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夢の島


目覚めた翌日に屋敷内を案内してもらい、その翌日は外に出て、村を案内してもらった。

大巫女様のお屋敷(神殿と呼ばれている)を中心に集落があり、そこが「村」と呼ばれているのだ。


「何人くらい村人がいるの?」


案内役のカースティンに尋ねると、約千人よと教えてくれた。村人も全員女だそうだ。

その千人の女たちが地引き網漁をしたり、養殖をしたり、農作物を育てたり、綿から糸を紡いで布を織ったり、山を伐採して木工をしたりするそうだ。すごい生活力。


「そして大巫女様へ献上するの。大巫女様は島民を守って下さっているから」


なるほどなるほど、そういうシステムね。

やはり大巫女様はこの島の絶対君主的存在という認識で合っているようだ。

大巫女様が女王様で、巫女たちは王女様だ。


ちなみにカースティンは第5王女で、4人の「お姉さま方」と一緒に、巫女職に就いている。

5人は大巫女様の娘だというが、大巫女様は二十歳くらいだし、カースティンとお姉さま方も年齢差がない。

実の娘ではなく、「娘的な存在」ということだろう。5人とも黒目黒髪で、大巫女様に面影がある。


村人たちはそうではない。黒髪に混じって茶髪の女性も多く、瞳の色素が薄い。

漂流者が父親ということは、その父親の人種によって違うのだろう。

この島で生まれた女性は、漂流者としか出会いがないし……って、すごい競争率高め!


その割りに、現在千人の村人(全員女)がいるってすごくない??

滅多に出会いがない上に、第一子を授かると相手の男性は死ぬ……同じ相手と第二子、第三子は望めないってことだ。単純に考えて、千人の子どもを作ろうと思ったら、千人の漂流者が必要だ。


漂流者ってそんなにコンスタントに来るもの?

カースティンに聞いたところ、この島には来ようと思って来られるものではなく、来島者や観光客は全くいないそうだ。

島を出て行く島民もいないとのこと。


「ねえ、カースティン。村人って若い女性ばかりなのね」


行く先々で挨拶をしてくれる女性たちは皆、二十歳前後だ。年配者を一人も見ない。

この女性たちの母親世代やお祖母ちゃん世代はどこにいるのだろう?


「この島では大人になると歳を取らないのよ」

「え?」

「うーん、ちょっと違うわね。歳月と共に歳は取るけど、老けないの。老化しないのよ」

「嘘。嘘でしょう。そんなことあるわけ」


いつまでも若く美しく、は女の永遠の課題だ。

加齢に抗って世の女性がどれだけ悪戦苦闘していることか。新作の美顔マッサージだの美肌化粧品だのに、毎度上手に騙されていた母や伯母たちを思い出す。


「信じられないのも無理はないわ。でもベティもここへ長く住めば住むほど分かることよ。ここを出て行きたい女なんて一人もいないわ」


ふふっと笑うカースティンの横顔をついまじまじと見てしまった。

もしかして、カースティンも見た目年齢よりかなり上だったり……?


「あ、私は18よ。この島では二十歳で成人なの。ベティはいくつだっけ?」

「14よ」

「じゃあ後6年は成長するわね。それ以降は老けない。本当よ」


本当なら、ここは夢の島だ。永遠に若くいられるなんて。


「それって不老不死ってこと? 死ぬのは死ぬ?」

「病気や怪我をすることはあるけど、大巫女様が治癒してくださるから、死ぬことも滅多にないわ。治癒が追いつかなければ死ぬこともあるけれど。老衰で死ぬことはないわ」


それはもうほぼ不老不死といって良さそうだ。大巫女様の従順な民である限り、安泰ということか。


「私はこれからもずっと神殿に置いていただけるの?」

「そうね。村で暮らす家もないし、食べて行ける職もないし、神殿で家事や小間使いをしてもらう予定よ。神殿仕えの侍女。どうかしら?」


それはありがたいと正直思ったが、公爵令嬢であり、次代の王妃となるべくして生きてきたこれまでの自分が、むくりとプライドをもたげた。この私が侍女?

夫の愛人だった女の下で?


しかしこの厚意を蹴れば、宿無し一文無しで路頭に迷うのは明白だ。


「よろしくお願いいたします。これからはカースティン様とお呼びすれば?」

「畏まらないで、今までどおりカースティンでいいわ。ベティとは、なんだか初めて会った気がしないの。遠い異国の子なのに不思議。妹みたいに思えるの」


カースティンは照れたように笑った。


「私は末っ子だから、ずっと妹がほしかったの。ベティさえ良かったら、姉のように思ってほしいわ」


じくりと胸がうずいた。胸の奥深くに抱えている罪の意識を、ぐりぐりとナイフでえぐってくる。カースティンの屈託ない微笑みに、薄く笑い返した。


「はい。嬉しいです、お姉さま」



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