↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉妹レンタル  作者: なんなん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
368/413

忘却の果てへ!消えゆく境界地図

 鏡映しの街にある境界の塔。


 ユウマたち七人は、記録官フィリアから受け取った境界地図を広げていた。


 地図の中央には、空に浮かぶ島――「忘却の果て」が描かれている。


 しかし、その周囲に記された道は、まるで生き物のように形を変え続けていた。


「さっきまであった道が消えてる!」と、ハルが驚いた。


「境界の道は、世界の状態に合わせて変化するんです」と、フィリアが説明した。「黒い輪が世界をつなごうとしている今、道の変化も激しくなっています」


 ミオは地図をじっと観察した。


「道が変わる規則があるはずよ。ほら、七つの星が描かれた場所だけは動いていないわ」


 ソラが地図の端を指さした。


「この星印、僕たちが記憶の源を修復したときに現れた七色の光と似ている」


「ということは、僕たちの力が道しるべになるのかもしれないね」と、アヤが言った。


 ユウマは胸元の星形のペンダントを握りしめた。


「レイが残してくれたこのペンダントも、何か関係しているはずだ」


 ペンダントが淡い青色に輝く。


 すると、地図の上に一本の道が現れた。


 その道は、街の外れにある小さな橋へと続いていた。


「道が出た!」と、ナナが声を上げた。


 フィリアはうなずいた。


「その橋は、境界の川を渡るためのものです。ただし、渡る前に一つだけ注意してください」


「注意?」


「橋の上では、皆さんが忘れている記憶が姿を現すことがあります。見えたものが本当の記憶なのか、それとも誰かが見せている幻なのか、慎重に判断してください」


 ルミはセイと顔を見合わせた。


「記憶の大図書館でも、似たようなことがあったね」


「ああ。でも、今度は七人全員で確かめよう」


 ユウマたちはフィリアに礼を言い、塔を後にした。


 街の外れに到着すると、そこには透明な川が流れていた。


 川の水面には、空に浮かぶ三つの月が映っている。


 橋は細長い水晶でできており、向こう岸は白い霧に包まれていた。


「よし、渡ろう!」


 ユウマが最初の一歩を踏み出した。


 その瞬間――。


「ユウマ、待って!」


 聞き覚えのある少年の声が響いた。


 ユウマが振り返ると、橋の反対側に幼いレイが立っていた。


「レイ!?」


 幼いレイは、あの日と同じ星形のペンダントを身につけていた。


「ユウマ、そっちへ行っちゃだめだよ。君が進んだら、みんながいなくなってしまう!」


 ユウマは思わず立ち止まった。


「どういうことだよ? 僕は君を探しに行くんだ!」


「お願いだから、戻って!」


 レイの姿が揺らぎ、川の水面に沈むように消えた。


「今のは……本当にレイだったの?」と、ナナが不安そうに尋ねた。


「わからない。でも、あの声は確かにレイだった」


 アヤは橋の水晶を調べた。


「フィリアさんが言っていたわ。ここでは、忘れている記憶が現れることがあるって」


「つまり、今のレイは記憶の映像かもしれないってことか」と、ソラ。


「そうだとしても、言葉の意味は確かめたい」と、ユウマは答えた。


 七人が橋を進むと、今度は別の光景が現れた。


 アヤの前には、誰もいない教室が広がった。


 ナナの前には、見知らぬ本で埋め尽くされた図書館が現れた。


 ハルの前には、仲間たちとはぐれて一人で立っている自分の姿が映った。


 ミオの前には、答えの書かれていない研究ノート。


 ソラの前には、星のない夜空。


 ルミとセイの前には、二人が初めて出会ったころの景色が広がっていた。


「みんな、立ち止まらないで!」と、ユウマが叫んだ。「幻かもしれない。お互いの声を聞きながら進もう!」


「うん、わかった!」と、アヤが答える。


「私も大丈夫!」と、ナナ。


 ハルは映像の中の自分を見つめた。


「一人になるのは嫌だけど、だからって進むのをやめるわけにはいかない!」


 ミオはノートを閉じるように手を動かした。


「答えがわからないなら、これから調べればいいだけよ!」


 ソラも顔を上げた。


「星が見えない夜でも、空そのものがなくなるわけじゃない!」


 ルミはセイの手を取った。


「過去に何があっても、これからどうするかは自分たちで決められる」


「その通りだ」と、セイもうなずいた。


 七人がそれぞれの思いを口にすると、橋の上の幻は一つずつ消えていった。


 やがて、七人は向こう岸にたどり着いた。


 霧が晴れ、目の前に巨大な門が現れる。


 門の上には、こう刻まれていた。


『忘却の果て――記録されなかった世界への入口』


「とうとう、ここまで来たんだね」と、ナナがつぶやいた。


 ユウマが門に手を触れると、星形のペンダントが強く輝いた。


 門がゆっくりと開いていく。


 その向こうには、空に大きな星が浮かぶ静かな世界が広がっていた。


 地面には古い石畳の道が続き、遠くには時計の針が止まった巨大な塔がそびえている。


 しかし、そこには人影が一つもなかった。


「誰もいないみたいだな」と、ハルが周囲を見回した。


「いや……待って」


 ルミが道の先を指さした。


 石畳の上に、一冊の本が落ちていた。


 表紙には、ユウマの名前が書かれている。


 ユウマが本を開くと、最初のページに文字が浮かび上がった。


『ユウマへ。


 もし君がここへ来たのなら、僕はまだ約束を守れていないということだ。


 どうか、黒い輪を信じないでほしい。


 そして、僕のことも、すべて信じてはいけない』


「えっ……?」


 ユウマの顔から笑みが消えた。


「レイが書いたのか……?」


 次のページには、さらに短い文章が記されていた。


『僕たちが初めて出会った日、本当はもう一人、そこにいた』


「もう一人……?」


 アヤがページをのぞき込んだ。


「誰のこと?」


 ユウマがページをめくろうとした瞬間、本が突然閉じた。


 同時に、止まっていたはずの時計塔が動き始めた。


 カチッ。


 カチッ。


 カチッ。


 空の巨大な星が黒く染まり、世界全体が低くうなり始める。


 そして、塔の頂上から一人の少年が姿を現した。


 銀色の髪。星形のペンダント。そして、ユウマと同じ顔。


 だが、その瞳は黒い光に包まれていた。


「やっと来たね、ユウマ」


 少年は静かに笑った。


「僕の名前はレイ。君が探していた、最初の仲間だよ」


 ユウマは息をのんだ。


「レイ……! ずっと、君に会いたかった!」


 しかし、レイは首を横に振った。


「会いに来てくれたのはうれしい。でも、君たちには帰ってもらう」


「どうして!?」


 レイの背後で、黒い輪がゆっくりと広がった。


「なぜなら――この世界をつなごうとしているのは、黒い輪じゃない」


 レイはユウマをまっすぐ見つめた。


「本当の原因は、君自身だからだ」


 その言葉が響いた瞬間、ユウマの星形のペンダントに亀裂が走った。


 パキン!


 七人の足元に、巨大な光の輪が広がる。


 忘却の果てに隠されていた真実が、ついにユウマたちの前に姿を現そうとしていた。


 ――第∞世界の秘密は、さらに深い闇へと続いていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。