世界姉妹レンタル計画
台湾から帰国した悠真たちを待っていたのは――。
大量の依頼書だった。
机の上。
棚の上。
床の上。
受付カウンターの上まで。
「……これ、全部依頼?」
あかりが呆然とする。
理事長がうなずく。
「はい。」
「現在、世界中から届いている依頼は――」
理事長が資料を見る。
「127件です。」
「ひゃ、127件!?」
ひかるが目を丸くする。
---
世界中の「みんなの家」から、姉妹レンタルをやってみたいという声が届いていた。
日本。
台湾。
イタリア。
アフリカ。
南米。
エマの島。
北の村。
さらに、まだ活動したことのない町からも依頼が届いている。
しかし、問題が一つ。
「127件を、私たちだけで回るのは無理だよね……。」
あかりが言う。
悠真も苦笑する。
「毎日飛行機に乗っても追いつかない。」
そこで、ひかるが突然手を挙げた。
「だったら――。」
「私たちが全部やらなくてもいいんじゃない?」
---
会議室に世界中の仲間たちが集まった。
リン。
ルカ。
サミ。
ルシア。
エマ。
レオ。
そして、これまで姉妹レンタルに参加した美月、結衣、凛、花音、葵、千夏、三姉妹のメンバー、楓、美咲、七海、莉子たち。
あかりが説明する。
「今までは、私たちが『姉妹レンタル』を届けに行っていました。」
「でも、これからは違います。」
スクリーンに新しい仕組みが映し出される。
『世界姉妹レンタル・リーダー制度』
それぞれの地域から、姉妹レンタルを運営するリーダーを育てる。
そして、地域同士で助け合う。
---
美月が手を挙げる。
「私、やってみたいです。」
結衣も続く。
「私も!」
台湾の十人姉妹チームも手を挙げる。
「私たちも!」
エマも笑顔で言う。
「島からも参加します。」
レオも通信画面から答える。
「北の村も!」
次々と手が上がる。
悠真はその光景を見て笑った。
「もう、僕たちだけの活動じゃないんだな。」
---
数週間後。
世界各地で、新しい姉妹レンタルが始まった。
台湾では十人姉妹チームがイベントを開催。
イタリアではルカが地域の子どもたちと交流会を企画。
南米ではルシアが「みんなの家」の庭づくりを始める。
エマの島では、通信塔を使って遠くの島との交流会。
北の村では、オーロラを見ながら世界中の仲間とオンライン交流。
そして日本では――。
美月と結衣が、新しく参加する人たちに説明していた。
「姉妹になる必要はありません。」
美月が言う。
「一緒に過ごして、相手を知ることから始めればいいんです。」
結衣も笑う。
「仲良くなる方法は、一つじゃないからね!」
---
ある日。
悠真のもとへ一通の手紙が届いた。
送り主は、世界姉妹レンタル計画に参加したばかりの小さな町。
そこには、こう書かれていた。
『私たちの町にも、初めて「みんなの家」ができました。』
そして最後に――。
『今度は私たちが、別の町を助けたいです。』
悠真は手紙を読み終えると、笑顔になった。
「これだ。」
あかりが聞く。
「何が?」
「姉妹レンタルの本当の意味。」
「助けてもらうだけじゃなくて――。」
ひかるが続ける。
「今度は、自分たちが誰かを助ける。」
悠真はうなずいた。
「そう。」
---
その夜。
世界地図には、新しい光が次々と灯っていった。
127件だった依頼は、いつの間にか――。
300件。
さらに――。
500件。
世界中で「姉妹レンタル」を始めたい人が増えている。
しかし、その中に一つだけ、他とは違う依頼があった。
画面に表示された文字。
『月で姉妹レンタルを開催したい。』
あかりが固まる。
「……月?」
ひかるも画面を見る。
「月って、あの月?」
悠真はしばらく黙っていた。
そして――。
「いやいや、さすがに無理でしょ。」
ところが理事長は、真剣な顔で資料を取り出した。
「それが……。」
「この依頼、宇宙開発施設から届いています。」
三人は顔を見合わせる。
世界をつないだ次に待っていたのは――。
宇宙からの姉妹レンタル依頼だった。




