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先生は勇者と共に…  作者: 朱音
第3章
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それぞれの…

 

『よく来ましたね、女神の血を引く一族の者よ』


 そう言われたアイカは、どういう事かと、首を傾げ考えること約10秒、心当たりを見つけた。


「まさか、王家の伝説のことを言ってらっしゃるのですか?」


 王家の伝説、それは二千年前の人類の始より少し現在に近い時。

 つまり、王家誕生についての逸話だ。

 内容は大まかに言うと、無法地帯となっていた人々を統一させた男が現れ、国を作ったという、内容自体はアッサリとしたものだ。

 しかし、問題はこの男の出自だ。

 彼は、人々に向かって、こう言ったという。


 “私は、父はトウエの豪傑で、母はこの世界を創造し今も皆を見守っておられる女神ドゥローデェスである“


 彼は、こう自己紹介をすると、母は嘆いていると、続けた。


 “自ら作り上げた、可愛い子らが、争い血を流していると。そこで私が、人々を治めるよう、頼まれたのだ“


 こうして生まれた王家は、現在に至るまで、絶えることなく続いているという。


「しかし、これはあくまで、伝説であって…」

『いえ、これは事実なのです。あなたには、女神の血が流れているのですよ』


 女性は、そう言うと、慈しむようにアイカの頬に手を伸ばした。


『私は、女神の代理であるとはいえ、血縁関係を持つもの。こうして、あなたと話が出来る事が嬉しいです』


 ニッコリと微笑む女性に、アイカは動じるでもなく、ご要件はと尋ねた。

 彼女にとって、女神の血を引いているだとかいないだとかは、正直なところ、どうでもいい。

 アイカにとって大切なのは、シシツキだけだ。

 そこにたとえ神であろうと介入させるつもりは無い。


『あなたに、忠告しに来たのです。アイカ、あの男とこれ以上、関わってはいけません』

「…あの男、ですか?それは一体誰のことですか」

『シシツキという男です』


 まるで穢らわしいものであるように、顔を歪めた女性に、アイカは露骨に表情を変えた。

 嫌悪感を露わにしたアイカに、女性は痛ましそうな目を向けた。


『可哀想に…。それほど、あの男に洗脳されているのですね』

「洗脳?まさか」


 アイカは呆れた目で、女を見た。

 シシツキが、洗脳できるなら、彼はあんな理不尽な人生を送っていない。


『しかしっ…!!』

「洗脳は、お前達の十八番(おはこ)だろ?勝手なこと言うな」


 静かな怒りの声が、女に突き刺さった。

 ザッと茂みを掻き分けて現れたのは、長身の男だった。

 しっとりと濡れたような黒髪に、鷲のような鋭い金色の目は、女を憎々しげに睨んでいる。


『お前は!!』

「…心配して損だったな。これなら、俺が介入する必要なかった」


 いきり立つ女を綺麗に無視して、突然現れた男は、アイカを見て面倒くさそうにため息を吐いた。


「あなたは、誰ですか?」

「俺は、このダンジョンの主の、部下みたいなもんだ」

「どうしてここに?」

「主に頼まれてだ。それ以上の意味は無い」


 女を無視して進められる会話は、妙に息が合ったものであった。

 性根が似たもの同士なのかもしれない。


 それを証拠に、時々女に向ける視線が、どちらも蔑みの目だった。煽るのに慣れている。正直なところ、そこらのチンピラの手口と同じだ。


『あなた、後悔しますよ?』


 怒りが込められた言葉は、アイカの心に何も響かない。


「私は、最愛の人を信じてますから。それに、あなたみたいな、自分勝手な人の言葉を聞く必要は、ありませんよね?」

「そもそも、気が付くのが遅いんだよ。今更、コイツらの繋がりを壊すことなんて出来ないぞ」


 2人に畳み掛けられ、女のプライドは、ズタズタにされた。

 怒り狂った女は、感情をそのまま魔力に変換した。


『そう。あなただけは、助けてあげようと思ったのに。じゃあ、死んで?』


 怒りが一周して冷静になったのか、狂ったのか。

 静かな落ち着いた声音のまま、水の鉾がアイカと男を取り囲んだ。


「愚かだな」


 柏手を叩く音が、微かに響いてきた。

 その瞬間、女が生成した水の鉾は、形を失い、地面にべシャリと叩きつけられた。


「ここは、主の領域。お前が、好きに出来ると思うなよ」


 唖然としていた女に一足で近づいた男は、風を纏う大鎌を振り下ろした。


 ◇◆◇◆


 同じ道を歩いていたはずなのに、何故だろう。


 シキョウは、見失ってしまったシシツキ達を探して、街を歩いていた。

 シキョウが歩いている道は、道幅はとても広く、馬車が余裕を持ってすれ違うことはできそうだ。

 しかし、道にはシキョウしかいない。


「先生ぇ!コウメ姐さん!」


 時折、声を上げてみるが、帰ってくるのは、静寂のみ。

 しょんぼりと肩を落としたシキョウは、ふと隣の建物を見た。


 木造の簡素な建物は、全て一階建て。

 大した高さはないが、闇雲にさまよっているよりは、マシだろう。そう結論を出したシキョウは、予備動作なくトンと軽い音をたてて、低い建物の屋根に飛び乗った。


「わわっ!危ないやんかもぉ…」


 屋根は、木ではなく、細い植物の茎が敷き詰められて作られているようだ。

 それが、雨が降った後のように、湿っていたため、滑りやすくなっていた。シキョウが体勢を崩した原因である。


「やっぱり、見晴らしがええとは言えんけど、上から見た方が分かるな〜」


 ぐるりと辺りを見回すと、キョウアンや王都とは異なり、城壁がないことが分かる。

 更に、王都で見たような、そびえ立つような高い建物は見当たらない。

 唯一、大きかったのは、シキョウが真っ直ぐに歩いてきた道の終着点にある、門だけだろう。そこの門の辺りだけ、城壁の様な壁が設けられている。


 それより目を引くのが、整然と区画された町並みだろう。

 等間隔で、曲がり道が現れると思っていたが、この町並みで分かった。


「マメな領主さんが、やはるんやろか…」


 思わず、感嘆の声を上げてしまう。

 流石に、区画ごとに、建っている建物は異なるようだ。

 シキョウが歩いていた道が、一番幅が広く、その先には、一際広い土地に建てられた建物が見える。


「あっこに行ったら、なんかわかるかな」


 シキョウはそこを目的地と定め、植物で出来た屋根を、トンと蹴った。


 ◇◆◇◆


「…つまり、纏めるとこのダンジョンは、あなたの主の試験ということですか」

「そうだ」


 女だったものを視界の端に捕らえながらも、気にした素振りを見せず、淡々と聞きたいことを聞いたアイカは、ホッと息をついた。


「それなら、私の試験はどうなるのですか?」

「障害物がデカすぎたから、お前はもう免除だ。試験には、合格したし」


 歩きながら話すと、立ち上がった男の後ろをアイカはゆっくりと着いて行く。


「それで、皆バラバラになったんですね。個人の能力を正確に把握できるように」


 話が早くて助かると、男は首を立てにふった。


「それで、あの失礼な女は?」

「全員が、主のところに着いたら説明する」


 面倒臭いと顔に書いてある男に、アイカは呆れた視線を向け、諦めた。


「怠惰ね、あなた」

「否定はしない」



最近、更新が、遅れ続けていて申し訳ありません。

言い訳をさせていただきますと、終盤に近づいているので、かなり考え込んでしまうのと、リアルのタイムスケジュール的に、純粋に書く時間が足らないということです。


更新を止めるつもりはありませんので、完結に向けて頑張ります。

皆様には、ご迷惑をおかけいたしておりますが、どうか、これからもよろしくお願いします。


追記︰誤字脱字がありましたら、そっと報告をお願いします…。

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