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先生は勇者と共に…  作者: 朱音
第3章
47/65

 

 まるで鏡を見ているようだ。


 シキは、剣を合わせる相手の顔を見ながら、そう思った。

 その顔は、シキそのもの、瓜二つであった。

 顔だけではない。背格好や表情、更に技までもが全く同じなのだ。


 チラリとシキが横を見ると、途中で合流した、オウキとリュウジも同じ状況の様だ。

 シキから見たら、もはやどちらが本物なのか分からない。


「どうなってやがる」

「分からない」


 なんせ、3人が合流したと同時に現れ、有無を言わさず攻撃していたのだ。

 分かれという方が無茶である。

 ひとまず偽物から距離を取った3人は、追撃をしない偽物と睨み合う形になった。


「とりあえず、相手を倒さないとどうにもなんねぇだろ」


 パンと、オウキが柏手を打つ。

 そして、その体から、ジワリと霊力が滲み出たかと思うと、ダムが決壊したかのように、溢れ出した。


 それを見たリュウジは、懐から十字架を取り出した。


「主よ」


 リュウジの言葉に反応して、十字架が姿を変える。

 それは薙刀に近い様相をしていた。

 柄の部分や刃に、アルファベットが刻まれているのがわかり、それ自体からも霊力が感じ取れる。


「…本当に、陰陽師と退魔師だったんだね」


 それを目の当たりにしたシキが感慨深そうに呟いた。

 それが聞こえたオウキが、キッとシキを睨んだ。


「俺らが嘘ついてるとでも思ってたのか?」

「どちらかと言うと、半信半疑だった。だって、それらしい素振りを今まで見たことなかったから」


 むしろ、誰かに何かを吹き込まれていた可能性も考えていたと、素直に白状したシキに、オウキは舌打ちをプレゼントした。


「言いたいことは山ほどあるだろうが、今は目の前の敵に集中しろ」


 リュウジに窘められ、2人は改めて、敵を見た。

 一卵性の双子のように、瓜二つの敵だが、本物と決定的に異なる点があった。

 それは、薄らと額に浮かぶ黒い五芒星だった。


「構造的には、誰かが作った形代みたいだな」


 何が目的で、瓜二つの姿で襲ってきたのか分からないが、倒すことを優先するべきだろう。

 これに異論を唱えるのは、この場にいない。


 開始の合図こそ無かったものの、3人とも一斉に、自らの偽物に刃を振りかざした。



 ◇◆◇◆



 さて、ところ変わってコウメも、戦闘の最中であった。


「であっ!!」


 ガキィンと鈍い金属音が、相手にダメージが入っていないことを知らせた。


「強いねぇ、あんた」

「いやーそれほどでもないわよぉ」


 語尾にハートマークが付きそうな喋り口調に、見た目は美女だが喉仏にガッシリとした体格。

 いわゆるオネェか。


 しかし繰り出す技は見た目の意外性に対して、武芸に忠実な綺麗な戦い方だ。系統としては、シシツキの極められた技と同じだろう。


「ほらほら、大振りになりすぎて脇が空いてるわよん!」

「……」


 そして何故か修行みたいになっている。


 彼女…ではなく彼の言うことは、確かにコウメが気がついていなかった弱いところだはあるものの、敵に指摘されるという自体に釈然としないものを感じている。


「あんた、何で…」

「あら、あんたなんてよそよそしい!志翠(しすい)って呼んでちょうだい」

「シスイは何で、あたしと戦うんだい?」


 空を斬るような横薙ぎを軽々と躱して、志翠はコウメから、少し距離を取った。


「あらやだ。私話してなかったかしら?」

「あぁ、聞いてない」

「やだ、もぉー。ごめんなさいねぇ」


 初めに説明するつもりだったんだけどと、志翠は頬に手をあてる。

 見た目美女がやっているので、品のある仕草だと、言いたい所だが、むき出しになった筋肉隆々の腕が、ギャップを生みすぎて目に毒だ。

 直視しないように努めつつ、コウメは志翠に先を促した。


「私の主って、ここのダンジョンのラスボスなんだけどぉ、色々訳あって、あなたを鍛えることになったのぉ」


 聞きたい部分が色々と隠れてしまっているので、コウメは質問を重ねた。


「他のみんなは?」

「それぞれの試練に立ち向かってるんゃないかしら〜」

「みんなは試練なのかい?」


 じゃあ、これも試練だと言うのかと、首を傾げるコウメに、志翠は首を横に振った。


「そんな訳ないでしょ。これはれきっとした修行よぉ」


 明らかに不満の表情を見せたコウメに、志翠は仕方ないじゃないのと言わんばかりに肩を竦めた。


「だって、あなたが一番弱いんですもの。試練云々じゃないわ」


 グッとコウメが、開こうとした口を押しとどめた。

 まさに図星なのだ。


 今までソロでやってきて、知名度もそこそこあるくらいには強かったコウメだが、シシツキ達と行動を共にするうちに、自分の弱さが浮き彫りになって来たのだ。

 それは例えば、単純な地力であったり、連携であったり。


 シシツキ達は、どこかしら化け物じみた力を持っている。

 しかし、コウメは平凡な人間の域を超えない位の力しかない。

 自身があのチームで、足を引っ張っているのは、自覚済みなのだ。


「だから、この私直々に、鍛えて上げる。そうねぇ、私に一太刀当てられたら、一区切りつけるわ。もし当てられなかったら…」


 コウメは一瞬自分の体が重くなったと感じた。

 それ位、志翠の威圧は凄まじい。


「この場から出られないわよ?」


 対面するだけで感じる強者の風格に、コウメはゾクリと体を震わせた。


 しかし、彼女の頬に浮かぶのは紛れもない笑みだ。


「望むところだよ」


 こうして再び戦いという名の修行の火蓋が切って落とされた。


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