍ってるわ」
鳥が喋った!と驚くことなかれ。
この島では動物とも会話できるのだ。
てか聞き捨てなりませんけど、「重かった」って私、平均体重より軽いはず。
「あなたたち、私をどうするつもり?」
3人をきっと睨み付けた。毅然と言うつもりが、少し声が震えたことに動揺した。
こんな奴ら相手に弱味を見せては恥だ。
「俺たちは怪しい者だが、危害は加えない。ちょっと話をするだけだ。だから騒ぐなよ」
落ち着け、という手のジェスチャーをして赤髪のリーダーが言った。どうやら文化圏は同じようだ。
隣では熊みたいな男が、丸太のような腕を組み、うんうんと頷いている。
「……話って?」
「まあ立ち話も何だ、付いてこい」
くるりと背を向けた赤髪リーダーは隙だらけだが、熊と鳥がじっとこちらを見ている。
その視線に促され、赤髪の後ろに付いて、階段を下りた。
コの字型に座席のある船室で、赤髪の向かいに座った。
後ろから来た鳥は入り口付近に立ち、熊は付いて来ていない。外を見張っているのだろう。
神殿から助けは来るのだろうか?
連れ去りは多くの者が目撃していたし、上空を見上げる顔の中には、カースティンと姉巫女もいた。巫女は侍女とは違う赤い服を着ているため目立つ。
「神殿の女たちから聞いているかも知れんが、簡単に自己紹介をする。俺の名はヒューゴー。ドージャ王国の由緒正しい盗賊だ。盗みの腕を見込まれて、王命を受けて宝探しの任についている」
赤髪の自己紹介に面食らった。
ドージャ王国ってどこじゃ。由緒正しい盗賊って何。盗賊に宝探しを頼む王様っているのか……など色々と疑問が渦巻いたが、まず自己紹介をしてくれるとは紳士的!
ロアンナの言った通り、ぱっと見の印象も悪くない。
ざんばらの長髪だが、片サイドを細かく編み込んで後ろへ流したスタイルが洒落ていて、耳や指に着けた装飾品のバランスもいい。
洒落ているが上品さはなく、かといって下品でもない。「品のいい不良」だ。
顔立ち自体はさっぱりとしていて、特徴が薄いため、珍しい色の瞳がより鮮烈な印象となっている。
「で、そこにいる鳥人間が、セバス。そういう種族だ。国王に仕えていて、同じく王命を受けて俺とチームを組んでる。でさっきのでかいのが、モーガン。モーガンは俺がスカウトした、フリーの冒険者だ」
顔を向けると、セバスが挨拶する感じに片手を上げた。翼ではなく、腕の方だ。
改めて見てもやっぱりすごい。
鳥の種類でいうと、鷹だろう。きりっとしたつぶらな黒目に鋭く小さめのクチバシ。濃い茶色をベースに黒や白の羽毛で覆われている。が、胴体は人間だ。筋肉質で腹筋がしっかり割れている。下は、だぼっとしていて裾が絞られたズボンを履いている。つま先は鳥だ。カギヅメの裸足。
セバスも腕輪をしていたり、肩に紋様を入れていたりとなかなかお洒落だ。
「さて、本題に入ろう。俺たちは3か月ほど前に、この海で仮死状態の男を拾った。おおかた船が難破でもして、嵐に飲み込まれたんだろう。漂流者だ。この海には漂流者しか入って来れないからな」
ヒューゴーの言葉に、脳天から雷が走り抜けたような衝撃を受けた。
3ヶ月前、船が嵐で難破してやって来た漂流者。仮死状態の。どの言葉にも思い当たる節がある。引っかかりまくりだ。
それって……もしかして、もしかしなくても……
「金髪で青い目の男だ。もしかして、あんたの仲間じゃないかと思ってな。早く会わせてやりたかったが、3日前に意識が戻ったところなんだ。植物人間状態が長かったせいか、記憶を失くしてる。記憶喪失ってやつだ」
やっぱりニコラス!
で、ニコラスが記憶喪失!?




