海辺の約束
夏休み最初の日曜日。
「今日は海だー!」
さくらが元気いっぱいに両手を広げる。
「朝からテンション高いな。」
悠真が笑うと、ひまりは麦わら帽子を押さえながら小さくつぶやいた。
「……海、久しぶり。」
美咲も大きな浮き輪を抱えて駆け寄ってきた。
「みんな、お待たせ!」
四人は青く澄んだ海へ向かった。
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午前中は砂浜でビーチバレー。
「お兄ちゃん、レシーブ!」
「任せろ!」
ところが勢い余って転んだ悠真は、そのまま砂浜へ。
「いてて……。」
さくらは大笑い。
「もう、お兄ちゃんってば!」
ひまりも思わず吹き出した。
「……ぷっ。」
「今、笑ったな?」
「笑ってない。」
「いや、絶対笑った!」
珍しくひまりが楽しそうに笑う姿に、美咲もほっとした表情を浮かべる。
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午後は海で泳ぐことに。
そのとき、小さな男の子の悲鳴が聞こえた。
「助けて!」
浮き輪が沖へ流され、男の子も波にのまれそうになっている。
悠真は迷わず海へ飛び込んだ。
「悠真!」
美咲が叫ぶ。
波は予想以上に強い。
それでも悠真は男の子のもとへたどり着き、抱きかかえて岸へ戻った。
浜辺から大きな拍手が起こる。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
男の子は涙を流しながら頭を下げた。
悠真は照れくさそうに笑う。
「無事でよかった。」
その様子を見ていたひまりは、小さくつぶやく。
「……やっぱり。」
「この人は、誰かを放っておけない。」
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夕暮れ。
四人は砂浜に座り、沈む夕日を眺めていた。
さくらが静かに言う。
「ねえ、お兄ちゃん。」
「もし、この夏が終わったら……私たちがいなくなっても、笑っていられる?」
悠真は驚いた。
「急にどうした?」
「なんとなく聞いてみたかっただけ。」
悠真は少し考えてから答えた。
「きっと寂しい。」
「でも、君たちと過ごした時間は忘れない。」
その言葉に、さくらは優しく微笑んだ。
「ありがとう。」
ひまりは黙ったまま、夕日に染まる海を見つめていた。
その胸には、少しずつ大きくなる想いがあった。
そして、その夜。
運営本部から新たな通知が届く。
『最終選択まで、残り14日。対象者の恋愛感情を確認できた時点で、契約は最終段階へ移行します。』
その通知を見たさくらは静かにスマートフォンを閉じる。
「……もう、時間がない。」
一方、悠真はまだ知らなかった。
自分の心が、少しずつ「家族」ではない特別な感情へ変わり始めていることを。




