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先生は勇者と共に…  作者: 朱音
第2章
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救出と言うより…


シキ達がきたという、打ち合わせなしの合図が鳴り響いたのは、シシツキが目を覚ましてから1時間半を過ぎない頃であった。

天井の方からドカンという凄まじい爆発音がしたことから、ああ、来たのだなぁと判断したのだが。


ちなみに、この爆発音についてだが、


「…アイカ、それは?」

「ちょっとそこの家を吹き飛ばす位の、竜巻を凝縮したものです」

「はぁ…?いや、ちょっとお待ち。そんなもの投げたら…!!」

ドカーン。

「あら、すみません。聞こえませんでしたわ」

「………」


と、投げ込まれたものである。


アイカの言う通り、目の前の、ちょっとした豪邸だけが半壊している。

そして、その瓦礫の上では、呆然とする人々が、見張りがなぎ倒された正門…つまり、3人へと注がれる。

その視線が、気狂いを見るような目なのはご愛嬌という所だろう。


「人は殺してしまうと、後が面倒くさいので、家だけ壊しました」

「あ、あそこに見えている本棚を動かすと、地下への道が現れる」

「…そうか」


もはや、突っ込む気力すら無くしてしまったコウメは、乾いた笑みを浮べた。

笑うしかねぇと、いう事か。


そんな呑気な3人の前に、全身を金色でゴテゴテに飾った、太った商人が怒りながら現れた。

金の豚という形容詞がピッタリとハマる商人は、前々から、奴隷商人の疑惑がかかっていた。


「貴様ら、何故こんなことをした!?」

「何故?心当たりが無いとは言わせませんよ?」


アイカの静かな怒りが、瞳に凍え死ぬ様な冷たい色を灯す。

シキからは、怒りのあまり、背後に鬼が見えそうだ。

それをみた商人は、ヒッ!と首を絞められたような哀れな声を出した。


しかし、数の有利を思い出したのか、ニヤリと唇の端を歪めた。


「たった3人で、どうする気だ?ワシが、なんの後ろ盾も無いと思っておるのか?おい!傭兵共!!コイツらを叩きのめせ!!」

「傭兵って、こいつらの事?」


商人の背後、先ほどシキが指し示していた本棚が、ガラリと音を立てて、開かれる。

そこから、無傷のシシツキとシキョウが、両手に傭兵と思しき人物を片手ずつで引きずって出てきた。


その後からは、青い顔をした、捕まっていた人々がゆっくりと出てくる。

皆表情は一貫して、この非常識がとシシツキとシキョウに語りかけていた。

こころなしか、コウメと表情が共通しているように思える。


「な、な、どうやって出てきた!?あの檻は、鉄製で、魔法を封じる結界をしてあったのだぞ!?」

「あんな鉄格子、蹴り入れたら一発やったで~」


のほほんと商人に告げたのは、ケロッとした顔をしたシキョウだ。

雪の妖精の様な愛らしい顔に似つかなく、両手に傭兵の襟元を掴んで引きずって来る様は、ある意味ホラーだ。


それを見て、商人はヒステリックに叫んだ。


「番犬、何をしている!?さっさとワシを助けろ!!!然もなくば、貴様の妹を殺すぞ!!」


その商人の首にヒタリと冷たい物が当てられた。

商人はその感覚に、ピタリと口を噤んで、そっと後ろを振り向いた。

そこにいたのは、相変わらず黒ずくめの格好をしている、番犬である。

その瞳には、濃い殺気に満ちている。


「やっと、解放されたぞ、このクソ野郎がっ…」


商人は、それだけで泡を吹いて気絶しそうであったが、番犬はそこまで優しく無かった。

気絶しかけると、容赦なく頬を叩き、覚醒させる。


「てめぇのせいで、妹達がどんな思いをしたと思ってる。…詫び?金?そんなの要らねぇよ」


そう言いつつ、商人を殴り飛ばす番犬は、どう見てもやりすぎだが、誰も止めない。


「…止めなくていいのか?」

「殺すまではしないし、大丈夫だよ。それより、その辺に転がっている人達一纏めにして」

「分かりました」


イマイチ状況が飲み込みきれていないコウメは、オロオロと番犬とシシツキを交互に見ている。


当たり前だが、奴隷商人と事を構えるとなると、こんなに生易しいものでは無い。

当然ながら、命の覚悟を持ってするものだ。


「今回は、そこの番犬が俺に助けを求めてきたこと、初動で敵が飲み込みきれていない自体を作り出した事、あとはシキョウと俺が中で暴れ回れたから、こんなにスムーズに終わったんだよ」


元シキョウの今後を思えば、潰しておいた方が良かったし、渡りに船だった。と宣うシシツキに、非常識なやつめとコウメは呟きつつ、辺りの惨状を見回した。


「で、これはどう収集を、つけるつもりだい?」

「とりあえず、全員憲兵に突き出したら、俺達は街を出るよ」


いわゆる、最低限の事をして、その他が面倒臭いので、逃げるという事か。

仕方ないとコウメは自身のあまり多くない荷物を持った。


「あれ、コウメも来るの?」

「当たり前じゃないか。あたしだけ残って、後始末を押し付けられちゃたまらないからねぇ。しばらく、一緒に旅しようじゃないか」


開き直ったコウメが、やけに清々しい表情を向けてくるのを、シシツキは少し申し訳なく思いながら、右手を差し出した。


「じゃあ、これからもよろしく」

「こちらこそ」


握手は、固く交わされた。

駆け足のような気がしますが、おいおい説明します。

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