黒い領域の住人
銀河群ネットワークの外側。
そこには、星の光さえほとんど届かない巨大な黒い領域が広がっていた。
画面に表示された言葉。
『私たちはあなたたちとは違います。』
悠真は慎重に答えた。
「違っていても大丈夫です。」
「まずは、話してみませんか?」
しばらく返事がない。
そして――。
『本当に?』
たった三文字の返事だった。
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フィオナが画面を見つめる。
「昔から、この場所には誰も近づいてはいけないと言われていました。」
ルナが尋ねる。
「何か怖い伝説でもあるの?」
「はい。」
フィオナは古い記録を開いた。
そこには、黒い領域についてこう書かれていた。
『光を持たない世界。』
『外の世界との交流を拒んだ人々が暮らしている。』
しかし、それ以上の記録は残っていなかった。
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悠真は通信を続けた。
「あなたたちは、どんな世界に住んでいるんですか?」
返事が届く。
『私たちの世界には、昼と夜がありません。』
『星も見えません。』
『でも、私たちはここで暮らしています。』
あかりが尋ねる。
「じゃあ、どうやって明るくしているの?」
『光は使いません。』
「え?」
『音を使います。』
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画面に奇妙な波形が表示された。
低い音。
高い音。
いくつもの音が重なっている。
ミナが解析する。
「これ……通信だけじゃありません。」
「音そのものが、町の設備を動かしているんです。」
カナが驚く。
「音で電力を作っている?」
「近い仕組みですね。」
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黒い領域の代表が名乗った。
名前は――。
ノアム。
ノアムの姿は、地球人とはかなり違っていた。
輪郭がぼんやりしていて、身体そのものが淡い影のように見える。
けれど、声は穏やかだった。
「私たちの星では、昔から『違うもの』を怖がる習慣がありました。」
「だから、外の世界との交流をやめました。」
「でも……。」
ノアムは少し間を置く。
「最近、あなたたちの通信を見つけました。」
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あかりが笑う。
「じゃあ、今日はお互いに一つずつ紹介しようよ。」
ノアムが尋ねる。
「何を?」
「大切なもの。」
地球からは、家族や友達と過ごした写真。
月からは、地球の映像。
アステリアからは、みんなの輪の木。
ネオラからは、星の光。
ネアからは、復活した広場。
ミラージュからは、浮遊都市。
そして第六の世界からは、青い海。
最後にノアムが見せたものは――。
音。
静かな音楽だった。
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その音を聞いた瞬間、みんなが黙った。
悲しいようで、優しい。
遠い星の夜を思わせる音だった。
あかりが言う。
「きれい。」
ノアムが驚く。
「怖くない?」
「うん。」
「私たちには、とても素敵に聞こえるよ。」
ノアムはしばらく黙っていた。
そして初めて、笑った。
「……ありがとう。」
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交流会の最後。
悠真が言った。
「僕たちは、あなたたちと同じになる必要はないと思う。」
「違ったままでいい。」
「でも、違いを知ることはできる。」
ノアムが答える。
「それなら……私たちも、『みんなの家』を作ってみたい。」
画面の向こうで、黒い領域に小さな光が生まれた。
いや。
それは光ではなかった。
一つの音だった。
ポーン……。
音が広がる。
すると、黒い領域のあちこちから、次々と音が返ってくる。
まるで巨大な合唱のようだった。
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銀河群ネットワークに、新しい表示が追加される。
『ノクタ――接続準備中』
ノアムたちの世界の名前が、初めて明らかになった。
ノクタ。
光ではなく、音でつながる世界。
あかりが嬉しそうに言う。
「また一つ、違う『みんなの家』ができたね。」
悠真も頷く。
「うん。」
「でも、まだ完成じゃない。」
「みんなで作っていくんだ。」
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その瞬間。
銀河群ネットワーク全体が大きく揺れた。
警告。
『新たな通信を検出。』
今度は、ノクタからでもない。
地球からでもない。
銀河群ネットワークのさらに外側からだった。
画面いっぱいに、巨大な文字が浮かぶ。
『銀河間交流計画――第零番。』
ミナが息をのむ。
「第零番……?」
そして、古い記録が自動的に再生された。
そこには、これまで誰も知らなかった施設が映っていた。
場所は――。
銀河と銀河の間。
施設の名前は、
『最初の宇宙家族』
悠真たちは顔を見合わせる。
まだ誰も知らない、姉妹レンタルの始まり。
その秘密が、ついに姿を現そうとしていた。




