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先生は勇者と共に…  作者: 朱音
第3章
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王都

 

 数ヶ月ぶりの王都の関門を通り抜けると、懐かしいと思えるほどの喧騒が、シシツキ達を包んだ。

 学園は、関門の真反対にあるため、途中で色々寄り道をしながらになるだろう。

 お上りさんと宣言しているようなほど、辺りを見渡し、目を輝かせるコウメとシキョウを、シシツキは微笑ましく見守った。


「意外だね、コウメが王都に来たことないなんて」

「あたしの依頼は、キョウアンの中で事足りる位のしか受けれなかったからねぇ。なんせ、ソロだったから、野営を避けてたから」


 ああ、そうかと、シシツキは納得したように頷いた。

 わざわざ、一人で野営というリスクを抱えてまで、お金を稼ぐ意味は、コウメには無い。

 あまりにも、シシツキのパーティに違和感なく溶け込んだから忘れがちだが、そもそも彼女は、協力戦を得手としない人だった。


「先生ぇ、あれなんなん?」

「アレは、鍛冶屋」

「へぇ!オシャレやねぇ!」


もちろん、今まで奴隷であったシキョウも、例外ではない。

先程から、ぴょんぴょんとシシツキと露店との間を往復している。


「おやぁ、誰かと思えば、先生じゃないか!久しぶり!何処に行ってたの?」


 喧騒に包まれた大通りで、誰にもかき消されないであろう、大声が、シシツキの背中に飛んできた。

 シシツキは、その聞き知った声に、警戒することなく振り向いた。

 そこに居たのは、恰幅のいい50歳位の女性だった。

 彼女は、買い物途中であったであろう、荷物でパンパンになった手提げ袋を持っていた。


「マチコさん、久しぶり。元気そうだね」

「もう、あんたこそ、ちゃんと食べてるのかい?」


 あははと豪快な笑い声を上げながら、バシンと肩を叩かれたシシツキは、その部分をそっと摩った。

 何時だって、彼女は、パワフルなのである。


「紹介するよ皆、近所に住んでるマチコさん。マチコさん、俺の冒険仲間だよ」


 マチコの気を逸らそうと、シシツキはポカンと固まっている仲間を生贄に差し出した。


「先生の助手をしております、アイカと申します」

「同じく、シキです」

「うちは、生徒のシキョウです」

「あたしは、冒険者としてパーティを組んでいる、コウメだよ」


 マチコは、あらまぁと、しげしげとアイカ達を見て、何やら納得したような声をあげた。


「あらー、こんな別嬪さんが近くにいたら、そりゃ、サトカに勝ち目が無いわけだねぇ」


 シシツキにほの字の、自分の娘を思い出して、マチコは、フフッと苦笑した。

 彼女が、この場にいれば、間違いなく発狂しているだろう。

 しかし、マチコの興味はそこではない。


「ねね、誰が彼女さん?」

「ぶふぉっ」


 思わず、シシツキは吹き出した。


「ちょっ…何言ってんの!?」

「えー、こんな美人放ってるの?ねね、お嬢さん達、どうなの?」

「マチコさん、買い物の途中だったんじゃないの!?」


 顔を真っ赤にして、アワアワとマチコを人波に戻したシシツキは、動揺を隠せないまま、道を指さした。


「と、とりあえず、学園に行こうか」


 ぎくしゃくと歩き出したシシツキを、アイカがニッコリと柔らかい笑みを浮かべて、引き止めた。


「先生」

「えっ、ん?何?」

「そちらは、学園じゃありませんよ」


 シシツキの顔が、更に紅く色づいたのは、言うまでもないだろう。

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