勇者道中
王都から暫く、魔族が住むという大陸を目指して歩き始めた、勇者一行は、1日目の野営場所を確保して、一息吐いているところだ。
メンバーはヒカル、カレン、ユカリ、タクミ、サワの異世界組の5人と、聖女とその護衛のアカツキ、計7人のチームだ。
あまり多くないのは、勇者達の実力があるということでもあるが、この位の人数の方が、連携がやりやすいカラでもある。
現在、この7人は、焚き火を囲んで、夕食を食べているところだ。
いつもは賑やかな異世界組にしては珍しい静寂。
焚き火がパチパチと燃える音が響く。
なぜ、これほどまでに静かなのか。
それは勇者達が、聖女との距離を測りあぐねているからだ。
王都で見た彼女は、喜怒哀楽を表さない、話さない、まさに人形のような人であった。
だから、カレン達は彼女とどう接していいのか分からない。
頼みの綱のアカツキは、楽しそうにこの状況を眺めるだけだ。
そんな中、聖女が動きを見せた。
そっと食べていたスープを膝の上に下ろすと、すぅと息を吸いこんだ。
「もう我慢出来ないっっ!!」
そう叫んだ聖女を、カレン達勇者は、ポカンと間抜け面で見る。
聖女は、神聖な雰囲気をかなぐり捨て、勇者達に食ってかかった。
「何なの、この静寂!?気分が落ち込むどころじゃないわよ?」
カツンと靴を鳴らしながら、カレンに近づいた聖女は指を突きつけながら、叫んだ。
「ほら、何とか言いなさいよ!」
「…いや、驚き過ぎて声が出ないのですから、勘弁してあげなさい」
そうアカツキに暴れ馬の如く宥められ、聖女は渋々元の場所に座り直した。
その頃には、カレンの思考は再起動を果たしていた。
「えっと…。聖女様?」
「サラと呼んで、勇者カレン」
「分かりました、サラ様。私のことは…」
あくまで、丁寧な態度を崩さないカレンに、再び聖女…サラが吠えた。
「敬語も禁止よ!様付けも要らないわ。全く…こっちだって元は平々凡々の一般庶民なのよ。砕けた態度で結構。むしろそうしてちょうだい」
一般庶民と言う割に、洗練された動きに、カレンはどれを信じていいのかと、アカツキに助けを求めた。
「本当ですよ。サラは、一般庶民でしたよ。今は、聖属性のせいで、聖女になり、一般庶民から外れましたが」
勇者達は、それを聞いてお互いに、アイコンタクトをとった。
どうするよ?
おい、1回声かけてみろよ。
えー、私にそんな勇気ないよぉ。
あ、僕も…。
……頼んだ
一瞬の交差の末、結局、カレンが再び口を開いた。
「では、よろしく。サラさん」
「ん、合格点ね。みんなもそういう事だから。あーもう、やになっちゃうわ。あれしちゃダメ、これしちゃダメって。堅苦しいったらありゃしない!」
まさに、化けの皮いや、仮面が剥がれた。
聖女の仮面を脱ぎ捨てたサラは、大人の女性であるにも関わらず、少女のように生き生きと輝いていた。
そんなサラの勢いに飲まれた勇者達は、徐々に和やかな雰囲気を漂わせ始めた。
「ねぇ、学園ではどんなことを学んでいたの?」
「この世界の一般常識とか、魔法とか!」
「アカツキ先生に、剣も教えてもらったんだよぉ〜」
楽しそうに学園のことを話す勇者達に、サラはうんうんと頷きながら聞いていた。
「楽しそうだね。先生は、どんな人だったの?」
サラの声に、何かが混じったが、それに気がついたのは、隣で寄り添っていたアカツキだけだった。
「シシツキ先生は、凄い先生だったよな。カッコイイし、頭いいし、面倒見が良いし」
「うん。特に、歴史になると、凄いの」
「そう、良い先生なんだね」
サラの脳裏に、過去の映像が、横切る。
『俺は、魔王が現れる原因を突き詰めて、聖女なんて必要の無い世の中をつくる!』
そう泣きながら宣言した弟が、こうして勇者を育てたとは。
サラは、感慨深く勇者達を、見つめた。
「君たち、これからよろしくね」
改めてなされた挨拶が、勇者パーティーが結成された瞬間だった。




