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言葉を越えて

翌朝。


悠真たちは、町外れにある古い児童館を訪れた。


建物は古くなっていたが、窓から差し込む朝日が室内を明るく照らしていた。


「あとは少し掃除をすれば、また使えそうだね。」


さくらがほうきを手に取る。


「よーし、頑張るぞ!」


あかりも元気いっぱいに掃除を始めた。


ひかるは本棚をきれいに拭き、美咲は壊れた机を直す。


ひまりは庭に咲いていた花を手入れし、悠真は入口の看板を新しく作った。


看板には、日本語と中国語でこう書かれていた。


『みんなの家 Welcome!』


---


昼頃になると、近所の子どもたちが興味深そうに集まってきた。


しかし、昨日見かけた青年も現れた。


腕を組み、少し厳しい表情をしている。


「また来たのか。」


リンが紹介する。


「この人はチェンさん。」


「昔、この児童館で子どもたちに勉強を教えていました。」


悠真は笑顔で頭を下げた。


「よろしくお願いします。」


チェンは小さくうなずいたが、表情は変わらない。


「君たちは、そのうち帰る。」


「ここに残るのは私たちだ。」


その言葉に、あかりは少し驚いた。


しかし悠真は穏やかに答えた。


「その通りです。」


「だからこそ、私たちが帰ったあとも続けられる形を、一緒に考えたいんです。」


チェンは何も言わず、その場を去っていった。


---


午後。


子どもたちと一緒に、壁に大きな世界地図を貼ることになった。


「日本はここ!」


あかりが指をさす。


すると台湾の子どもが笑顔で自分の町を指さした。


言葉は違っても、お互いに場所を教え合い、笑い合う。


ひかるは色紙で折った鶴をプレゼントした。


すると一人の女の子が、手作りのしおりをお返しにくれた。


「ありがとう。」


その一言だけは、日本語で伝えてくれた。


ひかるは嬉しそうに微笑んだ。


---


夕方。


チェンは遠くから、その様子を見つめていた。


「子どもたちが……あんなに笑っている。」


リンが隣に立つ。


「あなたも、昔はあそこで笑っていたでしょう?」


チェンは静かに目を閉じた。


「……ああ。」


「また、あの頃の児童館に戻るかもしれないな。」


その時、一人の少年がチェンの手を引いた。


「先生、一緒に遊ぼう!」


チェンは少し照れながら笑った。


「久しぶりだな……その呼び方。」


ゆっくりと、彼は子どもたちの輪の中へ歩き出した。


国や言葉が違っても、人を思いやる気持ちは同じ。


「みんなの家」は、新しい国でも小さな希望の光を灯し始めていた。

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