エピローグ
「こうして、この世界に平和が訪れましたとさ。めでたしめでたし」
ベットの上で幼い我が子に読み聞かせていた父親が、パタンと絵本を閉じた。勇者達が侵略者から神々を救い、世界を守るという、幼い子供の読み聞かせとして定番の伝説に、息子は目を輝かせた。
寝物語として定着している伝説だが、これが過去実際に起こったことであるというのは、全世界が認めることである。
どうやら、すっかり勇者に夢中で眠気など何処かに行ってしまったらしい。
「ねえ、パパ。勇者たちはどうなったの」
「彼らの半数は記憶を失うことを条件に元の世界に戻り、あとの半数はこの世界に残ったらしいよ」
「なんで記憶無くなっちゃうの」
それは、過去の人々が未来を変えないようにという、神々の想いがあったからだ。1度起こったことを取消させないように。そして、此度の件を自分たちの戒めとして残しておくために。
そのことを息子に告げると彼にとっては面白い返答ではなかったらしく、気の抜けた返事をした。
「ほら、もう寝ないと。明日は風の術を練習するんだろ」
「そうだった!」
勢いよく目を閉じた息子にクスリと笑いをこぼして、指で印を組み電気を消す。部屋が真っ暗になり睡魔も戻ってきたのか、息子は数分後には穏やかな寝息を立てていた。
息子を起こさないように絵本をサイドチェストに置こうとしてふと、その表紙をみた。
出会ったことは無いが、眠たげな目をした美人な学園長の姿が過ぎる。この御伽噺とも取れる歴史を、正しく後世に伝えるべく筆を取った彼は、皆と同じように寿命でこの世を去った。しかし、神の力を持つ彼は、肉体を手放して正式に神の一員として認められ、この世界を今でも見守っている事であろう。
騒がしいお供を6人つけて。
その姿を想像して笑みをさらに深めた。
彼は女神が去ったことによる影響をいち早く把握すると、自ら先陣をきり復興に務めた。そして、学園が新たな姿でスタートを切ると、学園長という立場の中、神々の証言の裏を取るかのように、研究に精力を尽くした。
もしかしたら、彼が積極的に復興に務めたのも、はやく研究がしたかったからではないかと囁かれるほどだ。
しかし、お陰で歴史は歪むことなく今日まで伝えられているし、6代かかってやっと魔法という存在は忘れられ、術が浸透しきった。
もちろん、全く安全な世界では無い。
病気だってかかるし、人同士での争いも耐えない。
しかし、それでもこの星は正しく歯車が回っている。
それだけでもかけがえのないことなのだ。
湿っぽくなりそうな思考を振り払い、息子の隣に体を横たえる。
そして明日も息子の練習に付き合わされることになるだろうと、何より自分がその予定を楽しみにしながら目を閉じた。
青く輝く右目を隠すように。
ー終ー
ここまで拙い物語を読んでくださり、ありがとうございました。
誤字脱字等、ストーリーの矛盾を修正するため、今後も大工事はしますが、物語としては、ここまでとなります。
ここまで読んでくださった皆様に感謝を。




