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先生は勇者と共に…  作者: 朱音
第2章
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勇者道中

 

 王都から暫く、魔族が住むという大陸を目指して歩き始めた、勇者一行は、1日目の野営場所を確保して、一息吐いているところだ。


 メンバーはヒカル、カレン、ユカリ、タクミ、サワの異世界組の5人と、聖女とその護衛のアカツキ、計7人のチームだ。

 あまり多くないのは、勇者達の実力があるということでもあるが、この位の人数の方が、連携がやりやすいカラでもある。


 現在、この7人は、焚き火を囲んで、夕食を食べているところだ。


 いつもは賑やかな異世界組にしては珍しい静寂。

 焚き火がパチパチと燃える音が響く。


 なぜ、これほどまでに静かなのか。

 それは勇者達が、聖女との距離を測りあぐねているからだ。


 王都で見た彼女は、喜怒哀楽を表さない、話さない、まさに人形のような人であった。

 だから、カレン達は彼女とどう接していいのか分からない。

 頼みの綱のアカツキは、楽しそうにこの状況を眺めるだけだ。


 そんな中、聖女が動きを見せた。

 そっと食べていたスープを膝の上に下ろすと、すぅと息を吸いこんだ。


「もう我慢出来ないっっ!!」


 そう叫んだ聖女を、カレン達勇者は、ポカンと間抜け面で見る。

 聖女は、神聖な雰囲気をかなぐり捨て、勇者達に食ってかかった。


「何なの、この静寂!?気分が落ち込むどころじゃないわよ?」


 カツンと靴を鳴らしながら、カレンに近づいた聖女は指を突きつけながら、叫んだ。


「ほら、何とか言いなさいよ!」

「…いや、驚き過ぎて声が出ないのですから、勘弁してあげなさい」


 そうアカツキに暴れ馬の如く宥められ、聖女は渋々元の場所に座り直した。

 その頃には、カレンの思考は再起動を果たしていた。


「えっと…。聖女様?」

「サラと呼んで、勇者カレン」

「分かりました、サラ様。私のことは…」


 あくまで、丁寧な態度を崩さないカレンに、再び聖女…サラが吠えた。


「敬語も禁止よ!様付けも要らないわ。全く…こっちだって元は平々凡々の一般庶民なのよ。砕けた態度で結構。むしろそうしてちょうだい」


 一般庶民と言う割に、洗練された動きに、カレンはどれを信じていいのかと、アカツキに助けを求めた。


「本当ですよ。サラは、一般庶民でしたよ。今は、聖属性の()()で、聖女になり、一般庶民から外れましたが」


 勇者達は、それを聞いてお互いに、アイコンタクトをとった。


 どうするよ?

 おい、1回声かけてみろよ。

 えー、私にそんな勇気ないよぉ。

 あ、僕も…。

 ……頼んだ


 一瞬の交差の末、結局、カレンが再び口を開いた。


「では、よろしく。サラさん」

「ん、合格点ね。みんなもそういう事だから。あーもう、やになっちゃうわ。あれしちゃダメ、これしちゃダメって。堅苦しいったらありゃしない!」


 まさに、化けの皮いや、仮面が剥がれた。

 聖女の仮面を脱ぎ捨てたサラは、大人の女性であるにも関わらず、少女のように生き生きと輝いていた。


 そんなサラの勢いに飲まれた勇者達は、徐々に和やかな雰囲気を漂わせ始めた。


「ねぇ、学園ではどんなことを学んでいたの?」

「この世界の一般常識とか、魔法とか!」

「アカツキ先生に、剣も教えてもらったんだよぉ〜」


 楽しそうに学園のことを話す勇者達に、サラはうんうんと頷きながら聞いていた。


「楽しそうだね。先生は、どんな人だったの?」


 サラの声に、何かが混じったが、それに気がついたのは、隣で寄り添っていたアカツキだけだった。


「シシツキ先生は、凄い先生だったよな。カッコイイし、頭いいし、面倒見が良いし」

「うん。特に、歴史になると、凄いの」

「そう、良い先生なんだね」


 サラの脳裏に、過去の映像が、横切る。


『俺は、魔王が現れる原因を突き詰めて、聖女なんて必要の無い世の中をつくる!』


 そう泣きながら宣言した弟が、こうして勇者を育てたとは。


 サラは、感慨深く勇者達を、見つめた。


「君たち、これからよろしくね」


 改めてなされた挨拶が、勇者パーティーが結成された瞬間だった。


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