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女の園



カースティンに拾われて、三日が経った。

この三日間で分かったことを自分なりにまとめて、頭を整理する必要がある。


まず分かっていることは、この屋敷はとても広くて、80人ほどの女ばかりが暮らしている。その頂点に立つのが、大巫女様だ。


大巫女様に一度謁見したが、想像していた老女とは違い、二十歳くらいの女性だった。

カースティンと同じ黒目黒髪、浅黒い肌をしているが、痩せ体型のカースティンとは違ってとても豊満な女性だ。

豊かな肉を何層にも重ねて着た衣装に包み、艶々の豊かな黒髪を頭の上に盛り上げている。その髪に、かんざしと呼ばれる装飾品を何本も指していて、赤珊瑚や真珠が揺れている。見るからに、この島の権力者と分かる出で立ちだ。


この島は大巫女様に支配されている。

いわば国の女王様だ。

国王はいない。


屋敷内は女性ばかりで男性を一人も見ないため、男子禁制なのかとカースティンに尋ねたところ、想定外の答えが返ってきた。


「この島では、女しか生まれないのよ。だから島に男の人はいないの」


言っている意味が分からない。

子作りに男女が必要なことくらい、うぶな私でも知っている。


「子どもの父親は?」

「みんなもれなく死んでしまうの。子どもが産まれる前に」


ぎょっとした。そんなホラーな。


「それはどうして?」

「みんな突然死よ。原因は分からないけれど……多分、呪いじゃないかしら」

「誰の呪い?」

「私たちのご先祖様である、女性の。男嫌いで、男なんてみんな死ねばいいと呪ったという……おとぎ話のようなもので、実話かどうか真偽不明だけれど。あまり良い話じゃないから、聞かせられないわ」


カースティンはキッパリとした口調で、それ以上踏み込んでくるなと牽制した。かと思うとにっこりと笑ってみせた。


「だから私も父親は顔も知らないけれど、大巫女様やお姉さま達がいらっしゃるから寂しくないの。男なんていなくたって、私たちは十分幸せに暮らしていけるの。ベティもここで暮らす内に分かるはずよ。男なんて必要ないって。男などという生き物は野蛮で、むさ苦しくて、傲慢で偉ぶっているくせに、いざとなったら女よりも度胸がなくて不甲斐ないと、常々大巫女様も仰ってるし」


「そ……そうね、その通りよ」


あんぐりと口が開きそうだったが、慌てて同意を述べた。

あの、ニコラスにひたすらベッタリだったカースティンは、元々はこうだったの!?

男嫌いの呪われた血統で、女の園で純粋培養された、生粋の男嫌い。

それが、ニコラスとの「運命の出会い」で、ころっと落ちたの? ちょっとチョロすぎやしません?


ニコラスのどこがそんなにーー……まあ、金髪蒼眼はこの島では物珍しいし、顔立ちも整っているし、背も高くて筋肉質だし。人当たりも悪くないし、運動もできる方だし。元々女にモテるタイプだしな。好きになるのは仕方ないか。

一国の王子というのも、魅力的だし。


「あの、でもその……早死にした、島の女性たちの父親って……この島の出身ではないってことよね? この島で男は生まれないのだから。その男の人たちって、いったいどこから来たの?」


「ああ、それね。彼らはみんな島の外から来た、というより迷い込んできた、漂着者たちよ。多くは漁師だから、男ばかり。ベティみたいな女の子が来るなんて珍しいわ。初めてよ」


「そうなの?」


本当は私じゃなくて、ニコラスが来るはずだった。

ニコラスと運命の出会いを果たし、真実の愛に目覚めるはずだったカースティンは、そうとも知らずにニコニコ笑っている。

気味がいい。私もほくそ笑んだ。

ニコラスざまあ見ろ、阻止してやった。


前回の人生では、私を罠に嵌めて処刑し、その後は最愛のカースティンと再婚できたんだろうか。

ん、でも待てよ。今聞いた話が本当なら、カースティンには呪いがかかっている。女児しか産めず、しかも妊娠中に必ず子どもの父親が死んでしまうという、恐るべき呪いが。

それってどうなるの!?


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