すべての姉妹の故郷
リュミエールの周囲を取り囲む、無数の古代宇宙船。
きずなの船も、銀河監視船団も動けずにいた。
通信画面に映った人物が、静かに話す。
「ここは、すべての姉妹の故郷。」
悠真が尋ねる。
「あなたは誰ですか?」
「私の名前は――エレナ。」
「リュミエールの案内人です。」
---
何千年前の約束
エレナが施設の入口を開く。
悠真たちは船を降り、リュミエールの地表へ向かった。
そこには、巨大な建物があった。
建物の壁には、無数の星の名前が刻まれている。
地球。
月。
アステリア。
ネオラ。
ネア。
ミラージュ。
ノクタ。
セレス。
エルピス。
そして、まだ誰も知らない星々。
あかりが驚く。
「こんなにたくさん……。」
エレナが微笑む。
「ここでは、昔から『姉妹』という言葉を使っていました。」
「血のつながった家族だけではありません。」
「遠く離れた世界同士を、姉妹と呼んだのです。」
---
最初の姉妹レンタル
エレナは古い部屋へ案内する。
そこには、二つの椅子が置かれていた。
椅子には、
アリア
ミナ
と刻まれている。
悠真が驚く。
「ここが……二人の始まり?」
「はい。」
エレナが答える。
数千年前。
まだ星同士の交流が珍しかった頃。
アリアとミナは、ここで初めて出会った。
二人は違う星から来た。
言葉も、食べ物も、文化も違った。
それでも一緒に過ごすうちに、少しずつ相手を理解していった。
そして生まれたのが――。
姉妹レンタル。
---
あかりが笑う。
「最初は、本当に二人だけだったんだ。」
エレナが頷く。
「はい。」
「でも二人は、こう言いました。」
エレナが古い記録を再生する。
アリアの声。
『二人で終わらせない。』
ミナの声。
『次は四人。』
アリア。
『その次は八人。』
ミナ。
『いつか、すべての星が姉妹になれるといいね。』
---
しかし、失敗もあった
映像が変わる。
交流する星が増えていく。
十。
百。
千。
しかし、問題も起きた。
文化の違いによる誤解。
通信の混乱。
「自分たちの方が正しい」という争い。
そして、交流を嫌がる人々もいた。
エレナは言う。
「だから、リュミエールの人々は一つの決まりを作りました。」
壁に大きな文字が浮かぶ。
『姉妹になることを、誰にも強制しない。』
悠真は静かに頷いた。
「今までの話と全部つながってる。」
---
なぜリュミエールは消えたのか
悠真が尋ねる。
「でも、どうしてリュミエールは地図から消えたんですか?」
エレナは少し悲しそうな顔をした。
「消えたのではありません。」
「隠れたのです。」
「なぜ?」
「銀河全体が大きくなりすぎたからです。」
リュミエールは、すべての星を一つの場所につなぐ役割を終えた。
そこで、リュミエールの人々は決めた。
『中心にならない。』
「私たちは、どこか一つの星が銀河の中心になることを望みませんでした。」
「だから、リュミエールを地図から外したのです。」
---
グレンが驚く。
「では、銀河監視船団の記録が途切れていたのも……。」
エレナが頷く。
「あなたたちが探していたのは、場所ではありません。」
「思想です。」
グレンはしばらく黙っていた。
そして、小さく笑った。
「なるほど。」
---
新しい問題
その時。
リュミエール全体に警報が鳴り響いた。
ピ――――ッ!
ミナが端末を確認する。
「外部から、大量の通信があります!」
「どこから?」
「銀河中です!」
画面には無数の星が表示された。
エルピス。
エルピス・ノア。
地球。
月。
そして、まだ知らない星々。
すべての「みんなの家」から通信が届いている。
---
一つ目。
『私たちも参加したい。』
二つ目。
『姉妹の輪について教えてください。』
三つ目。
『遠い星の人たちと話してみたい。』
次々と通信が増える。
リュミエールのシステムが告げる。
『接続要求――一万二千件。』
全員が驚く。
ひかるが言った。
「一万二千!?」
ミナがさらに確認する。
「増えています!」
『二万件。』
『五万件。』
『十万件。』
---
悠真は笑った。
「すごいな。」
あかりが言う。
「銀河中の人たちが、姉妹の輪を知ったんだね。」
エレナも微笑む。
「そうです。」
「でも、ここからが本当の始まりです。」
---
新しい「みんなの家」
リュミエールの中央に、巨大な装置が起動する。
エレナが宣言する。
「今日からリュミエールは、再び『みんなの家』になります。」
「ただし、昔とは違います。」
「一つの場所に集めるのではなく――。」
無数の星に光が飛んでいく。
「すべての星に、『みんなの家』を作ります。」
悠真たちは顔を見合わせる。
それは、今まで作ってきたものの集大成だった。
---
そして最後に、エレナが悠真たちへ一つの箱を渡す。
「これは?」
箱には、古い文字でこう書かれている。
『次の姉妹たちへ』
エレナが笑う。
「アリアとミナが残した最後の贈り物です。」
悠真が箱を開けようとした瞬間――。
箱の中から、まぶしい光が漏れ出した。
そして、聞いたことのない声が響く。
『次の旅では、星ではなく――時間を越えてください。』
全員が驚く。
「時間……?」
箱の中には、一つの小さな時計が入っていた。
その針は普通とは逆方向に動いている。
そして表示された数字は――。
『10000年前』
悠真たちは顔を見合わせる。
どうやら次の旅は、銀河の彼方ではない。
遥か昔の世界へ向かう旅になりそうだった。




