王都
数ヶ月ぶりの王都の関門を通り抜けると、懐かしいと思えるほどの喧騒が、シシツキ達を包んだ。
学園は、関門の真反対にあるため、途中で色々寄り道をしながらになるだろう。
お上りさんと宣言しているようなほど、辺りを見渡し、目を輝かせるコウメとシキョウを、シシツキは微笑ましく見守った。
「意外だね、コウメが王都に来たことないなんて」
「あたしの依頼は、キョウアンの中で事足りる位のしか受けれなかったからねぇ。なんせ、ソロだったから、野営を避けてたから」
ああ、そうかと、シシツキは納得したように頷いた。
わざわざ、一人で野営というリスクを抱えてまで、お金を稼ぐ意味は、コウメには無い。
あまりにも、シシツキのパーティに違和感なく溶け込んだから忘れがちだが、そもそも彼女は、協力戦を得手としない人だった。
「先生ぇ、あれなんなん?」
「アレは、鍛冶屋」
「へぇ!オシャレやねぇ!」
もちろん、今まで奴隷であったシキョウも、例外ではない。
先程から、ぴょんぴょんとシシツキと露店との間を往復している。
「おやぁ、誰かと思えば、先生じゃないか!久しぶり!何処に行ってたの?」
喧騒に包まれた大通りで、誰にもかき消されないであろう、大声が、シシツキの背中に飛んできた。
シシツキは、その聞き知った声に、警戒することなく振り向いた。
そこに居たのは、恰幅のいい50歳位の女性だった。
彼女は、買い物途中であったであろう、荷物でパンパンになった手提げ袋を持っていた。
「マチコさん、久しぶり。元気そうだね」
「もう、あんたこそ、ちゃんと食べてるのかい?」
あははと豪快な笑い声を上げながら、バシンと肩を叩かれたシシツキは、その部分をそっと摩った。
何時だって、彼女は、パワフルなのである。
「紹介するよ皆、近所に住んでるマチコさん。マチコさん、俺の冒険仲間だよ」
マチコの気を逸らそうと、シシツキはポカンと固まっている仲間を生贄に差し出した。
「先生の助手をしております、アイカと申します」
「同じく、シキです」
「うちは、生徒のシキョウです」
「あたしは、冒険者としてパーティを組んでいる、コウメだよ」
マチコは、あらまぁと、しげしげとアイカ達を見て、何やら納得したような声をあげた。
「あらー、こんな別嬪さんが近くにいたら、そりゃ、サトカに勝ち目が無いわけだねぇ」
シシツキにほの字の、自分の娘を思い出して、マチコは、フフッと苦笑した。
彼女が、この場にいれば、間違いなく発狂しているだろう。
しかし、マチコの興味はそこではない。
「ねね、誰が彼女さん?」
「ぶふぉっ」
思わず、シシツキは吹き出した。
「ちょっ…何言ってんの!?」
「えー、こんな美人放ってるの?ねね、お嬢さん達、どうなの?」
「マチコさん、買い物の途中だったんじゃないの!?」
顔を真っ赤にして、アワアワとマチコを人波に戻したシシツキは、動揺を隠せないまま、道を指さした。
「と、とりあえず、学園に行こうか」
ぎくしゃくと歩き出したシシツキを、アイカがニッコリと柔らかい笑みを浮かべて、引き止めた。
「先生」
「えっ、ん?何?」
「そちらは、学園じゃありませんよ」
シシツキの顔が、更に紅く色づいたのは、言うまでもないだろう。




