過去の世界へ!まだ選ばれていない未来
白い世界に、三つの扉が浮かんでいた。
一つ目の扉には、古びた時計の模様。
二つ目の扉には、輝く水晶の模様。
三つ目の扉には、芽吹いたばかりの小さな星の模様が刻まれている。
「最初は、過去の世界へ向かうんだね」と、アヤが時計の扉を見つめた。
「ああ。三人で交わした約束の始まりを知るには、過去を調べる必要がある」と、ユウマが答えた。
レイとフィリアも、七人の仲間に続いて扉の前に立った。
「気をつけて。過去の世界では、起きた出来事を変えようとしてはいけないの」と、フィリアが注意した。
「もし変えようとしたら、どうなるの?」と、ナナが尋ねる。
「過去と現在のつながりが乱れて、記憶が混ざってしまう可能性があるわ。私たちにできるのは、過去を知り、そこから学ぶことよ」
ユウマは深くうなずいた。
「わかった。僕たちは真実を確かめに行くんだ」
ユウマが時計の扉に触れると、扉の表面に青い光が走った。
カチリ。
扉が開き、懐かしい風が吹き抜けた。
その向こうには、緑豊かな丘と、澄み切った青空が広がっていた。
丘の上には、小さな家が三軒並んでいる。
そして、そのうちの一軒から、幼いユウマの笑い声が聞こえてきた。
「ここは……僕が小さいころに住んでいた場所なのか?」
ユウマは驚きながら、丘を下りていった。
仲間たちも静かに後を追う。
村の広場では、幼いユウマ、レイ、フィリアの三人が、大きな紙を広げて何かを描いていた。
「見て! ここに星の世界を作るんだ!」と、幼いユウマ。
「こっちは海の世界!」と、幼いレイ。
「そして、どちらの世界にも行ける道を作るの!」と、幼いフィリア。
三人の紙には、星空や海、森や町が描かれ、それらを結ぶ道が何本も伸びていた。
ハルが感心したように言った。
「小さいころから、こんなことを考えていたんだな」
「三人とも、世界をつなぐことが好きだったんだね」と、ナナが微笑んだ。
しかし、ミオは紙の端に描かれた小さな記号に気づいた。
「待って。このマーク……境界の塔にあったものと同じよ」
紙の隅には、円の中に七つの星を並べた模様が描かれていた。
ソラが目を細めた。
「ということは、あの塔を作るより前から、この仕組みを考えていたのかもしれない」
ユウマは、幼い三人の様子を見つめた。
すると、幼いフィリアが突然、手を止めた。
『ねえ、二人とも。もし、世界をつなぐ道ができたら、遠くにいる人たちも会えるようになるのかな?』
『もちろん!』と、幼いユウマ。
『でも、違う世界の人たちが、同じ場所に住みたいとは限らないよね』と、幼いレイ。
三人は顔を見合わせた。
『だったら、行きたいときに行けて、帰りたいときには帰れる道にしよう!』
幼いユウマの言葉に、三人は笑い合った。
現在のユウマは、その言葉を聞いて胸が熱くなった。
「そうか……。僕たちが作りたかったのは、すべてを一つにする世界じゃなかったんだ」
レイが静かにうなずいた。
「その通りだよ。世界同士がつながっていても、それぞれの場所を大切にできる。僕たちは、そんな未来を望んでいたんだ」
そのとき、村の鐘が鳴った。
ゴーン……ゴーン……。
空の色が変わり、広場にいた人々が一斉に空を見上げた。
遠くの空に、黒い輪が現れたのだ。
「まさか……!」と、フィリアが声を上げた。
黒い輪から細い光が伸び、村の上空に不思議な文字を描き始める。
『すべての世界を、一つに戻せ』
村人たちは不安そうにざわめいた。
幼いユウマたちは、広場の中央で立ち尽くしていた。
『あれは何?』と、幼いフィリア。
『わからない……でも、あのままだと、みんなが困るよ!』と、幼いユウマ。
幼いレイは、空をじっと見つめていた。
『あれは、世界が分かれる前の力なのかもしれない』
現在のレイが説明した。
「この時点では、黒い輪はまだ世界を一つに戻そうとはしていなかった。けれど、世界が増えていくにつれて、その力は変化していったんだ」
「どうして変化したの?」と、アヤが尋ねる。
「それは、まだわからない。だからこそ、過去の記録をもっと調べる必要があるんだ」
そのとき、幼いフィリアが紙を裏返した。
そこには、三人が描いたものとは違う、見覚えのない図があった。
円の中心に、小さな光。
その周囲を、七つの星が囲んでいる。
そして、その外側には、三つの扉が描かれていた。
『これ……誰が描いたの?』と、幼いフィリアが尋ねた。
幼いユウマも、幼いレイも首を横に振った。
『僕たちじゃないよ』
紙の下には、見知らぬ文字が記されていた。
『世界をつなぐ道は、選ぶ者の心によって形を変える』
ミオが息をのんだ。
「この図、私たちが今見ている三つの扉と関係しているんじゃない?」
「おそらくね」と、フィリアが答えた。「誰かが、私たちより先に境界の仕組みを知っていたのかもしれない」
ユウマは紙を見つめた。
「でも、誰がこんなものを残したんだろう?」
答えが出ないまま、過去の景色が少しずつ薄くなり始めた。
「時間切れだわ!」と、フィリアが叫んだ。「この世界に長くとどまることはできない!」
七人とレイ、フィリアの足元に、青い光の道が現れた。
彼らは道に沿って、時計の扉へと戻り始めた。
しかし、ユウマだけは、最後にもう一度、幼い三人を振り返った。
幼いユウマ、レイ、フィリアは、広場で手を重ねていた。
『どんなことが起きても、僕たちは自分たちで未来を選ぼう!』
三人の声が重なった瞬間、過去の世界は白い光に包まれた。
ユウマたちが元の場所へ戻ると、時計の扉は静かに閉じた。
「過去の世界で、いろいろなことがわかったね」と、ナナが言った。
「うん。でも、まだ謎が残っている」と、ミオが答えた。「あの紙に描かれていた図と、見知らぬ文字。それに、三人より前に境界のことを知っていた誰かの存在……」
ソラが、二つ目の扉を見た。
「次は現在の世界だ。そこで何か手がかりが見つかるかもしれない」
ユウマは、亀裂の入った星形のペンダントを握りしめた。
「行こう。僕たちの約束が、どうして失われてしまったのか。その理由を知りたい」
七人が二つ目の扉に近づいた、その瞬間だった。
閉じたはずの時計の扉の表面に、文字が浮かび上がった。
『過去の記録、確認完了』
続いて、その下に新たな一文が現れた。
『警告――三人目の記憶に、改ざんの痕跡あり』
「改ざん……!?」と、レイが叫んだ。
フィリアの顔から血の気が引いた。
「そんな……。私たちの記憶は、誰かに書き換えられていたというの?」
そのとき、三つ目の扉の向こうから、誰かの笑い声が聞こえた。
『気づくのが遅かったね』
声の主は、まだ姿を見せない。
『次は、現在の世界で確かめるといい。君たちが信じている記憶が、本当に君たち自身のものなのかをね』
ユウマたちは、二つ目の扉を見つめた。
過去に隠されていた真実。そして、誰かによって改ざんされた記憶。
次の試練では、彼らが信じてきたものそのものが、問い直されようとしていた。




