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先生は勇者と共に…  作者: 朱音
第2章
35/65

救出へ

遅くなってしまって申し訳ないです。

お詫びと言ってはなんですが、本日は二話更新となります。

 

 シシツキは、ヒンヤリとした空気が頬を撫でるのを感じて、目を覚ました。

 6畳くらいの大きさの檻の中に、シシツキを含め、7人が詰め込まれていた。


「ふぁっ…。よく寝た…」


 のんびりと伸びをしようとしたシシツキは、持ち上げた腕が重いことから、手錠がかけられている事を認識した。

 重いと、顔を顰めるシシツキを、檻の中の人々は目を丸くして見ている。


 なんて呑気なんだ。

 それが、全員に共通した意見だろうか。

 奴隷商人に捕まったものは、例外なく絶望の表情を浮かべるものだ。

 もしかして、この青年は、阿呆なのか。


 その失礼な視線を正確に感じ取ったシシツキは、不満そうに胡座をかいて、頬杖をついた。

 その音に合わせて、ジャラリと鎖がなるが、シシツキはそれを気にするそぶりを見せない。


「何か言いたいことがあるなら聞くよ?」


 のんびりとした様子のシシツキに、毒気というか、呆気に取られた檻の中の人々は、一瞬、絶望を忘れ去って素で質問をした。


「「「状況は理解出来てる(ます)?」」」

「…揃いも揃って、失礼だね。状況くらい把握してるよ。此処は、奴隷商人の拠点でしょ?」


 見事なユニゾンを見せつけられたシシツキは、ゲンナリとした。

 そんなに馬鹿に見えるのか。

 シシツキとて、何もなくこんなに落ち着いている訳では無い。


 シシツキの根本にはこんな考えがある。


 きっと、シキが目印をくっつけてるだろう…。


 過去に何度かあった、シシツキの迷子やシシツキの迷子等々、主にシシツキが迷子になった事なのだが、その時迅速にシシツキを見つけ出したのが、シキだ。


 シキ曰く、どこに居ても分かるように目印を付けています。とのこと。

 しかも、霊力で作られたそれは、魔力を無効化する結界の中にいても、効果を受け付けないため、現在も健在であると思われる。


 つまるところ、たどり着く結論は一つ。


「多分、怒り狂いながらこっちに向かっているだろうな…」


 上手くコウメがストッパーをしてくれるといいんだけど。


 シシツキの切実な願いは、まさに、コウメに届かんとしていた。



 シシツキとシキョウが、番犬と相対していた頃、シキ達はダンジョンから帰宅している途中であった。

 シキ、アイカ、コウメの3人は、何時ものように、のんびりとダンジョンから、帰っていたのだが、突然シキがピタリと足を止めた。


「…?どうした?」

「しっ、静かにして!」


 集中するように目を閉じたシキの異変に疑問を思ったコウメは、アイカに助けを求めたが、アイカも真剣な顔をして、こちらを見ない。

 それどころか、シキとコウメが理解できない会話を繰り広げ始めた。


「どうでした?」

「やっぱり、予想通り。場所は追跡済みだから、何時でも追えるよ」


 シシツキこの2人は、異常に仲が悪いだけに、このように大人しく話している内容が、シシツキ絡みの事だとわかる。

 コウメは、しかしと首をかしげた。


「何があったんだい?あたしにも説明しておくれ」


 シキとアイカは、ちょっと間を空けて、アイコンタクトをした後、ひとつ頷いた。


「緊急事態だから、仕方ない。今から話すことは、本当の事だから。そこだけ理解して聞いて」

「わ、わかった」


 むしろ有無を言わさない様なシキの迫力に、タジタジとしつつ、コウメは一つ頷いた。


「先生が、奴隷商人に捕まった。ついでにシキョウも」


 間髪入れずに告げられた言葉に、コウメは唖然とした。

 理解する云々以前に、分からないことが多すぎる。


「ちょっと待っとくれ。一体それはどうやってわかったんだい?」

「先生がどこにいるか分かるように、目印を付けておいたんだ。魔力みたいなもので作ったものだから、術者の僕には、先生の位置がリアルタイムで、分かる様になってる」


 それこそ、嘘のような事だが、シキの瞳が、嘘を言っていないと雄弁に語っている。

 コウメは、緊急事態であると雄弁に語っている雰囲気を読んで、ここで細かいことを追求するのを諦めた。


「詳しい事は、後から説明して貰うからな。それで、奴隷商人の場所は?どうする気だい?」

「それはもちろん、助けるに決まってる」

「もちろん。コウメさんは、先に帰宅して貰って構わないですよ」


 アイカがサラリと告げたことに、コウメはムッと眉を顰めた。


「バカいうんじゃないよ。親しい者が危険にさらされているのなら、あたしだって助けたいに決まってるだろ」


 コウメの怒気混じりの強い口調に、アイカはひとつ頷いた。

 それを、了承を捉えたコウメは、案内すると駆け出したシキの後を追いかけた。


「場所は?そもそも計画は?」

「先に、宿を引き払って、その後突撃します」

「街を出るのかい?」

「ええ、もちろん」


 アイカの、先生は騒がしいのがお嫌いですものと、どこまでもシシツキ中心の考えに、コウメはガックリと肩を落とした。

 そして、それに同意をするシキもシキなのだが。


「いや、そもそも、あたし達だけじゃ、他の人達も助けられない。ほかの冒険者にも声をかけるべき…」

「問題ないです。小さな拠点だからか、檻の数は2箇所しかないし、それぞれ場所も近い。一気に突撃するから大丈夫」

「しかし、シシツキが敗れる程の強者がいるのだろ?それこそ…」

「それこそ、大丈夫です」


 どこまでも平行線を辿る会話に、コウメは説得を諦めた。

 2人に、何を言ったところで、止まりはしないだろう。

コウメはやれやれと苦笑した。


 シシツキの、願いが潰れてしまった瞬間である。


「それより、シキョウは、元々奴隷だったんだろ?一度逃げ出したのなら、危ないんじゃないか?」

「…ああ、あの子なら大丈夫でしょ」


 シキとアイカは、微妙な顔をして、大丈夫という太鼓判を押した。

 若干どころか、かなり触れて欲しくなさそうである。


 実力者の2人がそういうのなら大丈夫なのだろうと、自身を納得させたコウメは、後から諸々をシシツキに問い詰めることを決意し、更にスピードを上げて、街へと入って行ったのだった。


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