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姉妹レンタルの原点

日本へ戻った悠真たちは、白石誠一の古い地図を手に、山あいの町へ向かった。


そこは、現在の「姉妹レンタル」が始まるずっと前から、誠一が活動していた場所だった。


「ここに来るのは……何年ぶりだろう。」


誠一は町を見渡した。


「昔は、この町にも小さな交流施設があったんだ。」


悠真たちは古い建物の前で立ち止まった。


看板には、かすかに文字が残っている。


『みんなの家・第一号』


あかりが驚く。


「ここが……始まりの場所?」


「そうだ。」


誠一はうなずいた。


---


建物の中は古びていた。


しかし壁には、たくさんの写真が飾られている。


子どもたち。


お年寄り。


地域の人たち。


そして、その中には若い頃の誠一とアントニオの姿もあった。


ひかるが一枚の写真を見つける。


「この人……。」


写真には、幼いあかりとひかるによく似た二人の女の子が写っていた。


「誰?」


誠一は少し驚いた。


「これは……昔ここに通っていた姉妹だ。」


「二人は血のつながった姉妹ではなかった。」


あかりとひかるが顔を見合わせる。


「え?」


---


誠一は昔の話を始めた。


「当時、この町には一人で暮らす子どもたちや、家族と離れて暮らしている子どもたちがいた。」


「そこで私たちは、子どもたち同士が支え合える仕組みを作ろうとした。」


「一緒に遊ぶ。」


「一緒に勉強する。」


「困った時は助け合う。」


「その活動が、やがて『姉妹レンタル』という名前になった。」


ひかるは驚いた。


「レンタルって……物を貸す意味じゃなかったんだ。」


誠一は笑う。


「そう。」


「『一緒に過ごす時間を分け合う』という意味で使ったんだ。」


---


建物の奥には、小さな部屋があった。


壁には大きな世界地図。


その前に、古い机が置かれている。


机の引き出しには、アントニオから誠一へ送られた手紙が残されていた。


誠一が読み上げる。


«『いつか、この小さな活動を世界中につなげよう。』


『どこかの町で誰かが困っていたら、別の町の誰かが助ける。』


『そうすれば、世界そのものが一つの家になる。』»


悠真は静かに地図を見る。


「これが……今やろうとしていることなんですね。」


「そうだ。」


誠一は答えた。


「でも、私は途中で何度も諦めそうになった。」


「君たちが続きを作ってくれたんだ。」


---


その時、あかりが机の裏に小さな箱を見つけた。


箱には、古い文字でこう書かれていた。


『未来の姉妹たちへ』


「開けてもいい?」


誠一は少し驚いた。


「……私も知らない箱だ。」


あかりが慎重に蓋を開ける。


中には、二つの小さなバッジが入っていた。


一つには**『つなぐ』**。


もう一つには**『支える』**。


そして、その下には一枚の手紙。


«『この活動を受け継ぐ人へ。』


『あなたが誰かを助ける時、その人もいつか誰かを助ける。』


『その輪を、世界のどこまでも広げてほしい。』»


あかりはバッジを手に取った。


「私たちが、受け継いでいいのかな。」


ひかるが微笑む。


「うん。」


悠真も笑顔でうなずいた。


「みんなで受け継ごう。」


---


その日の夕方。


古い「みんなの家・第一号」に、再び明かりが灯った。


町の人たちが少しずつ集まってくる。


昔ここで過ごした人も訪れた。


誠一は静かにその光景を見つめていた。


「長かったな……。」


悠真が隣に立つ。


「でも、終わってません。」


誠一は笑う。


「ああ。」


「これからだ。」


---


夜。


世界各地の「みんなの家」がオンラインでつながった。


台湾のリン。


イタリアのルカ。


アフリカのサミ。


南米のルシア。


日本の仲間たち。


そして、世界中の子どもたち。


スクリーンいっぱいに笑顔が映る。


悠真は言った。


「今日から、このネットワークを正式に始めよう。」


みんなが拍手する。


その瞬間、世界地図に新しい光が一つ灯った。


そして、次々と別の場所にも光が灯っていく。


日本から始まった小さな活動は、今や世界へ広がっていた。


しかし――。


画面の端に、まだ一つだけ黒く残っている地域があった。


そこには、誰も「みんなの家」を作ったことがない。


理事長が静かに言う。


「最後の地域があります。」


「ここだけは、これまで誰も活動を続けられませんでした。」


悠真は地図を見る。


「じゃあ……最後の場所へ行きましょう。」


世界をつなぐ旅は、最終章へ向かおうとしていた。

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