表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先生は勇者と共に…  作者: 朱音
第2章
37/65

説明タイム

 

「…で、説明してくれるんだろうね?」


 焚き火の横に仁王立ちするコウメの前には、正座をしたシシツキ、アイカ、シキが並んで座っていた。

 それぞれの顔には、反省の文字が伺える。


 “スピード奴隷商人潰し”を達成したシシツキ一行は、憲兵から最低限の事情聴取を受け、捕まっていた人たちをギルドに保護して貰ったその足で、街を出た。


 丁度街を出たのが、早朝だったため、かなりの距離を歩いて、森の中の少し拓けた場所で、野宿をしている。

 …で、もやもやが最高点に達したコウメに、説教されるように事情聴取されているという訳だ。


 正直、シシツキもいくらイラついていたからと言って、やりすぎたのは自覚しているので、自主的に正座している。


 ちなみにだが、シキョウは歩き疲れて、テントの中で爆睡中だ。


「んー…どこから話したものかな…」

「そもそも、私達がシキョウを保護した経緯はご存知ですよね?」


 それについては、シシツキに問い詰めて、細部まで把握と説教済みのコウメは、頷いた。


「実はと言うと、その時に俺、番犬と会ってるんだよね」

「は?」


 コウメのドスの効いた声に、シシツキはタラりと冷や汗をかいた。

 今、下手なことを口走ると、とんでもない雷が落とされる。

 シシツキは、戦地へ向かうような緊迫感を抱いて、ゴクリと唾を飲んだ。


「隠していた訳は、下手にコウメを巻き込むつもりが無かったんだよ。それに、俺が受けた番犬の頼み事だったし」

「…内容は?」

「俺がシキョウを引き取るついでに、番犬の妹も助けてくれって」


 シシツキの言葉に、コウメは考えるように顎に手を当てた。


「どうして、シシツキに?もっと他にも居ただろうに」

「元々、番犬は腕のいい傭兵だったんだ。本名はクロガ」


 腕がいいのは、シシツキと互角以上に剣を合わせていた事からも分かるだろう。

 さらにコウメは、彼を見たのは短い間であったが、彼が並の実力でないことは、見抜いていた。

 だから、コウメはそこには触れず、シシツキに続きを促した。


「クロガには、体が弱い妹のオシロがいるんだ。クロガは、その妹の薬代を払うために、傭兵という危険でも、報酬のいい仕事をしていた。でも、その力に目をつけたのが、あの奴隷商人だった」


 シシツキ子の話をまとめると、奴隷商人がオシロを攫い、彼女を人質に、強制的にクロガを働かせていたようだ。

 しかも、監視という名の相棒付きで。


 その監視役が居たから、クロガは今まで何もアクションが取れなかったのだが、あの日は偶々監視役がいなかった。

 だから、シシツキに助けを求めたのだろう。

 しかし、そう簡単に信用するシシツキではない。

 きっちり彼の話の裏を取った上で、今回の事を起こした。


 ちなみに、裏を取っていたのは、シキョウとお買い物と評して街を出歩いている時。

 本当に、裏が取れた直後、行動に移したのだ。

 それは、それだけシシツキが憤っていたと言うことだろうか。


「…しかし、クロガ程の腕のものなら、監視を殺して妹と脱出するという手もあったんじゃあ、ないのかい?」


 一通り聞いたコウメは、そう言葉を漏らした。


 確かに、それも出来ただろう。

 しかし、それには条件がある。


「それは、クロガがオシロの場所を知っていたらだよ」


 そう、彼は大まかな場所の目星は付けていたものの、オシロがどこに居るかということを知らなかったのだ。

 だから、クロガがたどり着く前に、オシロが殺されている可能性だって無きにしも非ずだったのだ。

 そんな不確実な作戦を、妹を大事に思っているクロガが取るはずがない。


「よくそれで、妹が生きているという事が分かったねぇ…」


 呆れを多分に含んだコウメに、今まで口を閉じていたシキが、声を上げた。


「それは、1日1回クロガが、ランダムな場所で、妹と会っていたからです。式を使って、2人の魔力を辿っていたら、何回か交わっていました」

「…そうか」

「ちなみに、俺がクロガと戦ったのは、シキョウに戦闘を見せるためと、疑われたいためと、シキが気付くように時間稼ぎしてただけ」

 

 これで、番犬もとい、クロガが“スピード奴隷商人潰し”に関与していた理由は分かった。

 しかし、コウメの疑問はそれだけではない。


「その、よく言っているしきって言うのはなんだい?」


 そう、一応コウメと一緒の時は自重していたシキは、これまで、普通の魔法しか使ってきていない。

 さらに付け加えると、シキは髪をシシツキと同じ色に染め、普段はフードを被っている。

 だから、コウメはシキが陰陽師、ましてや勇者であるなんて知らない。


「僕、陰陽師なんです」

「オンミョージ??」

「ついでに勇者なんですよ」

「ユーシャ……。…!?」


 簡潔に告げられた答えをオウム返ししていたコウメは、理解した瞬間に、ガシッとシシツキの胸倉を掴んだ。


「どういうことなんだい!?」

「ぐえっ…なんで俺…」

「ちょっとコウメさん!」

「説明するから、納得するまで話すから、先生を離してください!」


 やんのやんのと結局空が白んでくるまで、3人はコウメに説明をしたのだった。



「ふぁ…おはよーう…。なんで先生は、そんなに疲れてるん?」

「あ、ああ…おはよう。気にしないで」


 よろよろと寝不足の体を起こしたシシツキは、何事も無かったかのように、せっせと朝の準備をする3人に恨みがましい目を向けた。

 ちなみに、シシツキ以外は1日位寝なくても大丈夫な体の造りをしている。


「先生、スープ食べますか?」

「うん、頂くよ」


 はぐはぐとアイカから受け取ったスープを食べるシシツキに、アイカは問うた。


「で、先生、次の目的地はどこですか?」

「ああ。次は、王都に帰るんだ」


 ちょっと厄介事と、付け加えられたが、この場にいる全員が、それを厭わない。


「王都かい。楽しみだねぇ」

「先生、王都って、どこなん?ここから遠いん?」

「久しぶりの王都ですね」

「あー…部屋掃除しないと…」


 こうして、賑やかになった一行は、王都へ向けて出発した。


次週は、カレンサイドからお送りします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ