消えた仲間!黒い輪が選ぶ者
黒い光が広場を包み込んだ直後、ユウマたちは見知らぬ場所に転移していた。
そこは、空も地面も真っ白な不思議な空間だった。
「みんな! 無事か?」
ユウマが周囲を見回す。
「私は大丈夫!」
「こっちも平気だよ!」
「全員いるか、確認しよう!」
アヤ、ナナ、ハル、ミオ、ソラ、レイ、フィリアが次々に返事をした。
しかし――。
「……あれ? ルミは?」
ユウマが気づいた。
いつも一緒にいるはずのルミの姿がない。
「えっ、さっきまで隣にいたのに!」
ナナが慌てて辺りを探した。
「ルミー! どこにいるんだ!」
ハルが大声で呼びかける。
返事はなかった。
そのとき、白い地面に黒い文字が浮かび上がった。
**『現在の世界において、記録されていない者は存在できない』**
「記録されていない者……?」
ミオが文字を読み上げた。
フィリアの顔から血の気が引いた。
「そんな……。この空間は、世界の記録から外れたものを隔離する場所よ」
「じゃあ、ルミは記録から外されたってことか?」
レイが尋ねる。
フィリアはうなずいた。
「おそらくね。黒い輪が、私たちの誰かを選んだのよ」
「どうしてルミなんだ!」
ユウマは拳を握りしめた。
「ルミは僕たちの大切な仲間だ。記録に名前があるかどうかなんて関係ない!」
すると、白い空間の中央に一冊の本が現れた。
表紙には、金色の文字で『第∞世界・現在の記録』と書かれている。
ユウマが本を開くと、仲間たちの名前が順番に並んでいた。
ユウマ。
アヤ。
ナナ。
ハル。
ミオ。
ソラ。
レイ。
フィリア。
そして、その下にあるはずの名前だけが、黒い線で塗りつぶされていた。
「ルミの名前だ……!」
アヤが本をのぞき込んだ。
「でも、どうしてルミだけ?」
レイはページをじっと見つめた。
「これは単なる削除じゃない。誰かが、ルミの存在を記録から隠しているんだ」
「隠す必要があるってこと?」
ソラが尋ねる。
「そう考えるのが自然だな」
そのとき、本のページがひとりでにめくれた。
最後のページに、見覚えのある黒い輪の絵が描かれている。
その下には、短い文章があった。
**『選ばれた者は、世界をつなぐ鍵を守る者。鍵を持つ者が真実を知れば、すべての境界は開かれる』**
「世界をつなぐ鍵……。それって、ユウマのペンダントのこと?」
ナナが尋ねた。
ユウマは胸元のペンダントを握った。
「たぶんね。でも、どうしてルミが関係しているんだろう?」
フィリアは、何かを思い出そうとするように目を閉じた。
「……待って。ルミについて、ひとつだけ思い出したわ」
「何を?」
「第∞世界が生まれたばかりのころ、世界の境界を安定させる役割を持つ存在がいたの。だけど、その名前も姿も、記録には残されなかった」
レイが驚いた表情で振り向いた。
「まさか……その存在がルミだというのか?」
「わからない。でも、彼女が記録から消されたことと無関係とは思えないわ」
ユウマは本を閉じた。
「だったら、ルミを探そう。そして、本人から話を聞くんだ」
その瞬間、白い空間の向こう側に、小さな光の扉が開いた。
扉の向こうには、暗い図書館のような場所が見える。
本棚の間に、ひとりの少女が立っていた。
銀色の髪が、かすかな光を受けて揺れている。
「ルミ!」
ユウマが駆け寄ろうとした。
しかし、足元から黒い線が伸び、行く手をふさいだ。
扉の向こうのルミは、こちらに気づくと悲しそうに微笑んだ。
「ユウマ……みんな……来ちゃだめ」
「どうしてだよ! すぐに助けに行くから!」
「だめなの。ここに来たら、あなたたちまで本当の記憶を失ってしまう!」
ルミの背後から、黒いローブの人物が現れた。
その人物は、ルミの肩に手を置いた。
「心配しなくていい。彼らは、まだ何も知らない」
「やめて……。もう、誰かの記憶を奪うのはやめて!」
ルミが叫ぶ。
黒い人物は静かに首を横に振った。
「記憶を奪ったのではないよ。君たち自身が、忘れることを選んだんだ」
「そんなの、嘘だ!」
ユウマが叫んだ。
すると、黒い人物がこちらを向いた。
「ならば、ユウマ。レイとフィリアに聞いてみるといい。君たちは本当に、ルミのことを知らなかったのか?」
ユウマは二人を振り返った。
レイは唇をかみしめ、フィリアは目を伏せていた。
二人とも、何かを知っているようだった。
「レイ……フィリア……。何か隠しているの?」
長い沈黙のあと、レイが口を開いた。
「ユウマ。俺たちは……ルミと初めて会った日のことを、覚えていないんだ」
「えっ……?」
「私もよ。確かに一緒に旅をしてきた記憶はある。でも、最初に出会った瞬間だけが、どうしても思い出せないの」
フィリアの声が震えた。
ユウマは、手の中のペンダントを見つめた。
その表面に、今までなかった文字が浮かび上がっている。
**『最後の記憶は、未来の扉に眠る』**
黒いローブの人物が笑った。
「さあ、選びなさい。ルミを助けるために過去を暴くか。それとも、仲間を守るために真実から目を背けるか」
「そんな選択、する必要はない!」
ユウマは顔を上げた。
「過去も、現在も、未来も、全部確かめる! そして、ルミをみんなのところに連れ戻す!」
ペンダントがまばゆく輝き、白い空間に三つの道が現れた。
そのうち一本が、ルミのいる図書館へとつながっていく。
だが、道の入口には、見覚えのない文字が刻まれていた。
**『この道を進む者は、自分が最も信じている仲間の秘密を知ることになる』**
ユウマたちは顔を見合わせた。
ルミを救うために進む道。
その先で明らかになる秘密とは、いったい何なのか――。
次回、「秘密の図書館! ルミが守り続けた約束」へ続く。




