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星の名前

未接続だった星との通信が、少しずつ続くようになった。


最初は短いメッセージだけ。


『今日はどうでしたか?』


『地球には本当に桜がありますか?』


『月には人が住んでいるのですか?』


悠真たちは、一つ一つ丁寧に答えた。


やがて、通信相手から一つの質問が届く。


『あなたたちの星には、名前がありますか?』


あかりが答える。


「もちろん。」


「私たちが住んでいる星は、地球です。」


すると、しばらく返事がなかった。


そして――。


『私たちの星にも、昔は名前がありました。』


---


翌日。


リラが再び銀河中央へやってきた。


今度は一人ではない。


少し離れたところに、二人の大人が立っている。


リラが紹介する。


「こちらは、私の先生のセイン。」


「そして、こちらは町の代表のミラ。」


二人とも、まだ少し緊張している。


セインが言った。


「昨日、リラから話を聞きました。」


「あなたたちは、私たちを無理に変えようとはしなかった。」


悠真が笑う。


「それが一番大切だと思っています。」


ミラが尋ねる。


「あなたたちの『姉妹レンタル』とは、そういうものなのですか?」


あかりが答える。


「うん。」


「一緒に過ごしてみて、合わなかったら無理をしない。」


「でも、話してみることで分かることもある。」


---


するとリラが突然、古い石板を取り出した。


「これを見てください。」


石板には、見たことのない文字が刻まれていた。


ミナが解析する。


「これは……古い言葉ですね。」


少し時間をかけて翻訳すると――。


『ネア』


という文字が浮かび上がった。


セインが驚く。


「それは……。」


「私たちの星の、昔の名前です。」


---


ネア。


それが、この星の本当の名前だった。


セインが説明する。


「昔、ネアには多くの町がありました。」


「星の外とも交流していました。」


「しかし、ある事件をきっかけに、外との交流をやめました。」


ミラが続ける。


「その後、星の名前さえ使われなくなったんです。」


「だから今では、ただ『この星』と呼んでいます。」


悠真は石板を見る。


「名前をなくした星……。」


---


リラが小さな声で言った。


「私は、もう一度この星を『ネア』と呼びたい。」


セインが驚く。


「リラ……。」


「だって、昔の人たちはこの星を大切にしていたんでしょう?」


「だったら、名前を取り戻してもいいと思う。」


ミラはしばらく考えた。


そして――。


「そうかもしれません。」


---


その日の交流会では、ネアの人々が昔の写真や記録を紹介してくれた。


古い町。


大きな広場。


星を観測する塔。


そして、中央にあった建物。


そこには、昔の文字で――。


『みんなの家』


と書かれていた。


あかりが驚く。


「ネアにも、昔からあったんだ。」


リラが笑う。


「だから、もう一度作りたい。」


---


ネアの人々は、少しずつ準備を始めた。


古い建物を掃除する。


壊れた通信装置を修理する。


昔の記録を整理する。


そして、広場に新しい看板を立てる。


『ネア・みんなの家』


完成した看板を見て、リラが笑う。


「これで、また始められるね。」


---


その夜。


ネアから正式な通信が届いた。


『私たちは、もう「未接続の星」ではありません。』


『私たちの星の名前は、ネアです。』


世界ネットワークの地図が更新される。


ネア――接続完了。


新しい光が、銀河に加わった。


地球。


月。


アステリア。


ネオラ。


ネア。


五つの星がつながった。


---


しかし、その直後。


ネアの古い観測塔が突然反応した。


ピィィィン……。


セインが慌てて駆け寄る。


「これは……昔の通信装置だ!」


画面に、数百年前の記録が表示される。


そこには、見知らぬ宇宙船。


そして、その船から送られた一文。


『銀河の外側にも、仲間がいる。』


悠真が目を見開く。


「銀河の外……?」


さらに航路が表示される。


銀河中央から、はるか彼方へ伸びる一本の道。


その先に――。


『第六の世界』


という文字が浮かび上がった。


あかりが笑う。


「また新しい場所が出てきたね。」


ひかるも頷く。


「今度は、銀河の外かぁ。」


悠真は苦笑した。


「姉妹レンタルって、宇宙の果てまで行くのかな。」


ネアの人々と新しいつながりを作ったばかりなのに――。


今度は、銀河そのものを越える旅が始まろうとしていた。

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