夏祭りと浴衣
土曜日の夕方。
町中がお祭りの提灯で明るく照らされ、人々の笑い声が響いていた。
待ち合わせ場所に現れた悠真は、思わず言葉を失う。
「み、みんな……。」
さくらは淡い桜色の浴衣。
ひまりは青い金魚柄の浴衣。
美咲は紺色に朝顔が描かれた浴衣。
三人とも、いつも以上に魅力的だった。
「どう、お兄ちゃん?」
さくらがくるりと一回転する。
「すごく似合ってるよ。」
「えへへ!」
一方、ひまりは照れくさそうに髪を耳へかけた。
「……べ、別に褒めても何も出ないけど。」
「いや、本当にきれいだよ。」
その一言で、ひまりは真っ赤になってしまう。
美咲も少し頬をふくらませた。
「私には?」
「もちろん、美咲もすごく似合ってる。」
「よかった!」
四人は屋台を回り、金魚すくいや射的を楽しんだ。
射的では、ひまりが見事に一番上の景品を撃ち落とす。
「すごい!」
「……こういうのは得意。」
景品は小さな白いぬいぐるみだった。
ひまりは少し迷ったあと、それを悠真に差し出す。
「……あげる。」
「俺に?」
「べ、別に深い意味はないから。」
その様子を見たさくらと美咲は、思わず笑ってしまった。
やがて夜空に、大きな花火が打ち上がる。
ドーン!
色とりどりの花火が夜空を彩る。
四人は川辺に並んで花火を見上げた。
そのとき、さくらのスマートフォンが小さく震えた。
画面には短いメッセージが表示されていた。
『契約対象者の感情変化を確認。最終審査を開始します。』
「最終審査……?」
さくらの表情が少し曇る。
その様子に気づいた悠真が声をかける。
「どうした?」
さくらは笑顔を作って首を振った。
「ううん、何でもない!」
しかし、その笑顔の奥には、不安が隠されていた。
そして花火大会の帰り道。
人混みの中で、悠真とはぐれてしまったひまりの前に、黒いスーツ姿の男女が現れる。
「朝比奈ひまりさんですね。」
「……誰?」
「『姉妹レンタル』運営本部です。」
「契約に関する大切なお話があります。」
ひまりの表情が、一瞬で真剣なものへと変わった。




