秘密裏のタッグ
ここはもう一押し。
「私も王子様と一緒に神殿へ戻って、全面協力いたします。責任を持って王子様をお助けしますので」
「お前の目的は?」
「私もこの島から出たいのです。そして、そうですね……この脱出計画が上手くいったら私にも分け前をください」
「分け前だと?」
「はい。亡くなったお一人の代わりに、私がチームに加わったと思ってくだされば。脱出には私の力が必要となります」
この島は永遠の楽園だが、永遠に下っ端で楽しみのない人生なんてまっぴらだ。
しかし国へ帰っても、ニコラスとカースティンと一緒では、結局前回の人生と同じ道を辿る。
むしろ処刑される時期は前回より早まるかもしれない。ニコラスが記憶を取り戻せば、私は殺人未遂犯。今度は冤罪ではない。
「分け前か。我が王へご所望の宝を納めた後になるが、それでも良いなら」
ヒューゴーが言った。
「宝物がすぐに手に入るとは限りませんよね。そんな、いつになるか分からない約束では……」
踏み倒されてしまうじゃないか。
島へ出てすぐに資金が必要なのだ。新たな場所で新たな人生を歩むための。ニコラスを刺した以上、ソラシアン王国へはもう帰れない。
「安心しろ。宝はもう手元にある。後は国へ戻るだけという時に、嵐に巻き込まれてこの島へ迷い込んだ。ここから脱出さえできれば、約束はすぐに果たせる。王子と巫女をソラシアンへ送った後、お前を連れて我が国へ戻り、王から受け取った報酬金から4等分の分け前を払う。それで良いか?」
「その4等分の分け前があれば、一生暮らせますか?」
「一生遊んで暮らせる。そうでなきゃ、こんな大変な依頼は受けねえよ」
ですよね!
一国の王様の直々の頼みなのだ、報酬がショボいわけがない。
「ああ、念のために言っておくが、宝単品では無価値だぞ。素材の一つに過ぎん。我が国にある他の素材と合わさって初めて価値が出る物だ。妙なことは考えるなよ」
「勿論です。そのお宝には全く興味ありません。ここから出られて、分け前が頂ければ、それで十分です」
「王子は?」とヒューゴーがニコラスを見た。
「王子はどう思う? 今の話を聞いて。俺としては、王子を自国へ帰してやりたいから良い案だと思うが。家族も自国の民も、王子の帰りを待ちわびているだろう」
「僕は……」とニコラスが初めて口を開いた。
「帰らなくてはいけない、と僕も思います。大切な人が僕のことを待っている。彼女にどうしてももう一度会わなくては、と思うから」
「おっ、思い出したのか? 大切な彼女ってのは婚約者か?」
「いえ、思い出せていません。ただ、そう思うだけです。彼女に会わなくてはと。それが誰のことなのかは分からないけど……」
ドキッとして損した。
ニコラスの言う「彼女」は、きっとカースティンのことだ。
心配しなくても、今から会わせてあげるわ。
運命のお相手に。
「では話もまとまったことですし、なるべく人目につかない場所で私と王子様を解放してくださいますか。海賊に拐われ、乱暴されそうになった私を、漂流者の王子が助けて、一緒に逃げてきた、という筋書きで如何でしょうか」
「最悪だな。まあそれでいい」
「ヒューゴーは神殿にいた頃に狂気的に女に迫られすぎたせいで、すっかり女嫌いなんだ」と鳥が同情的に言った。
それはなんというか、御愁傷様です。
ハーレムで良いじゃないの、なんて感想は、例の話を聞いているため湧いてこない。
子種だけ求められて、お役目果たすと死が確定しちゃうんだもんな。それは嫌だわ。




