説明タイム
「…で、説明してくれるんだろうね?」
焚き火の横に仁王立ちするコウメの前には、正座をしたシシツキ、アイカ、シキが並んで座っていた。
それぞれの顔には、反省の文字が伺える。
“スピード奴隷商人潰し”を達成したシシツキ一行は、憲兵から最低限の事情聴取を受け、捕まっていた人たちをギルドに保護して貰ったその足で、街を出た。
丁度街を出たのが、早朝だったため、かなりの距離を歩いて、森の中の少し拓けた場所で、野宿をしている。
…で、もやもやが最高点に達したコウメに、説教されるように事情聴取されているという訳だ。
正直、シシツキもいくらイラついていたからと言って、やりすぎたのは自覚しているので、自主的に正座している。
ちなみにだが、シキョウは歩き疲れて、テントの中で爆睡中だ。
「んー…どこから話したものかな…」
「そもそも、私達がシキョウを保護した経緯はご存知ですよね?」
それについては、シシツキに問い詰めて、細部まで把握と説教済みのコウメは、頷いた。
「実はと言うと、その時に俺、番犬と会ってるんだよね」
「は?」
コウメのドスの効いた声に、シシツキはタラりと冷や汗をかいた。
今、下手なことを口走ると、とんでもない雷が落とされる。
シシツキは、戦地へ向かうような緊迫感を抱いて、ゴクリと唾を飲んだ。
「隠していた訳は、下手にコウメを巻き込むつもりが無かったんだよ。それに、俺が受けた番犬の頼み事だったし」
「…内容は?」
「俺がシキョウを引き取るついでに、番犬の妹も助けてくれって」
シシツキの言葉に、コウメは考えるように顎に手を当てた。
「どうして、シシツキに?もっと他にも居ただろうに」
「元々、番犬は腕のいい傭兵だったんだ。本名はクロガ」
腕がいいのは、シシツキと互角以上に剣を合わせていた事からも分かるだろう。
さらにコウメは、彼を見たのは短い間であったが、彼が並の実力でないことは、見抜いていた。
だから、コウメはそこには触れず、シシツキに続きを促した。
「クロガには、体が弱い妹のオシロがいるんだ。クロガは、その妹の薬代を払うために、傭兵という危険でも、報酬のいい仕事をしていた。でも、その力に目をつけたのが、あの奴隷商人だった」
シシツキ子の話をまとめると、奴隷商人がオシロを攫い、彼女を人質に、強制的にクロガを働かせていたようだ。
しかも、監視という名の相棒付きで。
その監視役が居たから、クロガは今まで何もアクションが取れなかったのだが、あの日は偶々監視役がいなかった。
だから、シシツキに助けを求めたのだろう。
しかし、そう簡単に信用するシシツキではない。
きっちり彼の話の裏を取った上で、今回の事を起こした。
ちなみに、裏を取っていたのは、シキョウとお買い物と評して街を出歩いている時。
本当に、裏が取れた直後、行動に移したのだ。
それは、それだけシシツキが憤っていたと言うことだろうか。
「…しかし、クロガ程の腕のものなら、監視を殺して妹と脱出するという手もあったんじゃあ、ないのかい?」
一通り聞いたコウメは、そう言葉を漏らした。
確かに、それも出来ただろう。
しかし、それには条件がある。
「それは、クロガがオシロの場所を知っていたらだよ」
そう、彼は大まかな場所の目星は付けていたものの、オシロがどこに居るかということを知らなかったのだ。
だから、クロガがたどり着く前に、オシロが殺されている可能性だって無きにしも非ずだったのだ。
そんな不確実な作戦を、妹を大事に思っているクロガが取るはずがない。
「よくそれで、妹が生きているという事が分かったねぇ…」
呆れを多分に含んだコウメに、今まで口を閉じていたシキが、声を上げた。
「それは、1日1回クロガが、ランダムな場所で、妹と会っていたからです。式を使って、2人の魔力を辿っていたら、何回か交わっていました」
「…そうか」
「ちなみに、俺がクロガと戦ったのは、シキョウに戦闘を見せるためと、疑われたいためと、シキが気付くように時間稼ぎしてただけ」
これで、番犬もとい、クロガが“スピード奴隷商人潰し”に関与していた理由は分かった。
しかし、コウメの疑問はそれだけではない。
「その、よく言っているしきって言うのはなんだい?」
そう、一応コウメと一緒の時は自重していたシキは、これまで、普通の魔法しか使ってきていない。
さらに付け加えると、シキは髪をシシツキと同じ色に染め、普段はフードを被っている。
だから、コウメはシキが陰陽師、ましてや勇者であるなんて知らない。
「僕、陰陽師なんです」
「オンミョージ??」
「ついでに勇者なんですよ」
「ユーシャ……。…!?」
簡潔に告げられた答えをオウム返ししていたコウメは、理解した瞬間に、ガシッとシシツキの胸倉を掴んだ。
「どういうことなんだい!?」
「ぐえっ…なんで俺…」
「ちょっとコウメさん!」
「説明するから、納得するまで話すから、先生を離してください!」
やんのやんのと結局空が白んでくるまで、3人はコウメに説明をしたのだった。
「ふぁ…おはよーう…。なんで先生は、そんなに疲れてるん?」
「あ、ああ…おはよう。気にしないで」
よろよろと寝不足の体を起こしたシシツキは、何事も無かったかのように、せっせと朝の準備をする3人に恨みがましい目を向けた。
ちなみに、シシツキ以外は1日位寝なくても大丈夫な体の造りをしている。
「先生、スープ食べますか?」
「うん、頂くよ」
はぐはぐとアイカから受け取ったスープを食べるシシツキに、アイカは問うた。
「で、先生、次の目的地はどこですか?」
「ああ。次は、王都に帰るんだ」
ちょっと厄介事と、付け加えられたが、この場にいる全員が、それを厭わない。
「王都かい。楽しみだねぇ」
「先生、王都って、どこなん?ここから遠いん?」
「久しぶりの王都ですね」
「あー…部屋掃除しないと…」
こうして、賑やかになった一行は、王都へ向けて出発した。
次週は、カレンサイドからお送りします。




