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先生は勇者と共に…  作者: 朱音
第3章
41/65

正体

 

 学園にポッカリと空いた穴は、直径約6メートル程であろうか。

 よくよく中を覗き込むと、階段があるのが分かる。


「これ、初級のダンジョンにありがちな入口だよね?」

「そうであると思われます」


 衝撃から抜けきったシシツキがそう問うと、サクヤは首を縦に降った。


 地下に続いている階段にしろ、その周りの土が剥き出しの壁にしろ、初級のダンジョンそのものである。

 しかし、その穴の大きさを含め、少しだけ見えている、やけに整えられたような土の壁は、シシツキにこのダンジョンが、ただのダンジョンではないことを訴えていた。


「王宮に連絡は?」

「既に完了しています。実は、騎士団が来て、見てもらったのですが、中に入れないのです」

「中に入れない?」


 そんなダンジョン、聞いたことない。

 基本的に、ダンジョンは来るもの拒ますの性質で、それこそ、生まれたばかりの赤子から、足腰の弱い老人まで、入ろうと思えばだれでも入ることができる。

 そのため、冒険者ギルドが入場に制限を設けなければならないのだが。

 そんな前代未聞なダンジョンに、シシツキが困惑気に、首をかしげると、それまでじっと穴を見つめていたシキが、決心したように、口を開いた。


「ここは入れないのは、多分、結界が貼ってあるからです」

「そうみたいですね」


 疑問の声を上げたのは、誰もいなかった。

 そもそも、シシツキは霊力をコントロールするために、シキから結界について教えてもらっていた。

 アイカはそれにくっついていたから、言わずもがなだろう。

 コウメとシキョウは旅の途中で、その力の恩恵を受けている。


 だが、サクヤはなぜ、結界という聞きなれない言葉に、何の疑問も抱かなかったのか。

 この世界の魔法には、結界という概念がない。

 なぜなら、結界はいわゆる霊力の壁。しかし、魔力は、体から放出するときに、何らかの属性が付与されてしまい、とてもではないが、結界とはなりえない。

 想像をしてほしい。

 火の結界という名の、火の壁が周りにそびえたっているのを。

 それは、ただの自殺行為であろう。

 だから、この世界に結界は存在しない。



 だから、サクヤが、結界という単語を知っているはずがないのだが。


「ああ、教え――」

「お、帰ってんじゃん」

「お帰りー、先生」


 サクヤの後ろから現れたのは、片手剣がすっかり身に馴染んだオウキとリュウジの2人である。

 彼らは、シシツキの傍らにいる、見知らぬ人物に警戒心を顕にしたが、突っかかることも無く、シシツキの元に一直線に向かった。


「オウキ、リュウジ。元気だったの?」

「当たり前だろ」


 相変わらずの言葉が乱暴であるが、その生き生きとした姿を見る限り、元気にやっていたのは、一目瞭然だ。


「先生、誰なん?」

「俺の教え子。今は冒険者をしてる」

「そうなんや!強そうな兄ちゃんたちやね」


 シキョウは、屈託無い笑みを浮かべて、オウキとリュウジに近づいた。


「兄ちゃんら、うちね、シキョウって言うんや。先生に勉強教えてもろてるんやで〜」

「ついでに、あたしは、冒険者のコウメだよ」


 野犬のように、人になつかない部分がある、オウキとリュウジだが、意外にも素直に自己紹介をしていた。


「所で、2人は一体何のようなのですか?」


 アイカの問に、オウキとリュウジが、思い出したというように、手を叩いた。


「先生が、帰ってきたら、ギルドまで連れてきてって言われてたんだ…」

「そんな事しなくても、ちゃんと行くのに」

「現に来てないだろ」


 ギルドから、人が派遣されるとは、シシツキは一体何者か。

 冒険者であり、学園長であり…。

 コウメの考察を他所に、シキョウが無邪気に聞いた。


「なあなあ、ギルドまで行ったら、何があるん?」


 子供特有の無邪気さで、シキョウは疑問に思ったことをそのまま、口に載せた。

 もやもやとそのことを考えていたコウメも、体ごと耳をシシツキに寄せる。


「俺らを待っているのは、ギルドマスターだ」

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