表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

帰還





「……バイバイ、ニコラス」


私の小さな呟きは、潮風に乗ってかき消えた。


「あれで良かったのかねぇ」


隣に立つヒューゴーが、遠ざかるソラシアン王国の港を眺めながら、後悔するように言った。

国へ戻ったニコラスの今後を心配しているのだ。相変わらず人のいい盗賊だ。


「良かったんでしょう。本人たちは幸せそうだし。どうぞお幸せにって感じ。ヒューゴーさんが責任を感じることはないわ。王子に巫女を籠絡させて、島から脱出しましょうと提案したのは私だし、王子が巫女に本気で惚れてしまったのは仕方ないわ。ヒューゴーさんがいくら説得しても無駄、ニコラス王子はカースティン様に首ったけ。でも本人たちが幸せなら良いんじゃない?」


あの不思議な島を出て、大巫女様の結界の力が及ばない現在、私たちは動物と話せないし、悪天候にも見舞われる。


島の巫女たちが、取り立てて美女という訳でもないのに漂流者の男たちを短期間で骨抜きにしてしまうのも、大巫女様の結界内だからではないかとヒューゴーは考えていたようだ。結界領域を出れば、熱に浮かされたようなニコラスも正気に戻るのではないかと。


しかし結界領域を出ても、ニコラスはますます熱を上げた。

ああカースティン、カースティン、国へ戻ったらすぐに結婚しよう。海賊たちの目もはばからずイチャイチャ、イチャイチャと。


ヒューゴーはニコラスを呼んで説得した。

脱出のために、巫女へ色仕掛けをさせたことは悪かった。でももういいんだぞと。

巫女は島へ追い返そう。結界領域のすぐ近くなら、泳いででも結界に戻れるから心配いらない。

国では婚約者が待っているんじゃないのか。

お前は王子なんだから、異国の変な娘を連れ帰っても結婚できないだろ。等々、もっともなことを言ったが、ニコラスは聞く耳を持たなかった。


ヒューゴーは最後のカードを切った。


「第一お前、巫女と子を作ると死んでしまうんだぞ!? そして生まれてくる子供は、絶対に女だ。跡継ぎは望めない」


それは私の復讐の切り札でもあった。

そう、ニコラスがカースティンと愛し合うことは死のリスクを伴う。

子供を望めない。もし授かっても、生まれてくる我が子の顔を見ることもなく、死んでしまうのだ。

なんとむごく、可哀想なんでしょう。


死にたくなければ、子供は絶対に作らないと決めて、それを遵守していくしかないが、カースティンにメロメロのニコラスには苦行となるだろう。


愛人は愛人と割りきって、本妻を大事にすれば良かったのにね?

まあせいぜい、死なないように頑張って。


私は私で紆余曲折あったけれど、新しい人生を歩むから。



ソラシアン王国の港でニコラスとカースティンを下ろす際、港の巡視船に取り囲まれて、尋問を受けた私たちだったが、ニコラスを助けて連れ帰って来た船だと分かると、手のひら返しの厚待遇だった。

是非しばらく停泊して、王族のもてなしを受けてほしいと言われたが、ヒューゴーは自国の任に着いてる途中のため、一刻も早く国へ戻りたいとそれを辞退した。

ニコラスの家族に会ってしまうと、私の正体がバレてしまうので、断ってくれたのは良かった。

しかし、流石にちゃっかりしたもので、御礼は後日改めてしてくれればいいと、ヒューゴーは丁寧に名乗りをして、連絡先を書いて渡していた。後日それなりの褒美が届くはずだ。

それもちゃんと分け前として4等分してくれると言ったので、これからの生活資金に充てようと思う。


それから数ヶ月の航海を続け、ドージャ王国へと辿り着いた。

ヒューゴーたちにすれば、数年ぶりに踏む故郷の土地だ。感激で目が潤んでいる3人を見て、私も胸が熱くなった。

王城へ向かう3人に私も同行し、ドージャ王国の王様と謁見した。

宝を無事に持ち帰ることができたのは、私のお陰だとヒューゴーが説明してくれ、大いに感謝された。


そして遂に大金を手に入れた。

王様がくれた報奨金をヒューゴーはちゃんと4等分してくれたのだ。

宝探しのチームは解散。セバスとモーガンに別れを告げ、ヒューゴーと顔を見合わせた。

これからどうするのかと訊かれた。


「うーん、とりあえずどこか宿屋を見つけて、住むところ探しかしら。お洋服も買いたいし、買いたい物もいっぱいあるわ」


「ガキが一人で、大金持ったままウロウロしてちゃ危ねーだろ。治安あんま良くないしな。とりあえず俺んとこ来い」


「えっ」


思わずまじまじとヒューゴーを見てしまった。いきなり同棲生活!?


「変に警戒すんな。今まで一緒に旅してきて、俺がガキに興味ないの知ってるだろ」

「ガキ、ガキ言わないでください。もう15ですから。ヒューゴーさんはガキが無理なんじゃなくて、女に食傷気味なんでしょ。あの島の女たちに迫られすぎて」

「ああ……あれはえげつなかったな。流されてやっちまうと死ぬしな。萎える。お陰で自制心が鍛えられたわ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ