秘密の図書館!ルミが守り続けた約束
白い空間に現れた光の道。
その先には、ルミが閉じ込められている謎の図書館があった。
「ルミを助けに行こう!」
ユウマが一歩踏み出す。
すると、道の入口に刻まれた文字が青く光った。
**『この道を進む者は、自分が最も信じている仲間の秘密を知ることになる』**
「秘密か……。みんな、何か心当たりはある?」
アヤが仲間たちを見渡した。
「僕はないよ!」とハル。
「私も、みんなに隠していることはないと思うけど……」とナナ。
ソラは腕を組んだ。
「そもそも、秘密を知ることが悪いとは限らないだろ。大切なのは、その秘密とどう向き合うかだ」
「そうだね。僕たちは、何がわかっても仲間でいる。それだけは変わらないよ」
ユウマの言葉に、みんながうなずいた。
七人は光の道を進み始めた。
ところが、数歩歩いたところで、レイの足元に小さな光の文字が浮かび上がった。
**『レイ――最初の約束を破った者』**
「……っ!」
レイが立ち止まった。
「レイ? どうしたの?」
ミオが尋ねる。
「いや……何でもない」
そう答えたレイだったが、その表情は明らかに曇っていた。
ユウマは気づいていた。
けれど、今は無理に問い詰めず、先へ進むことにした。
やがて一行は、巨大な図書館の入口にたどり着いた。
扉には、無数の小さな星が描かれている。
その中央には、ルミのペンダントとよく似た形の紋章があった。
「この紋章……ルミが持っているものと同じだわ」
フィリアが扉に触れた。
すると、扉がゆっくりと開いた。
中には、天井まで届く本棚が並んでいた。空中には本が浮かび、ページをめくる音があちこちから聞こえてくる。
しかし、どの本の表紙にも名前が書かれていなかった。
「ここにあるのは、誰の本なんだろう?」
ナナが一冊を手に取ろうとした。
「待って!」
フィリアが止める。
「この図書館の本は、世界に記録されていない記憶を保管しているの。勝手に開くと、持ち主の記憶が外へ流れ出してしまうかもしれない」
「じゃあ、ルミの記憶もここに?」
「ええ。きっとね」
そのとき、奥の本棚の向こうから声がした。
「みんな……来てくれたんだね」
ルミだった。
ユウマたちは声のした方へ駆け出した。
本棚を抜けた先には、円形の部屋があった。
中央に透明な結晶が浮かび、その前にルミが立っている。
「ルミ!」
ユウマが駆け寄ろうとすると、ルミは手を上げて制した。
「待って。ここから先には、簡単には来られないの」
「どうして? 早く一緒に帰ろうよ!」
ルミは困ったように微笑んだ。
「私がここを離れたら、みんなが忘れている記憶が一気に戻ってしまうかもしれないから」
「それなら、思い出せばいいじゃないか!」
ユウマはまっすぐルミを見つめた。
「忘れていたことがあっても、僕たちはそれを確かめられる。怖いことがあっても、みんなで考えればいいんだ!」
ルミは目を伏せた。
「でも……その記憶の中には、あなたを傷つける真実もあるんだよ」
「それでも、知りたい」
ユウマは一歩前へ出た。
「ルミがずっと一人で抱えてきたことなら、今度は僕たちにも分けてほしい」
しばらく沈黙が続いた。
やがてルミは、小さくうなずいた。
「……わかった。じゃあ、最初の約束を話すね」
ルミが結晶に手をかざすと、部屋の中央に映像が浮かび上がった。
そこには、まだ幼いユウマ、レイ、フィリア、そしてルミの姿があった。
四人は、大きな白い紙を囲んでいる。
紙には、たくさんの世界と、それらを結ぶ道が描かれていた。
幼いユウマが笑顔で言った。
『世界と世界がつながれば、遠くにいる人とも会えるね!』
幼いルミも笑った。
『でも、世界が一つになっちゃったら、それぞれの世界らしさがなくなっちゃうよ』
幼いレイがうなずく。
『だから、行き来できる道を作ろう。行くかどうかは、そこにいる人たちが自分で決められるように』
幼いフィリアが最後に言った。
『じゃあ、私たち四人で約束しよう。どんなことがあっても、世界をつなぐ道を、誰か一人のものにはしないって』
四人は手を重ねた。
『約束!』
映像が消えた。
ユウマは驚きのあまり、言葉を失っていた。
「ぼくたち……本当に、昔から一緒だったんだ」
「そうだよ」
ルミは静かに答えた。
「私は、世界と世界を結ぶ道が壊れないように、境界の記憶を守る役目を引き受けたの。でも、ある日、黒い輪が現れた」
結晶に、黒い輪の映像が映し出された。
『すべての世界を一つにすれば、誰も離れ離れにならずに済む』
そんな声が響いた。
「その考えに反対した私たちは、黒い輪を止めようとした。でも、力が足りなかった」
ルミは両手を握りしめた。
「そこで、私たちは記憶を分けて隠したの。世界をつなぐ鍵の場所を知られないようにするために」
「だから、ぼくたちは忘れてしまったのか……」
ユウマがつぶやいた。
「うん。でも、記憶を分ける直前、レイが私に一つだけ頼んだことがあったの」
全員の視線がレイに集まった。
レイは目を閉じ、深く息を吸った。
「……俺は、ルミに頼んだんだ。もし黒い輪が再び現れたら、俺が何を言っても、すぐには信じないでくれって」
「どうして?」
アヤが尋ねた。
レイは苦しそうに答えた。
「黒い輪を止めるために、俺自身がその力の一部を引き受けることになったからだ。俺の記憶や考えが、いつか黒い輪に影響される可能性があった」
「じゃあ、レイが何かを隠していたのは……」
「みんなを守るためだった。でも、それだけじゃない」
レイはユウマを見つめた。
「俺は、約束を破ったんだ。記憶を分ける直前、ユウマに本当のことを伝えないまま、すべてを任せてしまった」
ユウマは驚いた顔をした。
しかし、すぐに首を横に振った。
「レイ。まだ全部を思い出せていないけど、僕は今のレイと話しているよ。これからどうするか、一緒に決めればいい」
レイは目を見開き、それから小さく笑った。
「……ありがとう、ユウマ」
その瞬間、部屋の奥で警告音が鳴り響いた。
ピィィィィン!
透明な結晶に、ひびが入った。
ルミが振り返る。
「そんな……! 誰かが、この図書館の記録を書き換えている!」
結晶の表面に、見知らぬ文字が浮かび上がった。
**『四人目の約束は、まだ記録されていない』**
「四人目の約束?」
ソラが聞き返す。
「私たちは四人で約束したはずよ」とフィリア。
しかし、ルミの顔色が変わった。
「違う……。四人で約束したのは、世界をつなぐ道のこと。でも、黒い輪が現れる前に、私たちはもう一つの約束をしていたはずなの」
「もう一つ?」
ユウマが尋ねた。
ルミは頭を押さえた。
「思い出せない……。誰と、何を約束したのか……」
結晶のひびが広がり、そこから黒い光が漏れ出した。
そして、光の中から声が響いた。
『その約束を思い出してはいけない』
図書館中の本が、一斉に開いた。
ページには、同じ名前が浮かび上がっていた。
**『???』**
黒い輪が回転し、ルミの足元に黒い影が伸びる。
ユウマはペンダントを掲げた。
「ルミは連れて帰る! 約束のことも、黒い輪のことも、全部みんなで確かめるんだ!」
ペンダントの光が広がり、黒い影を押し返した。
だが、結晶の奥には、まだ誰かの姿が映っていた。
それは、幼いユウマたちの隣に立つ、もう一人の人物だった。
その顔が見える直前、映像は消えてしまった。
ルミが震える声でつぶやく。
「……私たち、本当は四人だけじゃなかったの?」
図書館の扉が、ゆっくりと閉まり始めた。
そして扉の向こうから、あの黒いローブの人物の声が響いた。
「ようやく、そこまでたどり着いたね。次は未来の扉で会おう。そこにいるのは、君たちが選ばなかった仲間だよ」
扉が閉じた。
残されたユウマたちは、互いの顔を見つめた。
第∞世界の始まりに、もう一人の仲間がいたのだろうか。
そして、その人物はなぜ、記憶から消されてしまったのか――。
次回、「未来の扉! 選ばれなかった仲間」へ続く。




